サプライヤ分析 5(牧野直哉)

前回まで「5つの競争要因分析~5Force Analysis」をお伝えしました。企業内でも主にマーケティングや企画、セールスに関係の深い分析手法です。しかし調達・購買部門におけるサプライヤ分析でも、こういった切り口は十分活用可能です。例えば、サプライヤ数を拡大したい場合、現在取引しているサプライヤと共通するリソースを探したり、理解するために必要な切り口になります。日常的に使う方法論ではありませんが、何らかの原因で「他にサプライヤないかな?」と思った場合は、探索の方向性を決める分析結果が得られるでしょう。

そして今回は、具体的な情報収集方法です。まず、情報収集を基点にしてサイクルを回す「情報力」についてお伝えします。


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別の記事でもお伝えしていますが、情報は「収集活動」だけではありません。上の図のように「収集」「共有」「分析」「活用」までおこなって初めて情報にまつわる一連の活動が終わります。また「情報」の特徴からこういった活動は、一回やって終わりにはなりません。情報の種類によって、何度も何度も繰り返しおこないます。これを情報の「サイクル」と呼びます。情報は、収集だけで終わりではないし、活用して初めて情報の取り扱いで費やした時間が意味を持つのです。

サイクルの1つに「共有」があります。企業内で組織的にもしくは複数の関係者によって事業運営をおこなう場合、関係する人と情報を共有する、情報をシェアするプロセスを盛りこんでいます。このプロセスは情報の種類によって、その共有方法は異なります。例えば、組織構成上の人事情報は、やみくもに共有化できない場合もあります。一方で、大きな災害があった後の、サプライチェーンを維持するためのサプライヤの確認活動では、入手した情報は関係者で共有して、同じ認識の元にたった意志決定が必要となります。取り扱う情報の種類によって、共有方法も異なります。共有が必要な場合は、時間と手間をかけずに共有化する方法の確立が重要です。

情報の共有化について、あえてもう一点。最近では、政府が押し進める働き方改革で、労働時間の短縮がすべての企業で大きなテーマになっています。勤務時間に占める割合が大きい会議について、情報の共有化と併せて考えてみます。会議の目的に情報の共有化を含めている場合は、会議時間も長くなってしまうでしょう。会議は本来、関係者が一堂に会して、討議を行うのが主目的であるはずです。一方で、討議の前提条件である、出席者の認識の確認は必要です。この場合、会議の進め方というより、会議招集時にテーマや背景を分かりやすく出席者に伝えているかどうかがキーになります。同時に、招集を受けた側も、テーマ、背景と討議の結果で、自分が果たす役割について明確に理解をしていないと、漫然と長い会議になってしまいます。会議を情報視点で見れば、

①会議で討議するテーマと背景の分かりやすい事前周知
②出席者が事前にテーマと背景を理解
③出席者各自の責任職責に基づいた意見、コメント、考え方による発言

といった複数のプロセスが必要です。情報を「わかりやすく」発信する面と、正しく「理解」する取り組みを組織的に効率的に実施できるかどうかがキーです。

1.情報収集
(1)複数情報源の確保~入手する情報の正確性
情報収集局面で重要な点は、入手した情報の正確性が担保されているかどうかです。誤った情報に基づけば、誤った意志決定に至ってしまう可能性も高くなります。一方で、大きな災害の直後など、情報がどんどん更新されて、結果的に情報伝達をおこなった時点、もしくは行ってすぐに情報が陳腐化してしまう場合があります。そんなときは、誤った情報であったことを責めるのではなく、さっさと新しい情報に更新すれば良いのです。正しい情報を伝えようとする余り、事実確認に時間を費やし、判断が遅れるのも問題です。この点は、情報のサイクルの回転速度として、次回以降にポイントをお伝えする予定です。

また複数情報源の確保は、できるだけ多くの情報の収集につながります。ふだんから複数の情報ソースから入手するクセをつけていれば、おのずと複数の情報ソースから得られた情報によって判断をおこなう動きにつながってゆくでしょう。

(2)情報の「定点観測」活用
情報の定点観測とは、いつも同じ情報源から情報を入手して、時系列で情報を比較して察知する「変化」の読み取りです。例えば、調達・購買部門で重要な情報データになる、市況情報や価格の参考情報は、複数の情報源から常に数値情報を入手して変化の読みとりをおこないます。読み取った情報を共有化する場合は、エクセルのグラフ作成機能を活用して視覚的に表現します。入手した情報を、そのまま展開しても、展開を受けた相手が同じように読み取る作業をおこなうのは非効率です。読み取った変化を分かりやすく伝える工夫も合わせておこないます。

また情報を定点観測する場合は、情報ソースが正確性確保が重要です。比較的正確性が確保されている情報ソースは、政府機関や大手マスコミです。しかし最近では、こんなニュースが話題になりました。

経産省、繊維統計改ざん、回答数水増し、年内廃止へ。
2016/12/27 日本経済新聞 朝刊
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDF26H14_W6A221C1PP8000/

「繊維流通統計調査」で長年、実態と異なる数値を記載していた事実が、関連業務を請け負った業者の告発で明らかになりました。40超の品目ほぼ全てで改ざんがみられ、10年以上前の数値がそのまま記載され続け、実際の数値と最大で10倍程度の差が生じた例もありました。これは、かなりヒドい例です。こういった作為的な問題だけではなく、現在の統計作成手法そのものに疑義が呈されています。データは使い方によって大きな説得力の源泉になる半面、だまされてしまう可能性も否定できないもろ刃の剣です。(どうする統計改革の記事はこちらから http://www.nikkei.com/article/DGKKZO10046850Y6A121C1EE8000/ )

(3)広い情報収集
最後に情報収集の基本として、できるだけ広範囲かつ大量の情報収集に努めなければなりません。また現在は情報が多すぎて、欲しい情報が得られないといった問題もあります。まとめサイトの興隆は、こういった多すぎる情報を「まとめる」ことに、大きな価値が生まれたあかしです。

情報収集について、せん越ながら私の取り組みを御紹介します。私は情報収集に際して、3つの入り口があると考えています。一つ目は、現在の世の中の動きであり、新聞やテレビ、ラジオといったメディア流される情報を捉えます。2つ目は、自分の興味あるテーマに基づく情報収集。これは、これまでに何度もお伝えしているGoogleアラートを活用して、テーマをキーワード化して登録し配信される情報を確認しています。3つ目は、発信する人に興味がある場合。ブログやメールマガジンといったメディアを持っている場合に、Feedlyといったツールでページの更新情報を入手しています。
次回は、現在最新の具体的な情報源をお伝えします。

(つづく)

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