バイヤー現場論(牧野直哉)

6.物流部門との関係

多くの日本企業は、物流部門を軽視しているといわれています。一方で、目ざとく物流の重要性に気づいた企業は、国内のすみずみまで物流網を整備し、我々の生活を豊かにしています。地方の名産品、仮に「生もの」でも、購入できるのは発達した物流網と仕組みの賜物(たまもの)です。

物流はまず運ばずに済ませる方法を考えます。IT技術の発展は「情報」の輸送コストを限りなくゼロへと近づけています。しかし、手にとって使用するモノは、何らかの物流手段によって運ばざるをえません。快適な生活をするために物流は不可欠です。メーカーの効率的な運営に、物流は大きく貢献するだけではなく、企業の競争力を構成する重要な優位性の源泉となる可能性を秘めています。果たして調達・購買部門は、物流部門とどのようにかかわってゆくべきでしょうか。

① 物流コストに注目する

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調達・購買部門が管理する購入品は、自社までの輸送費が購入価格に含まれています。実務面では、注文書を発行すれば、納期に自動的に自社に納入されとても便利です。しかし、こういった日本の商慣習によって、バイヤーが輸送費に無頓着になっている側面を指摘したいと思います。自社に近いサプライヤで、営業パーソンが社有車で納入する場合、輸送費はサプライヤ社内の営業経費に含まれています。この場合、サプライヤ自身も輸送費には無頓着です。しかし、自社から遠く運送会社によって納入される場合、サプライヤから輸送会社に費用を支出し輸送を発注しています。仮に、この2つのサプライヤからの購入価格が同じだった場合、生産に必要なコストの競争力はどちらが高いか。見積書上の価格と異なる優劣が、輸送費を合わせ考えれば明白になるかもしれません。

物流コストに注目する第一歩は、見積依頼時に金額明細の提出を要求し、輸送費を別項目による提示です。営業パーソンが納入している場合は、明確な費用の区分けができないと回答があるでしょう。その場合は、他の顧客で運送会社を使用している場合のコストの考え方をヒアリングします。製造コストと輸送コストを分けて考えて、適正な評価へとつなげます。その場合、自社の物流部門にアドバイスを求め、自社のもつノウハウを調達・購買業務に役立てます。

② 生産計画とリンク

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サプライヤへの納入期日は、生産管理部門が立案する生産計画によって決定されます。生産に必要となるタイミングで納入計画を立てているはずです。自社の生産計画の精度が高ければ、納入指示の順守が必要です。問題は、サプライヤにのみ厳しい納期設定を強いて、自社の生産計画の精度が高くない場合です。納入頻度を細かく指示したものの、購入品が社内に納入頻度のインターバル以上に滞留しているなら、サプライヤが納入指示順守に費やしているコストが無駄になっています。

このような自社の生産の実態は、社内物流を管理する部門からヒアリングをして明らかにできます。毎日納入日を設定しているものの、数日間の滞留が常に生じている場合は、数日間のまとめ納入を実現して、サプライヤ側の多頻度納入による運送費の負担を軽くする取り組みを試みます。

③ 適切な物流業者選定をサポート

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外部の物流業者に輸送を依頼している場合、購入品を発注するサプライヤと同じプロセスで、輸送業者の選定や継続発注時の評価のサポートを物流部門へ提供します。また、自社と相手先の二点間の輸送だけでなく、梱包作業や在庫管理といった物流プラスαの外部リソースの活用を物流部門へ提案します。こういった物流プラスαの付加価値部分は、調達・購買部門が持っているサプライヤの調査能力を活用し、情報収集をおこなって物流部門へ提供し、効果的な物流業者の選定を後押しします。

また、自社構内物流とサプライヤからの輸送の引き継ぎを効率的に実現する取り組みも、物流部門と調達・購買部門、サプライヤの3者で協議できます。物流の基本は、いかに運ばずに済ませるか。しかし、運ばざるを得ない場合は、最低限のコストで、品質を確保しタイムリーな納入を実現させるために、自社の持つノウハウや都合を調達・購買部門も理解して、サプライヤと協業を実現させます。

<つづく>

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