バイヤー現場論(牧野直哉)

3.生産管理部門との関係

生産管理部門は、設計・技術部門とならび、調達・購買部門で購入するモノやサービスの内容を決定するために必要な2つの前工程の一つです。図面や仕様の作成が設計・技術部門の役割なら、自社の生産計画をもとにして必要な数量と時期を決定するのが生産管理部門の役割です。

近年、納期面での顧客要求はより短縮化し、マーケットの需要動向も非常につかみづらくなっています。その結果サプライヤに、より短いリードタイムの実現が求められています。もう一つ、リードタイムが短くなってしまう要因には、需要変動リスクがあります。在庫リスクを減らすために、より確実な量しか購入しません。「確実な量」は、より納期に近いタイミングでしか判明しないため、結果的にサプライヤへのリードタイムが短くなってしまうのです。

こういった環境下で、調達・購買部門が生産管理とサプライヤの間に立ち、なにができるかを考えます。

① 生産能力のフィードバック

生産管理部門からもたらされる発注量と必要時期の情報が、サプライヤの能力と対比し対応可能かどうかを確認します。サプライヤの対応能力を超えている場合は、生産管理部門とサプライヤの双方に対策を求めます。納期遅れは、自社側からすれば、厳しい納期設定であったとしてもサプライヤに対処して欲しいと考えるでしょう。しかし、そういった厳しい状況の打開をサプライヤ任せは避けます。調達・購買部門は、サプライヤの生産能力の掌握によって、最低限確保すべき発注リードタイム(サプライヤの生産リードタイム)、生産管理部門にフィードバックします。同時にサプライヤに対して、リードタイムの短縮を申し入れます。納期調整は、タイミングによって自社とサプライヤの双方に生産計画の再調整を強います。できるだけ発生させない具体的な対策を実行します。

② 本音で真実をぶつけあう当事者同士の関係を構築する

生産管理から提示される要求納期は、まったく遅れが許されない納期でしょうか。多くの企業で納期の「さばよみ」が横行しています。こんな例です。

「一ヶ月後に必要な製品を、生産管理部門は一週間の余裕をみて3週間後の納期を設定します。今回は特に「あのサプライヤは納期が遅れがちだ」と、最終的に2週間後に設定しました。一方、サプライヤの標準リードタイムは1.5ヶ月なので、一ヶ月ものギャップが発生しました。調達・購買部門があわててサプライヤと調整し、一ヶ月後であれば対応可能と回答を得て、なんとかまるく収まりました」

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こういった納期調整の経緯で、果たしてどんな付加価値が生まれたのでしょう。貴重な時間をただ浪費したに過ぎません。こういった経緯があった場合、生産管理部門に対して、当初の納期設定の根拠を確認します。同じ社内なのだから「さばよみ」などせずに、本当に必要な納期設定を求めます。社内で「さばのよみ合い」など、非効率なコミュニケーションの象徴です。丸く収まった結果に満足せず、再発防止策を必ず関係者で検討し、調達・購買部門と生産管理部門の双方で共有し実行します。

③ サプライヤとの納期交渉の厳格化

社内の「さばよみ」を撲滅するために、サプライヤからの正確な納期回答を入手して備えなければなりません。先ほどのケースでは、いろいろ調整した結果、一ヶ月で対応が可能でした。実績を利用して、次回から一ヶ月を標準納期として回答するように求めます。

調達・購買部門とサプライヤがおこなう交渉は、どうしても仕様や発注量をもとにした価格交渉に偏りがちです。しかし、自社とサプライヤ間でおこなわれる調整にともなって発生するコストまで合わせ考えると、標準的なリードタイムも、一定の条件下でギリギリの納期回答を入手しなければなりません。加えて納期情報のメンテナンスと、サプライヤの稼働状況の入手し、サプライヤの稼働状況をウォッチします。発注頻度が少ない場合は、過去に設定したリードタイムが、次のタイミングでは長期化する可能性もあります。一旦回答した納期は順守し、リードタイムに変動がある場合は、自社へ連絡をルールかします。
後工程に位置するからといって、前工程の要請をすべて受け入れる必要はありません。また、前工程の要請を、実現性を考慮せず、ただ後工程であるサプライヤへ連絡するだけでは、調達・購買部門を経由する必要はありません。関連部門が作成した情報をサプライヤへ連絡し、その妥当性を判断します。実現性が疑われる場合は、あらかじめ社内で善後策を検討します。前工程には調達・購買部門がつかんでいるサプライヤの最新情報を適切にフィードバックして、再調整しない納期設定を実現します。

(つづく)

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