夏休みはこの本を読め!(ほんとうの調達・購買・資材理論事務局)

坂口:続いて僕がお薦めしたいのは、「男の服装術」。落合正勝さんが書いていまして、副題が「スーツの着こなしから靴の手入れまで」という本です。2004年に出ていますから、12年前極めて古い本ですけども、この本を読むと、皆さん間違いなく衝撃を受けます。

何が衝撃を受けるかというと、スーツって女性の方もスーツを着るし、男性の方はより着ると思うんですけども、こんなに理屈があるって驚かされるんですよ。例えば、靴って大体新入社員のときに聞かされるのは、紐があるのがちゃんとした靴で、紐が無かったらフォーマルじゃないよと。それくらいは教えられますよね。スーツにしたら、何かというと黒は基本的に買って、それを基本として、あとは常識の範囲とか。あるいは、ワイシャツも白を基本にとかぐらいしか教わらないでしょう。

この本ではその考えを完全に否定するんですよ。そうではなく、靴の紐の中でも、どのような靴の種類があって、かつ靴底をどのような方法で縫ってるかによって、正式か非公式が決まるというところまで、ものすごく事細かに書いてまして、すべて驚く蘊蓄に溢れています。例えば、ネクタイってあるじゃないですか。ネクタイの選び方が書かれているんですよ。

牧野:ネクタイの選び方?自分の趣味の問題じゃないの?

坂口:趣味とかじゃないと。この本は最初から最後まで、この通りにしなければジェントルマンになれないっていうふうに書かれてます(笑)アメリカ流のやり方は亜流であって、正式なスーツの着こなしっていう、かっこよく見せるための方法論が書かれているんです。まずネクタイとかでいうと、まずネクタイの裏地を見なさいと。ネクタイの裏地がありますよね。だから、今、読者の方は見れないと思うので、裏地のところに、ネクタイの先端のところって、裏地がちょうど見えるところがありますよね。これはどう表現したらいいのか分からないですが……

牧野:これはあとで写真を撮って送りましょうかね。(笑)

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坂口:そのときに裏地が表のやつと同じやつを使ってないと、これは二流品だそうです。正式なネクタイというのは、裏地と表地というのが、同じものを使ってるものじゃないと、ネクタイとしては認められないそうです。

牧野:家に帰ってみたら、多分全部使ってない気がする。(笑)

坂口:ほんとうのネクタイの話で衝撃を受け、そしてネクタイの選び方ですけども、柄とかはちょっと言葉で表現できないので、この本に譲るんですけども、まず、分かりやすいのが、ネクタイを握りつぶしてパッと離したときに皺なくなる。これがネクタイの前提だそうです。シルクをたくさん使っていれば、ちゃんと皺にならずにフィットすると。更に驚いたのが、ネクタイの結び方ってあるじゃないですか。あれ、先生、どうやって使い分けてます? 慣れで使い分けてるでしょう。駄目だそうです。

牧野:慣れです。駄目ですね(笑)

坂口:ネクタイ長からみて、どの結び目方をしたら、ちょうど自分のベルトの中間に来るかっていうのを計算して結ばなければいけないんだそうです。あとは、具体的にスーツの選び方はどうだとか、ワイシャツの選び方はどうだ、靴っていうのは皆さん知らないけども、靴底までちゃんとメンテナンスしなければ、ジェントルマンではないと。

よく雨の日には違う靴を履くっていうのがあるでしょう。「あれはほんとにくだらないやつがやる方法である」と。「雨の日だろうが、おしゃれを絶対崩さないというのが、優れたビジネスマンである」と。その時の靴のメンテナンスは何か、ほんとに超具体的に書いてます。「まず、最初に新聞紙を中に入れて、どの角度で干せ」とか、書いてあって「何クリームを塗ったあとには、まず缶ビールを飲んで休憩せよ」とか何かわけの分からない説明まで全部書いてあって(笑)。 アメリカンスタイルとか、日本的に解釈しなおされたスタイルでもいい考え方はあると思うんです。落合正勝さんの基本的な考え方は、服だけども、正式な着方を分かっていて崩すのと、正式な着方も分からないくせに亜流で着るのとは、全然違うでしょう」とおっしゃっていると思うんですね。

