バイヤー現場論(牧野直哉)

今回から新たな連載として「バイヤー現場論」の連載を開始します。

調達・購買部門における現場とはどこか。調達品や購入品を中心に考えると、サプライヤーが生産する場所です。しかし、今回の連載、主人公はもちろんバイヤーです。調達・購買業務において、最適なサプライヤーへ発注して、できるだけ安く、可能な限り高い品質のモノやサービスを購入して、社業に貢献するバイヤー業務の現場を、4つの具体的な場所と、2つのシチュエーションに分類し、その時、その場所で必要となる効率的な対処法を述べます。

連載の冒頭に、調達・購買部門の「現場」について考えてみます。調達・購買部門で働くバイヤーの現場には、大きく自社内とサプライヤーがあります。自社でも、調達・購買部門内だけでなく、関連部門や会議室、サプライヤーが来訪した際の会議室や打ち合わせ場所も、バイヤーにとっては現場です。サプライヤーは、より現場感が強くなりますね。サプライヤーでも、会議室や、製造業であれば、まさに工場です。

これまでに述べたそれぞれの場所で、バイヤーは何をどうすべきかが、このシリーズのテーマです。もう一つ、今回のシリーズにこだわりたい点があります。

日本企業の現場の強さに対比して、企業トップである経営者の弱さが語られるケースがあります。現場で仕事をするときに「なにも分かっていないくせに」と、上位者をヒッソリけなした経験は、誰しもが持っているでしょう。今回述べる「バイヤー現場論」は、調達・購買の「現場」と、現場をわかっていないとされる企業トップの「溝」を強く意識して、どうやって埋めるのかを合わせ考えます。決して、企業トップを残して、調達・購買の「現場」だけが強くなっても、企業全体の強さには繋がりません。どうやって、調達・購買部門と関連部門、マネジメントのすべてが強くなるのか、を考えます。

それでは、次の「現場」を想定して、話を進めます。

<オフィス>
1.自分の席にいるとき
2.上司と話すとき
3.同僚・部下と話すとき
4.仕事を教えるとき
5.電話をかけるとき
6.電話をうけるとき
7.サプライヤーが来たとき
8.フォローするとき
9.同僚が訪ねてきたとき
10.コピーをとるとき
11.ルーティンワークするとき
12.立ち話するとき
13.情報を入手するとき
14.見積書をみるとき
15.注文書を発行するとき
16.契約を結ぶとき

<会議室>
1.会議を主催するとき
2.会議に呼ばれたとき
3.会議に上司と出席するとき
4.部門内で打ちあわせるとき
5.サプライヤーが会議に出席するとき
6.定期開催の会議に出席するとき
7.一人になりたいとき
8.怒り叱るとき

<自社内>
1.総務と話をするとき
2.人事と話をするとき
3.財務と話をするとき
4.生産管理と話をするとき
5.設計・技術と話をするとき
6.製造と話をするとき
7.品質管理と話をするとき
8.物流と話をするとき
9.営業と話をするとき
10.アフターマーケット・サービスと話をするとき
11.購入要求部門と話をするとき

<サプライヤー訪問>
1.会議室・応接室にて
2.工場見学にて
3.監査にて
4.立会い検査にて
5.コストダウン打ち合わせのとき
6.トラブル処理のとき
7.納期繰り上げるとき
8.サプライヤー幹部への対応するとき
9.サプライヤー事務所を訪問するとき

<出張>
1.出張予定を計画するとき
2.電車で移動するとき
3.バスで移動するとき
4.飛行機で移動するとき
5.車で移動するとき
6.必要な荷物を選ぶとき
7.出張先での移動するとき
8.食事するとき
9.宿泊場所を選ぶとき
10.出張先で休日の過ごすとき

<非日常的な状況>
1.納期トラブルのとき
2.品質トラブルのとき
3.取引辞退の申し出を受けたとき
4.顧客へのお詫びするとき
5.サプライヤーへのお詫びするとき
6.記念式典への出席するとき
7.冠婚葬祭のとき
8.強気なサプライヤーに対処するとき
9.帰宅後に電話があったとき
10.飛行機が飛ばなかったとき
11.災害に遭遇したとき

まず、比較的長い時間を過ごしているこの現場からです。

<オフィス>1.自分の席にいるとき

自分の席では、いろいろな仕事をします。仕事内容は、これから述べるとして、自分の席における業務効率に影響を及ぼす「環境要因」について述べたいと思います。

スマートフォンの普及が進んだといっても、まだ企業内の仕事にパソコンは不可欠です。パソコンの使用は、各企業のポリシーによって、自由度も異なります。ここでは、パソコン周辺機器のハードについて考えます。

①マウス

マウスは、上下左右斜めに動かし、ボタンをクリックして、ホイールを回して操作します。比較的単純な操作です。複雑な動かせる利き腕で、単純な動作をするのは、もったいないのです。したがって、マウスの操作は利き腕とは逆側でおこないます。そうすれば、マウスを動かしながら、もう一方で別の作業も可能です。

もう一歩進めて、できるだけマウスを使わずにパソコンを操作することも可能です。キーボードでショートカットキーを入力して操作します。これで、マウスを操作する手の、キーボードとの移動時間が削減可能です。ノートパソコンでは、カーソルの操作部が、キーボードの手前や、キーボードの中にあります。ノートパソコンの場合は、この部分を使えば、やはり手の移動時間が削減できます。

でも、ソフトごとに対応したショートカットキーを覚えるのは面倒ですね。だから、毎日必ず使用するソフトで、かつ使用頻度の高いショートカットだけを活用します。たとえば、メール処理では、次の操作が必要です。

(1)メール参照
(2)読みおわったメールから次のメールへの移動
(3)受信メールへの返信
(4)受信メールの転送
(5)新規メールの作成
(6)送信

この6種類のキーボードショートカットを覚えるだけで、メールの処理速度は格段に早くなります。サプライヤーの来訪や会議の後、数時間席を空けただけで、たくさんのメールが溜まっている時、ほんの数分でも、たくさんのメールに目を通せます。

たまに同僚のパソコンを見て、メールの受信箱がまっ赤だと、とても残念な気持ちになります。メールの量があまりにもたくさんで、読みきれないとの言葉を何度聞いたでしょう。しかし、送付した側からすれば、必要と考えたからこそ送っています。すべてに目を通して初めて「なんでオレに送ってきたんだろう?」と疑問を持ち、考えてメールしているかどうかがわかります。メールの送付先選定にルーズな人は、仕事全体がルーズで信用がおけません。

そして、われわれの本来の仕事は、メールで得た情報のうえに成り立っています。メールを読み切るのは、仕事のほんの入口です。メールを読んで、どうするかを考える。そういった時間をねん出するためにも、メールを読む時間はできるだけ短く、短時間にしなければならないのです。

●参考リンク

日本のメールソフトは、GmailとOutlookで6割を超えます。両方のキーボードショートカットの一覧表は、次のリンクから参照できます。また、メール以外のソフトについても、リンクを貼っておきます。

Gmailのキーボードショートカット

Outlookのキーボードショートカット

Windowsのキーボードショートカット

Adobe Acrobatのキーボードショートカット

<つづく>

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