ほんとうの調達・購買・資材理論(牧野直哉)
8.調達購買部門の納期管理
8-4 どうやって適正納期を設定するか
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納期遅れを発生させないためにはどうするか。バイヤー企業とサプライヤーの双方で最低限必要な時間を盛り込んだリードタイムを設定し合意、運用するしかありません。顧客の短納期要求に適切に対応するためにも必要な取り組みです。
重要なのは、いったん設定したリードタイムを、固定化しない取り組みです。リードタイムは常に「最新状況」であるとします。個別のリードタイムが、製品全体のボトルネックになるなら、短縮するための取り組みが必要だし、他のリードタイムや、需用の煩忙の影響によって長期化する場合は、それぞれリードタイムを機動的に変更して、状況に適合する対処を進めます。どういったリードタイムであれ、そもそも固定化がありえないものなのです。
☆予備日数の上乗せを最小限にとどめる方法
納期遅れが発生すると、必要なリソースを総動員し対応しなければなりません。納期遅れの解消に費やす労力は、他の業務に与える影響も大きく、できればどんな企業でも回避したいはずです。そこで、納期遅れを回避するために、必要なリードタイムに加えて予備の日数を上乗せしている場合があります。
この納期に関する余裕でとなる予備日数は、納期遅れを発生させた場合のさまざまなリスクを想定して設定されます。適正な余裕とは、想定するに足る根拠が存在します。根拠のない余裕は、あらかじめ取り除かなければなりません。この余裕によって恩恵を受けるのは誰でしょうか。一方的に設定される短納期への防衛策としたり、あるいは納期管理のままならない海外サプライヤーからの納入対応を想定したり、さまざまな事態が想定されます。一般的にこういった予備日数の設定は、調達・購買部門であり、サプライヤーの自己防衛的に設定されるはずです。そして、過度な予備日数の確保は、自社(バイヤー企業)の競争力減退に直結します。したがって、安易に予備日数を設定すべきではありません。
そういった前提条件の上でバイヤー企業は、詳細条件を詰め、リスクを織り込まずに済むリードタイムの設定を目指さなければなりません。この取り組みは、リードタイムを発生する相手である、サプライヤーとの信頼関係がなければ成立しません。そして、真の納期短縮の取り組みは、余裕をみて確保していた日数を除いた後で、さらにリードタイムを短縮する取り組みです。
☆ボトルネックの解消
リードタイムを細分化したら、全体工程に占める割合が大きな工程をボトルネック工程として対策を施します。ボトルネック工程には、全体工程と同じような詳細分析を行って、リードタイムの根拠を洗い出し、能力拡大や効率改善をあらゆる手段を活用して行います。
この取り組みは、サプライヤーにまかせるだけでなく、バイヤー企業も協力し、具体的な対策を一緒に考えます。例えば、材料調達リードタイムが長い場合は、材料のみ先行発注を検討し、工程能力が少ないのであれば、不足工程の効率化や、外注化を共同して検討します。
☆納期短縮のメリットにも目を向ける
納期が短くなれば、サプライヤーにも大きなメリットが生まれる事実を共有します。効率の向上による、出荷量の拡大による売上拡大、仕掛在庫の減少による運転資金減少、そして短納期化によって受注機会の拡大が見込めます。リードタイム短縮のメリットは他方面に波及します。重要な点は、こういった取り組みのメリットをサプライヤーにも実感してもらう点です。継続的なリードタイム短縮活動につなげるためにも、バイヤー企業とサプライヤー双方でのメリットの実感を意識します。
納期短縮への取り組みは、企業が生き残るためにおこなう普遍的な取り組みです。価格に並ぶ、明確な優位性を打ち出せるポイントです。そのような前提条件を共有し、サプライヤーからの協力を引き出します。
<つづく>