ほんとうの調達・購買・資材理論(牧野直哉)
8.調達購買部門の納期管理
8-1 なぜ、納期が遅れるのか ~必ずある納期遅延理由
納期遅れは、バイヤー企業とサプライヤーの間で、もっとも起こりやすいトラブルです。したがって、あらかじめ回避する準備をしなければなりません。
納期遅れには必ず「理由」があります。もし、納期遅れが発生してしまった場合は、一刻も早く解消して、御客様との契約を守ります。そして、表面的に調達・購買部門が扱う納期問題は、サプライヤーから自社(バイヤー企業)への納入が期日通りにおこなわれないために発生します。しかし、納期が守られなかった本質的な理由を特定し、納期遅れの原因を排除し、納期遅延を二度と起こさないための納期管理を実現します。
☆「納期遅れ」を判断する基準
納期遅れが起こったとされる場合、まず次の3つの日時を確認します。
(1)サプライヤーから事前に知らされている納入リードタイム(××日)
(2)バイヤー企業からの注文書の発行日(発注日、×月×日)
(3)注文書に記載された納入日(×月×日)
納期遅れの発生と同時に上記(1)の日数が、(3)マイナス(2)の日数で算出された日数よりも大きいか少ないかを確認します。「大きい」もしくは「イコール」の場合で、同時に(3)の期日が守られない場合は、サプライヤー責任の納期遅れである可能性が高くなります。しかし少ない場合、サプライヤー責任の納期遅れとして最優先の対応をサプライヤーに迫るのは、難しい可能性もあります。
バイヤー企業では、希望納期に納入されない=(イコール)「納期遅れ」との表現を使う場合があります。特に、社内的に調達・購買部門の後工程に位置する部門では、原因はどうあれ期日通りに納入されなければ、そのようなもの言いとなるでしょう。
最終的な顧客との契約は遵守すべきです。しかし自社(バイヤー企業)の希望期日に納入されなかったとの事実だけで、サプライヤー責任の「納期遅れ」と判断するのは、調達・購買部門として慎まなければなりません。納入に至る前の段階で、サプライヤーと自社(バイヤー企業)の納期の合意の有無を確認しなければ、サプライヤーに対して納期遅れとの言葉で最優先の対応を迫れないのです。
また、発生原因があやふやな段階で、サプライヤー責任を前提に対応を迫り、後に実は自社(バイヤー企業)に納期遅れの原因があったと判明した場合や、そもそもサプライヤーが自社(バイヤー企業)の指定・あるいは希望納入日に合意していない場合は、問題発生当初の「サプライヤー責任の納期遅れ」との対応スタンスが、事態を悪化させます。納期遅れが発生したら、前提条件となる上記(1)~(3)の確認から始めましょう。
☆納期遅れを防止する取り組み
納入日を順守するためには、自社(バイヤー企業)やサプライヤーそれぞれの、一つひとつの作業内容に設定された納期が守られて初めて実現します。納期遅れを防止には、サプライヤーだけでなく、バイヤー企業まで含めた全体工程を対象にします。
サプライヤーに注文書を発行するためには、購入条件と需要と必要数が確定しなければなりません。納期遅れの防止策を検討する場合、調達・購買部門はサプライヤーへの納期短縮化の働きかけと同時に、バイヤー企業内の各プロセスにも納期を設定し、その順守状況を注視します。サプライヤーで納期遅れが発生した場合に、納入日の繰り上げてもらうためにも、バイヤー企業側から個々のプロセスでの納期順守が必要です。
☆納期遅れの理由を突き止める
納期遅れが発生し解決した後は、遅れた原因を必ず突き止め改善を行います。どのような購入物でも、納期が遅れる原因となる工程が必ず存在します。サプライヤーからバイヤー企業への納入日からさかのぼり、最終的にはバイヤー企業の発注日までを対象に検証します。全体プロセスを細分化すれば、確実に原因は明確になります。納期遅延は、必ず原因を究明し、再発させない対策が必要です。
<了>