調達・購買部門に必要な競合分析(牧野直哉)
●業界とはなにか
「業界」とは、同じ産業や商業に携わっている人々の社会を指します。筆者の場合は、製造業界であり、機械業界の企業で調達・購買活動をおこなっています。こういった「作るモノ」=プロダクトアウト的な業界と、発電業界、輸送機器業界といったマーケットイン的な業界の考え方もあります。ここで述べるのは、前者の自社(バイヤー企業)の属する業界です。しかし、分析対象によっては、後者の顧客の属する業界も含まれます。
●業界の調査方法
業界の調査は、まず自社(バイヤー企業)がどのような業界に属しているのかを明らかにします。筆者を参考にして、所属業界を明らかにするプロセスを学びます。
(1)製造業か、非製造業か →製造業
これは、製造業と非製造業で、産業構造的には第二次産業、第三次産業との区別がおこなわれてるためにおこないます。筆者の企業は、製造した製品を販売しているので「製造業」と分類します。
(2)製造品目 →機械
製造しているのは、機械です。したがって「機械業界ではないか」との仮説をたて、さらなる細分化の業界を探索します。
ここまでは、わざわざ考える必要もないはずですね。ここで、業界を俯瞰(ふかん)するための資料として、三つの資料を御紹介します。
■『業種別審査事典』 第12次 金融財政事情研究会 2012年2月
・約4年ごとに改訂
・「日本標準産業分類」をベースとした業種ごとに収録
・最新版では、前回の刊行から80業種増加し、約1,370業種を全9巻で収録
・掲載データには出典名を掲載
→この資料は、金融機関向けには業種別取引事典として。そして調達・購買部門には、産業・商品別事典としての活用が目的です。規模の大きな図書館であれば、最新版が蔵書となっているはずです。このサイトから、勤務先所在地、自宅から近い図書館を検索してください。関東では、都道府県の中央図書館および、規模の大きな市区レベルの図書館にも館内閲覧のみですが、蔵書が確認できました。
このページから、どのような業界が収録されているのかを確認します。各巻で収録されている情報は次の通りです。各巻の詳細も、このページからリンクが貼ってありますので、どの業界なのかは、明らかになるはずです。
各巻の巻頭には「利用の手引き」がありますので、一読の上で内容に進みます。各業種6ページから8ページほどにまとめられており、
<第12次 業種別審査事典 収録業種分野>
第1巻 農業、畜産、水産、食料品、飲料分野
第2巻 紡績、繊維、皮革、生活用品分野
第3巻 木材、紙パ、出版、印刷、化学、エネルギー分野
第4巻 鉄鋼、金属、非鉄、建設、環境、廃棄物処理、レンタル分野
第5巻 機械器具(一般、電気、電子、通信、精密、輸送)分野
第6巻 不動産、住宅関連、ペット、飲食店分野
第7巻 サービス関連(情報通信、広告、コンサルタント)、学校、地公体分野
第8巻 美容、化粧品、医薬、医療、福祉、商品小売、金融分野
第9巻 サービス関連(運輸、旅行)、スポーツ、レジャー、娯楽分野
この資料から、
・自社(バイヤー企業)業界
・重要顧客業界
・重要サプライヤー業界
を抜きだして内容を理解します。
類似の資料に、次のような資料もあります。内容的には、かなり概略的です。
■『最新業種別審査小事典』 銀行研修社 2009年8月-9月
・上巻360、下巻324の業種について、概況・業界動向・審査のポイント・市場推移・経営指標を掲載しています。
また、業界のポジショニングを理解するために必要なシェアの情報は、次の資料が便利です。業界ごとに購入できる点も良いですね。
■『日本マーケットシェア事典』 矢野経済研究所 年刊
・250業種、760品目を収録している資料
・各品目は年版表示前年までの過去5年間の市場規模推移
・年版表示前年・前々年の2年の企業別シェアが、金額あるいは数量ベースで掲載
・1品目、1市場 ¥1200円から Webで入手可能
こういった資料を参考に、自社に関連する業界の理解を進めます。業界を理解する上での注意点があります。
上記のような資料から得られた情報は、自社(バイヤー企業)内にも展開して、社内にある情報との整合性を確認します。業界といっても、属する企業が同じ仕組みで事業運営しているわけではありません。業界によっては、一般的な作業工程の流れが記載されています。そういった情報は、自社と比較する、あるいは競合企業との比較を営業部門にお願いするといった活動に展開します。その上で、業界や自社(バイヤー企業)、競合他社の本質を見極めます。
<つづく>