公式なグローバルスタンダードとして日本人が公式行事にたくさん出る機会が多いと。そのときに正式な着方をまず分かっていたら、まずは保守的には正式な着方で参加するっていう方法もできるわけじゃないですか。自分のビジネススタイルの武器を増やすっていう意味にも正しくスーツを着こなしとか、靴の手入れっていうのを分かっているのにもちろん越したことはありませんしね。実はベタなネクタイっていうのは、基本的に黒地に白い点が、ドット柄みが正式です。あとは場面などによって、ネクタイっていうのは使い分けなければいけないとか、あと、ダブルがいいのか、シングルがいいのかとかいうのは、じゃあ、どういう何が正式で、正式じゃないのかとかが、もう様々書かれておりますので、これはもう極めて参考になる本だなと思います。

じゃあ、この本を買いたくないという場合には、この2つだけを覚えておいてほしいんです。まず、真っ先にお金をかけた方がいいのは靴だそうです。「靴は今までの人生で2万円のやつを10足買っているんだったら、もう20万円のやつを1個買え」と。それほど重要だよと書いてあって、そのあとの順番でスーツとかに手を出していくというのがいい。先ほども申し上げた通り正式な着方をまず把握することによって、自分のビジネスの上品さというものを上げていくことができる、極めて面白い本です。

牧野:私はスーツを着てる人のすごく気になる行動が1つだけあるんです。ジャケットを着て、椅子に座ってもスーツのジャケットの前のボタンを締めている人ってすごい気になるんですよ。正式には座った瞬間に外して、立った瞬間に前のボタンを締めるはずなんですよ。そもそも座った瞬間に締めているのって窮屈じゃないのかなあと思ってるんですけど、その辺は何か書いてありますか?

坂口:はい。スーツの意味というのは、もっと歴史的にいうと作業着ですから、だから、作業しやすいような状態を保つっていうのが本当なんです。更にさかのぼると、女性の口紅っていうのは女性器の象徴で、ネクタイっていうのは男性器の象徴っていうシンボライズされた意味合いがあると。そこである程度のビジネスシーンとか、あるいは対他者に対するアピールポイントとして使っていくと。

もともとスーツは作業着だという話をしましたけども、当然着こなしで一番いいのは、その人にジャストサイズしたやつを選ぶっていうのが一番なんです。安かろうが高かろうが、それが一番だと。そのときに座ったときにどうかっていうのは、この本に書かれてますので、ちょっとお読みいただきたいんですが、どれくらいこれはこだわらなきゃいけないかというと、例えば、靴を例にこの落合さんは書いているのですけども、靴は夕方に買いに行かなきゃいけないと。それは夕方膨らむから。で、駄目な靴屋の見分け方は、昼に行ったらそこで採寸して終わりしようとするところは駄目だというふうに書かれていたりとか、ほんとに面白いです。

牧野:それは、でもよく言われてる言葉ですよね。夕方っていうか、夜、買いに行けっていうの、ありますよね。

坂口:はい。なので、是非ご覧いただきたいと思うんですけれども。製造業の場合は、実際、作業着とかで営業に来られる場合もあるしので、相手をできてないから批判するという使い方ではなく、自分がいざというときに出たときに恥ずかしさのない人間として振る舞うという意味でちょっと考えるのはいいかなと思いますね。 

牧野:どうなんでしょうね。じゃあ、そういうこの本の考え方からすると、例えば今のスーツなんかも、かなりすごく細身っていうのが流行ってるじゃないですか? あんなのっていうのはどうなんだろう。

坂口:だから、体系にあっててかつ動きやすいっていう条件があればいい。ちょっと話がそれますけども、ズボッと着るスーツよりも細身のほうが確かにシャープな感じはしますよね。

牧野:あー、そうかもしれないですね。

坂口:80年代のスーツのドラマとかを見ると、あまりにも大きくてギャップがすごいすからね、不思議なのは、イギリスとかヨーロッパの伝統的なスーツの着こなしっていうのは、さほど時代によっても左右されないっていうか、アメリカ映画の60から80年代のちょっとカジュアルな着方っていうのは、今見たら恥ずかしいじゃないですか。だけど伝統的なヨーロッパの着方は別に昔のやつを見ても、今見ても「あ、すっとしてるな」っていう感じを与えると。

牧野:確かにアメリカ映画でも、東海岸のボストンを舞台にする映画とかドラマとかっていうのは結構スーツもオーソドックスなものが多いですよね。

坂口:そうですね。その意味でも是非ご覧いただければと思いますので、お願いします。

<了>

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