The対談 3~日本製品が高品質は本当か?(ほんとうの調達・購買・資材理論事務局)

●中国から教わってきた日本

牧野:もっと前から、多分中国の方からすると、それこそ中国4000年の歴史をひもとくと、日本っていうのは、全部中国から教えてもらってきたじゃないかって部分はありますよね。

坂口:漢字の著作権も払えと言われたらどうするんだみたいな。

牧野:(笑)ドンドン昔へさかのぼって、ひもといていって、いや、こっちが上だ、こっちが上だっていう、そういう論争。

坂口:ちょっとこれも話が違うかもしれませんけども、中国人が爆買いすることに対して、嫌悪感を抱く日本人って結構多いじゃないですか。

牧野:中国のたくさんの方がいらして、爆買いしてメチャメチャ日本にお金を落としてくださっているわけじゃないですか。あれを批判するっていうのは、私はまさに唾を天に向けて放つことだと思っているんですね。というのは、1980年代に日本がバブルのときにお金をたくさん持って海外に行って、いろんなものを買いまくっているわけですよ。

当時、日本が例えばフランスに行ってルイ・ヴィトンとか、ああいうブランド品を買い漁ると、フランスの中ではやっぱり「何だあいつらは」というような論調があったらしいんですね。その時にフランスは、国の政策として、「いや、いや、あれだけお金を持ってきてくれるんだから歓迎しましょうよ」と言って、熱烈歓迎をしてくれたと。

今、1980年代から約30年経って、日本も今となってはマナーのいい国民になっているわけですね。これは、そこまで成長したわけじゃないですか。だから、中国の方だって、多分30年経ったらすごく世界一マナーがよくなるかもしれませんよね

坂口:可能性ありますよね。池上彰さんが同じことを言いましたよ。自分がずっと思い出すのは、戦後まもなく渋谷駅が非常に汚かったと。みんなが、そこら辺で唾を吐いて…日本人がですよ。ゴミもそこら辺に投げて。昭和30年代は、美しかったなんて話もありましたけど、あれはもう美化されています。本当は汚くて犯罪者ばっかりで、実際犯罪が多かったのは、統計上も証明されてます。また、戦後まもなくで、統計が完全に取れていたはずもないわけで、それから考えると、実際もっと悪かったのは、想像に難くありません。今の洗練されたところから他国を批判するっていうのは、ちょっとまずいなっていう気がしますね。

●自画自賛国家「日本」

坂口:高品質の話に戻すと、奇妙なことを指摘しておきたいと思うんですけども、「高品質である日本」日本人が言うじゃないですか。中国人がさっき言ったように爆買いするのは高品質だというよりは、本物が手に入るっていう安心のほうでしょう? 具体的に寸法精度が何ミリ守られてるとか、モーターが日本製が入っているとか、そういうのは別にみんな意識してなくて、安心できるから買っているわけであってね。それは僕は「おもてなし」の議論と同じではないかと思ってるんです。僕は正直ほかの国の人たちが日本人に対して、「親切だね」とか「おとなしい国民だよね」といっているくらいは聞いたことがあっても、「ほんと日本人っておもてなしがすごいね」っていっているところを見たことがない。

牧野:あー、ない、ない。

坂口:ないでしょ? それが高品質でも同じじゃないかと思って。経験からいうと、「ちゃんとルールとか決まってる」とか、「細かくやるよね」とかは、聞いたことはあっても、例えば会う度に「高品質ですごい」とかいうのは聞いたことないな。「高品質」というよりも「安心感」が近いかな。

牧野:ないですね。高品質というよりは信頼感なんでしょうね。中国のサプライヤさんに行ったときに、強烈な思い出があるんですね。長丁場で、3日ぐらい打ち合わせなきゃいけない。で、…先生も経験がありませんか? 海外のサプライヤとかに行くと、打ち合わせの席上にお菓子とかが置いてありますよね。「日本のお菓子って人気がある」って聞いていたんで、ある時日本のお菓子をたくさん買って持っていったわけですよ。持って行って打合せ机に並べてね。すると、もう中国の方はガンガン食うんですよ。(笑)。で、あっという間になくなっちゃったんです。なくなって、日本から買ってきたのを全部出したから補充されないじゃないですか。なくなった日の夜にローカルのスーパーに行って同じような中国製のお菓子を買って、翌日に持って行ったんですよ。…でもね、誰も食べない。

坂口:中国は自国を信頼していない!(笑)

牧野:昔、海外からお客様を呼んだときに、休みの日には秋葉原に連れて行ったって経験があるんですけど、すごく思い出深いのが、スリランカからのお客様で、シンセサイザーが欲しいっていうんですよ。どこの楽器屋さんでも本体を必ず裏返すんですね。裏返して何をしているのかなと思ったら、メイド・イン・ジャパンを探してるんです。いや、我々ってあまり意識しないでしょ。例えば、今でこそ日本人に対してもメイド・イン・ジャパンってアピールしますけど、じゃあ、家電製品を買うときにメイド・イン・ジャパンかどうかってそんなに意識しないじゃないですか。例えば、日本のパナソニックなり東芝なり日立で、例えばマレーシア工場で作ってる、中国工場で作ってるんだったら全然買うでしょう。

坂口:ええ、全然買う。それは管理者が日本企業で安心ってことだからでしょう。

牧野:でも、そのスリランカの人は、とにかく日本で作られたものじゃなきゃ買わないんですよ。当時、安い製品は、ほとんど海外で生産されていたんですね。結果、シンセサイザーを探してまる一日、秋葉原を歩くということになったんです。予算が3万円だったんですけど、1カ所だけそれがあって、あったときの喜び様は、もう本当に尋常じゃない、異常でしたね。私もよかったなと思いましたもんね。私の一日歩いた疲れがなくなるぐらいの。

坂口:だからそれも、シンセサイザーの日本品質が良いかなんて実感なさっていないわけでしょ。ただし、すくなくとも安心感はある。他の製品も大丈夫だから、シンセサイザーも間違いないという安心感。それがものづくりでは重要なわけでしょう。なぜかっていうと、日本というのは70年代から80年代にかけて、世界の工場になったときに、さまざまなクレームを受けてきたわけですよね。それでも、自分たちが生き残るために、さまざまな取り組みをやってきた。逆に、アメリカは80年代にものづくりを捨てることになるわけですけども。そこで、日本の経営資源がものづくりに集まることになって、高品質体制が生まれたというのが僕の仮説なわけですね。

その仮説で見ていくと、日本が製品の数として、もっとも生産する国じゃなくなった。そうすると必然的に、高品質の条件というのが外れるわけですよね。端的にいえば、数量こそ、質を担保していたわけです。その仮説が正しいとすると、世界の工場として次に君臨した中国の品質が上がらざるを得ないでしょう。いまはなんとか安心感で爆買いしてもらっている。だって、中国人が爆買いしているものって、炊飯器以外は、結局、中国で作られているやつが多いですからね。(笑)

<終わり>

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