サプライヤ分析 2(牧野直哉)

前回に続いて、サプライヤ分析を考えます。今回述べるサプライヤ分析は、いわゆるサプライヤのQCD分析だけではない分析の手法をお伝えします。

●サプライヤ分析手順

(1)自分自身(自社)のビジネスとサプライヤの関係性を考える

これは、相互に判断している相手の価値とそのバランスです。次の表を御覧ください。



<クリックすると、別画面で表示されます>

双方に相手に対する価値を3つに分類しました。その上で、双方の価値を合わせ見ると、関係の状態は次の5つのカテゴリに分類されます。

①相思相愛
バイヤ企業とサプライヤが、双方に事業運営上における、双方の存在の重要性を認識している状態です。できれば、すべてのサプライヤがこのような状態であるとすばらしいですね。しかし、この状態へ関係性を構築し、相思相愛な状態の維持には、バイヤーの労力も非常に大きくなります。したがって、バイヤー企業にとっての現時点及び将来の必要性を見極める必要があります。「見極め」とは、サプライヤとバイヤー企業の担当者及び上位者の人間関係だけではなく、取引額、アイテムの性格と将来ビジネスへの必要性をふまえて判断します。

【このカテゴリに合致する判断基準】
・自社の発注サイクルあたり一回以上注文書を発行しているサプライヤ
・新機種開発や新サービス企画の初期段階でコンタクトするサプライヤ
(調達・購買部門だけではなく、社内関連部門からのコンタクトも含める)
・上位者の定期かつ相互の訪問及び面談を行っているサプライヤ
・最低営業パーソン売り上げの30%以上を発注しているサプライヤ
・QCD他、取引条件を定期的に見直しを依頼し回答しているサプライヤ
・新規サプライヤ採用時、及び継続審査時に、高い評価スコアを獲得している

②友達
双方に一定の必要性が存在し、価値も認めるけれども、さほど重要ではないと判断できる場合です。バイヤー企業視点では、代替サプライヤが存在する場合や、購入品に特殊性や優位性がない場合が該当します。バイヤー企業は、意図して重要サプライヤにするのか、それとも今の状態を維持するのか、はたまた別のサプライヤへ発注先を変更するのかを決めておきます。また、サプライヤ視点では、売り上げ規模が最大の判断根拠になります。

【このカテゴリに合致する判断基準】
①の条件に2つ以上あてはまらないけど、発注条件を最低限満足しているサプライヤ。特に次の3点が該当しない場合。
・新機種開発や新サービス企画の初期段階でコンタクトするサプライヤ
(調達・購買部門だけではなく、社内関連部門からのコンタクトも含める)
・上位者の定期かつ相互の訪問及び面談を行っているサプライヤ
・QCD他、取引条件を定期的に見直しを依頼し回答しているサプライヤ

③片思い
必要性と価値がアンバランスな状態です。バイヤー企業が片思いされている場合は、意志も通しやすくなります。その思いを利用してバイヤ企業へのメリットを最大化します。自社の購入要求を安い価格で購入します。しかし、バイヤー企業が片思いしている場合、購入条件ではサプライヤ希望への譲歩を強いられます。バイヤー企業の片思いは、早急に改善しなければならない事態です。方向性としては、サプライヤからの対応を改善させるサプライヤマネジメントの実践と、新規サプライヤの開拓の2つです。

【このカテゴリに合致する判断基準】
次の2つが満足できないサプライヤ
・上位者の定期かつ相互の訪問及び面談を行っているサプライヤ
・QCD他、取引条件を定期的に見直しを依頼し回答しているサプライヤ

④知人
この状態も、双方にとっての必要性と価値がアンバランスな状態です。しかし、双方にとってさほど重要ではないために、①~③と比較すると優先度が低くなります。これもバイヤ企業は一定の必要性を認めているにも関わらず、サプライヤが不要と判断している場合は、状況の改善を要する場合があります。ただし、サプライヤとしての最低条件であるQ:品質とD:納期面で問題なく取引が行われている場合は、購入金額との兼ね合いで、改善せずに穏やかに現状維持をおこなう選択もありです。

【このカテゴリに合致する判断基準】
①の条件はほぼあてはまらないけど、発注条件を最低限満足しているサプライヤ

⑤他人
これは、双方が知らない状態です。企業数としてはこのカテゴリーに入るサプライヤが一番多くなります。バイヤー企業として知らない企業群ですが、現在購入しているサプライヤの競合企業も含まれているでしょうし、弱いバイヤー企業の、立場のばん回に必要なサプライヤや、将来ビジネスには欠かせないサプライヤが存在しています。他人だから全く関与しないではなく、この部分にどのように関与して、バイヤ企業の調達可能性を広げてゆくかも大きなテーマです。

【このカテゴリに合致する判断基準】
①~④に合致しない企業全体

まずサプライヤを担当者の主観で良いので分類します。はじめに行うのは、カテゴリによって次に述べる情報収集の内容が異なってくるためです。

そして、購入するサプライヤと、購入する可能性があるサプライヤを、すべて黒太線で囲まれた分類のいずれかに納めるのがサプライヤマネジメントの目的です。そして、カテゴリに応じた管理を実践します。

 (つづく)

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