読書案内(坂口孝則)

今回は、まとめて読書案内としたいと思います。お読みになれるものがあれば、どうぞ!

・現在、タックスヘイブンの文章が世界を揺るがしている。違法ではなく、合法ではあるものの、あきらかに租税回避を狙った活動が倫理的に許されるはずはない。税金逃れを許してしまうと、国家はほとんど成り立たない。

・タックスヘイブンに埋蔵されているお金が課税対象となれば、ほとんどの飢餓は解消されるといわれる。それくらい多額なのだ。

・ところで、そのタックスヘイブンだが、初学者は小説「タックスヘイヴン」に多くを学べる。著者は橘玲さんで、タックスヘイブンの仕組みから、アジアマネー、そして裏稼業まで学べる凄い小説。しかも、小説としても一級で、泣かせる。なんて凄い書き手なんだろう。私がこの10年間ほど嫉妬しているひとだ。

・なお、この橘玲さんが匿名で書いた「ゴミ投資家のための人生設計入門」「ゴミ投資家のための人生設計入門 [借金編]」の二冊があれば、ほとんどの家計本は不要。残念ながら、現在は両書とも絶版。しかし、アマゾンの中古マーケットでは購入できる。ぜひとも購入すれば、人生の見方が根源から変化するだろう。

・さて、人生において、金銭計画が立ったとしたら、その余剰資金はどこに向かうのだろうか。それは子どもの教育資金になる。少なくとも、多くの富裕層は働いて稼いだお金を、他の庶民は節約したお金を、それぞれ子どもの教育にあてている。

・なぜ、せっかく稼いだ金を、自分に使わずに、子どもに使うのだろうか。

・それには、面白い仮説がある。妻が無意識に、夫が浮気させないようにするからだ、という。夫がやっと稼いできたお金を、子どもに使うことで、夫は自由にできるお金がなくなる。それで、外での活動が制限される。しかも。子どもに使うとなれば、誰も反論できない。だから、妻が教育ママになるのは必定なのだ、と。

・さあ、この仮説が本当かはわからない。しかし、なんとなく頷かせる仮説ではある。

・教育ならば、私の知人でもある、おおたとしまささんの「ルポ塾歴社会 日本のエリート教育を牛耳る「鉄緑会」と「サピックス」の正体」は必読。子どもがいないひと、独身のひとも一読の価値がある。田舎で通用する「高校入試から頑張って、なんとか入学。そして、次は高3のときだけ頑張って、早慶に入ろう」的な考えはもはや幻想であるとわかる。塾のレベルが、そのひとの最終学歴を決めるのだ。

・1~4歳くらいの子どもをもつ母親は読んでおいてソンはない。

・ところで、そのように金をかける子どもは、金をかけただけ学力があがるのだろうか。「「学力」の経済学」はさまざまなデータを駆使し、教育の費用対効果を語る。しかし、あきらかにデータは強引な引用であり、そのまま納得するわけにはいかない。その意味で一読の価値はあるかもしれない。

・「頭のでき―決めるのは遺伝か、環境か」あるいは「階級「断絶」社会アメリカ」は、そのいっぽうで、データや実証実験を活用し、論理的に進める。結果からいうと、まだあまりわからないものの、親の遺伝(や社会的立場)は大きい。すべてではないが、頭のいい人の子どもは、教育がどうであれ、頭がいい可能性が高い。ほんとうに絶望的な話だ。

・さてその絶望に私たちは、どう対処すればいいのだろうか。現代は絶望の時代である。だからこそ、ヒーリング、ヨガ、スピリチュアル、癒やし、オーガニック、フード左翼が流行るのだ。私たちは、それらの一過性のブームではなく、根本治療が必要だ。どうすればいいか? 

・それは逆説的ではあるものの、その絶望にまみれた社会をひたすら”見に行く”ことだろう。堀江貴文さんの「君はどこにでも行ける」「本音で生きる」は、最近のなかで相当なヒット。なかなか、不作が続いていった氏の著作のなかで痛快ともいうべき二作だ。

・世界の潮流を知るには、行動と、読書がある。そのなかで、面白かったのは、ハイパーマルチメディアクリエイター(笑)の高城剛の著作「空飛ぶロボットは黒猫の夢を見るか?」だ。高城さんの著作は常に発見がある。ドローンには、実は二種類がある、など驚きの指摘が並ぶ。

・また、今後の消費流行を考えるなら、「歴史のなかの消費者」「21世紀の消費」を強く推す。ただ、高いので、余裕があったら。しかし、「歴史のなかの消費者」はこれまで語られなかった消費論が多々語られて参考になる。

・その他、経済学と食事を学べるものとして、光るのが「エコノミストの昼ごはん」だろう。これをなぜ酷評するひとがいるのかわからない。博学と、通説を覆す快楽がここにはある。

・私は、毎日さまざまな調査を行い、そしてそれをアウトプット(講義、コンサルティング、原稿)している。とまあ、こういう調査こそ、ビジネスパーソンを強くするものだ。だから、調査力こそ休みのうちに養う必要がある。

・あまり私は自著をススメないものの、やはり「社会人1年目からの「これ調べといて」に困らない情報収集術」が良いかな。それと、面白いのが、「図書館を使い倒す!」ってう本があって、これが傑作。図書館でこんなことまで調べられるのっ!て驚きの連続。こういう本をいつか書きたいな。執筆術では「調べる技術・書く技術」を推しておこう。

・では、最後に、「おいおい、もっと軽いものにしてよ」とおっしゃるあなたへ。小説ならば「封印再度」、エンタメならば「インベスターZ」かな。時間つぶし以上の幸福がもたらされるだろう。

<了>

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