連載「調達・購買戦略入門」(坂口孝則)

戦略を25のマトリクスにわけて説明しています。

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今回は自社市場分析の続きです

・自社市場分析

そこで次に考えねばならないのは、事業のライフサイクルです。これは、プロダクトライフサイクルとして四つに区切る説明モデルが有名です。商品を、「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」にわけて市場への浸透を示すものです。商品はいつまでも販売できない場合が大半ですから、撤退時期も検討しておきます。同時に、これは調達戦略を考えるに役立ちます。

当然ながら、一つひとつの製品の計画は営業計画によります。ただ、販売個数は近似的には次で表現できます。

横軸を時間、縦軸を販売個数と見てください。

いわゆる正規分布というものです。つまり、徐々に市場に認知させるタイミングがあります(「導入期」)。そこから、販売が伸び(「成長期」)、市場に浸透し(「成熟期」)、そして終焉を迎えます(「衰退期」)。何十年前から同じ製品を販売している企業はさておき、ほとんどの製品はこの動きを模します。

この図と同じ内容を指すものの、市場浸透度でいえば、次の通りです。

次に、横軸を時間は同じであるものの、縦軸を市場浸透度と見てください。そうすると、発売当初は誰も手に取らないものの、徐々に浸透が進み、そして飽和します。論者によってはS字カーブと呼ぶ場合もあります。

例でいえば、日本経済のGDPがこのS字カーブです。敗戦から高度成長期を経て、GDPは90年台から足踏みをしています。ほんらいは新たなビジネスモデルを構築しなければならないところ、日本は、従来の産業構造にしがみつくため、伸びがないのです。それにたいして、米国はシリコンバレーを中心とする新産業を次々と生み出すことで、S字を次のS字に変え、そして成長を続けています。

さて、S字カーブは調達・購買にとって大きな視点となります。事業戦略として製品ライフサイクルを考える際に、将来を予期できるのは大きいためです。そこでモデルを利用して、調達・購買にかかわる製品のライフサイクルを予想してみましょう。

大きく
●ロジスティック曲線
●コンベルツ曲線
があります。

ここでは実務家への内容のため、必要以上の衒学的な説明はしません。ツールとして使えるようになってください。

そこで、用意したのが次のリンクです。

http://www.future-procurement.com/lifecycle.xlsx

みなさんに入力いただくのは、列Bのみです。下に、一定期間における調達個数を入力することになっています(セルB11以降)。そうすると、勝手に調達累積個数を計算します。次に、ロジスティクス曲線で試算してみましょう。

そこで、このようにしてください。エクセルの「データ分析」から「ソルバー」を選択します。そして、「目的セル」を$F$11と設定してください。これは、ものすごく簡単にいうと、理論値と実際値のギャップを示すものです。そこで目標値は「最小値」を選択します。もちろん、ギャップは小さいほうがいいですから。

そして、次に変化させる「変数セルの変更」には「$B$4:$B$6」と入力してください。これは、ロジスティック曲線の係数を指定するものです。

その後に、下にある「解決」をクリックいただくと、ロジスティック曲線における発注数予想が出ます。驚くべき結果ではないでしょうか! ほとんど計算式どおりに、今後の発注数を予想できるというのです!

コンベルツ曲線のやり方は同じですので省略します。ただ、ここでコンベルツ曲線でも、かなり精度が高く、将来予想ができるとおわかりいただけると思います。

一定期間を予想することによって、どれくらい発注数が減っていくのかもわかります。人間や市場は自由に動いている気がします。しかし実際には神の見えざる手によって籠絡されているのです。

<つづく>

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