バイヤー現場論(牧野直哉)

<サプライヤ訪問>

サプライヤ訪問は、自社内での活動とともに、まさにバイヤーの現場の訪問です。日常的に出勤する自社と異なり、サプライヤ訪問は1社あたり多くても年数回です。機会が限定される分、いざ訪問する際には、欲ばりになってあらゆる情報収集や、訪問後の活動に役立つ「種蒔(ま)き」をおこないます。

訪問に先だって、調達・購買部門の年間計画は「サプライヤ訪問計画」を含めて立案します。2社/月程度、年間で20社程度の訪問計画を、スケジュールを含め決めておきます。同時に、訪問に必要な経費も試算して、予算を獲得します。もし、新たにサプライヤマネジメントを従来より強化しておこなう場合、訪問予算が不足してサプライヤを訪問できないといった事態を回避します。

訪問するサプライヤの基準は、前年度のサプライヤ評価と、当年度の年間計画から重要と位置付けられたサプライヤを優先します。訪問タイミング決定は、自社の優先度によります。訪問時期はサプライヤの決算期によって決める方法もあります。その場合は、決算月の1~2か月前を目安にします。翌年度に向けて、どのような計画を立てているのかを確認し、自社の要望をサプライヤの翌年度計画に反映させます。

サプライヤの訪問に先立っては、目的を明確化し、サプライヤに事前に伝達しておこないます。新規サプライヤ採用を目的にした訪問では「自社に納入可能かどうか」がもっとも重要なポイントです。継続採用審査は「これからも自社に納入可能かどうか」「前年度の確認内容が維持されているかどうか」がポイントです。また、不具合を発生させたサプライヤは、問題点の解消が確実におこなわれているかどうか。コスト削減活動をおこなった後、あるいは活動中だったら、全体スケジュールの進捗状況や、問題点、阻害要因の有無を直接聞いて、計画を進める方策の確認をおこないます。

初めて訪問するサプライヤは、次の4つの内容は必ず確認します。調達・購買部門でサプライヤを管理する場合は重要な情報です。なかなかサプライヤ主導では説明されない内容なので、事前に連絡し必ず確認します。

①注文処理プロセス

自社からの発注(注文書)がどのように処理され、サプライヤ内で生産されるのかを、担当部門と所要日数の2つポイントを中心に説明を求めます。また、新規の見積依頼への対応プロセスも合わせて確認します。各プロセスが明文化され、その内容通りに実行されていれば、説明も分かりやすいでしょう。しかし、説明内容があやふやな場合や、サプライヤ側の出席者間で認識の違いが顕在化する場合は、今後のビジネスでトラブルが発生する可能性が高くなります。直接説明を聞いたのですから、期日を区切って明確化を求めましょう。この期日が守られるかどうかは、購入品の納期順守率にも大きく影響すると思ってください。

②生産計画立案方法

立案する生産計画の種類と時期を確認します。生産計画立案のセオリーでは、大日程計画から、中日程、小日程へと、実行日に近づくにつれて、具体化した詳細計画となります。どういったタイミングで、どんな計画が立案され、生産へと展開されるのか、その流れをヒアリングします。この情報によって、例えば大きな需要変動へ対応可能なタイミングの掌握に役立ちます。また、仕様や、納期、数量の変更可能なタイミングを理解する上でも、重要な情報です。

③外注管理方法

バイヤーが訪問した場合、サプライヤの主要な対応者は営業部門です。しかし、サプライヤで原材料や部品を調達している場合、その管理状況も購入品の品質に大きく影響します。この点は、訪問するバイヤーが業務を円滑に進め、品質を確保する仕組みを理解し、明確な判断基準をもっているはずです。訪問者であるバイヤーの得意分野ですから、サプライヤの調達・購買部門へ説明を求めます。同時に、自社の管理方法を説明し、確認内容への理解を求めます。

④品質マネジメントシステム

品質マネジメントシステムは、まず品質管理文書の説明を求めます。説明された内容は、実際に現場で実行されているかどうかを対比するための判断基準になります。この点はサプライヤも説明自体は慣れていますし、資料も揃(そろ)っているでしょう。しかし机上の説明だけで満足できません。現場で文書化された内容が実行されているかどうかを確認します。文書上では、すばらしい品質マネジメントシステムが構築されています。不具合の多くは、ルールや仕組みにそぐわない方法で対処した結果であるケースがほとんどです。文書の内容が現場で実現されているかどうかを確認します。

(つづく)

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