バイヤー現場論(牧野直哉)

5.宿泊場所を選ぶとき

宿泊先は、自宅と同じようにリラックスできて、十分な休息がとれる環境でなければなりません。初めて訪問する地域であれば、訪問先のサプライヤへ依頼してホテルを予約してもらいます。インターネットを活用して自ら宿泊先を選定する場合の注意事項について考えます。両ケースとも、宿泊するホテルとその周辺の安全性を判断し注意して行動して、出張先の業務遂行に備えます。

① 宿泊料金の違いなぜ生まれるか

自分で宿泊先を予約する場合、移動手段との兼ね合いでホテルを選定します。インターネットの検索サイトでは、地図で位置関係を確認しながら予約ができるのでとても便利です。宿泊料を確認し宿泊先を決定する前に、必ず現地の治安情報を確認します。まず「訪問先地名+治安」で検索してみましょう。日本語でOKです。大きな都市であれば、現地で暮らす日本人の情報交換を目的にしたホームページや、何らかの情報が入手できます。米国であれば、各都市の警察署のホームページに犯罪発生状況がわかるマップが掲載されています。

例えばこんなケースがありました。訪問先から同じくらいの距離に位置し、同じブランドのホテルであるにもかかわらず、宿泊料金が大きく異なっていました。米ドルで数十ドル違っています。安く泊まれる!と喜んだ半面、なぜ安いのか、理由が気になりました。いろいろ調べた結果、安い宿泊料のホテルがあった場所は、高い犯罪発生率でした。交通の便といった要因の他に、地域の治安状態が宿泊料金の違いとなって表れるのです。

出張先のホテルを自分で選定する場合、価格よりも治安を優先する意識を強く持って、確認作業をおこないます。一般的には、大都市の中心部から少し離れた地域の方が、治安は良い傾向があります。ふだん購入しているモノと同じく、価格の安さには理由があります。複数の宿泊先候補を比較して、妙に安い場合は、飛び付かずに理由を調査します。日本国内の場合、外出時に注意深く安全に配慮する地域は、ほぼないと言っていいでしょう。しかし海外では、安全確保にはコストが発生します。一定以上の宿泊料金のホテルは、設備も整って安全性が高いと判断できます。

②治安のよしあしをGoogleマップで判断する方法

最近では、Googleマップで宿泊先付近の写真がインターネットで参照できます。付近の商店のショーウインドウが、ガラスだけか、金網が貼られているかで治安状況が想定できます。日本人の駐在員が多い地域では、情報交換を目的としたホームページがありますので、そういったページを参照して、現地状況の掌握をおこないます。各地の治安情報を元に、Googleマップで参照できる地域であれば、事前に参照しておきましょう。

③行動する時間帯を想定する

大都市の繁華街にあるホテルで、周囲に商業施設がある場合など、スリや置き引きといった犯罪には注意しなければなりません。しかし、どんな状況で自分が強盗といった犯罪に遭う事態は想像できません。Googleマップによる安全確認で唯一の欠点は、すべての写真が昼間に撮影されている点です。明るい時間では、人通りが多く危険が少なかった場所でも、夜になって暗くなると、一気に危険度が増す場合もあります。日没前にレストランに入って、食後にレストランを出ると、すっかり暗くなっています。ホテルまで、あるいは車まで数十メートルの距離でも、明るい時間と比較すると危険度は増しています。

海外へ行った場合、シンプルに「日が暮れたら危険」と理解します。事実、日本よりも街灯の数は少なく、街中でも闇につつまれる場所はたくさんあります。夜でも人通りが多く、活気に満ちた場所もあります。しかし、一歩横道に入ると、雰囲気は一変します。そういった変化を感じ、小心なくらいに警戒した行動が、身を守る最善の手段です。

④アジアの大都市

ここまで、米国をはじめとした欧米圏の宿泊先選定について述べました。加えて、アジアの出張先のホテルです。調達・購買部門から出張する場合、サプライヤが現地にあるはずなので、サプライヤに予約をお願いするのがもっとも確実です。しかし、自分で予約する場合には、次の3つの点を確認します。

1)日本語のホームページがあるか

アジアの新興国には、たくさんの日本人が出張しています。そういった需要を取り込むために、ホテルの案内を日本語でおこなっているホテルがあります。そういったホテルは、日本人の嗜好(しこう)に合わせたサービスを提供していたり、朝食に日本食を提供していたり、快適に過ごせる可能性が高まります。

2)現地基準で高めの宿泊費のホテル

例えば中国の場合は、独自基準でホテルをランク付けしています。豪華絢爛である必要はありませんが、日本国内の出張で宿泊するような「ビジネスホテル」ではなく、少しレベルの高いホテルを選定がベターです。近年宿泊費も高騰していますが、日本と違う環境下で仕事をするストレスを少しでも軽減しなければなりません。

3)現地に就航しているエアラインの乗務員の宿泊先

これも1つの目安になります。航空業界も競争の激化によって、そんな高額のホテルには宿泊していません。私はスターアライアンス系の航空会社に乗りますが、乗務員の皆さんは、どんな都市でも最低限の快適さは確保できるホテルに宿泊していました。飛行機に搭乗した段階では、既に宿泊先のホテルも決まっているでしょう。しかし、次の機会に生かすために、暇そうなキャビンアテンダントか、パーサーに「日本人にオススメのホテルは、どのへんのどんなホテルですか?」と聞いてみましょう。

<つづく>

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