ほんとうの調達・購買・資材理論(牧野直哉)
●6-8サプライヤ能力が不足していたらどうするか ~サプライヤを開拓する
サプライヤを評価し、評価結果で浮彫になった問題点の解決を試みた結果、最終的に問題部分の改善はできないとの判断に至るケースも想定しなければなりません。調達購買部門主導でこういった判断をするのは、大きな困難がともないます。例えば、すでに発注済で、部品調達リードタイムは経過し、残された時間はあまりない場合は、なんとか発注したサプライヤに対応してもらいます。しかし、将来的に同じ類の購入をおこなう場合は、新しいサプライヤとの取引を模索します。その際の注意点について考えてみます。
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☆なぜミスマッチが起こったのか、原因を突き詰める
本来は、サプライヤの能力を事前に確認し、対応可能だからこそ発注を決定したはずです。しかし、なんらかの理由で問題が発生してしまった。バイヤ企業の要求条件をサプライヤが満足できない事実は、調達購買部門として深刻に受け止めなければなりません。こういった事態に、具体的な対策を講じない状態は、次の購入にリスクを抱えている状況です。一刻も早い改善に取り組みます。
調達購買部門では、注文書を発行したにもかかわらず、サプライヤが対応できなかった。この事態を、調達購買部門の確認内容と、サプライヤの能力の「ミスマッチ」とします。サプライヤの能力とは日々変動します。担当者が退職あるいは長期間の休暇を取得していたり、設備の故障でもサプライヤの能力は影響を受けます。過去に可能であった購入が現在もできるかどうかは、調達購買部門がサプライヤへ確認すべき最重要事項です。もし、事前に確認したはずの能力をサプライヤが持っていなかったら、その「ミスマッチが」起こった原因を明らかにします。新規サプライヤとして採用した時点、あるいは以前の継続審査では問題がなかったはずです。したがって、バイヤ企業側に評価基準の変更がなければ、サプライヤ側に変化があったと判断します。具体的に、どのような原因によって発生したのか、その詳細を明らかにします。
同時に、バイヤ企業としての要求内容にも違いがなかったかを再確認します。短納期対応といった要求仕様ではない条件の変更も、過去にできた、あるいは確認の結果できるはずだ、といった状態を覆すのに十分な事態です。
☆サプライヤに求めるリソースを突き詰める
原因を明らかにして後、サプライヤ側に問題があり、サプライヤに改善の意思がない場合は、調達購買部門で、要求条件を満たす新たなサプライヤを探さなければなりません。すでに発注した案件で問題が発生し、なんとか収めて事なきを得たかもしれません。同じ問題の再発は、絶対に避けなければなりません。問題を起こしたサプライヤに再度発注をおこなう場合は、再発防止の取り組みを確実に実行させ、再発しないとの確証を調達購買部門は確認しなければ生りません。再発防止の取り組みに時間を要する場合は、一刻も早く、問題=リスクの排除を、新たなサプライヤのリソースを活用して乗りきります。
新しいサプライヤを探す際は、すべてのリソースを新たに確認・評価します。特に、問題となった部分は、原因追及によって問題点を明らかにし、新しいサプライヤでの対応可否を重点的に確認します。将来的に新しいリソースが必要になる場合や、より良いリソースを持つサプライヤを探す時と異なり、時間的な制約を意識しつつ、確実に対応可能かどうかを確認します。ここでの確認作業は、要求条件を満たさないと評価した際の原因追及によって明らかになった事実を利用して迅速に、かつ確実に行います。
☆調達購買部門が求めるのは「能力」
バイヤ企業に必要なのは、要求条件に対応できるサプライヤ能力です。あるサプライヤで、なんらかの問題が顕在化した際に、新たなサプライヤへ活路を求めるのと同時に、すでに取引のある別のサプライヤに、自社が活用していないリソースが存在するかどうかも、合わせて確認します。これは、サプライヤの取引継続評価する際に、自社が購入(活用)している事業内容だけでなく、サプライヤ全社へ興味を広げて、どんな製品やサービスを扱っているのかをあらかじめ情報として入手します。
また、要求条件を満たせなかったサプライヤの存在や、満たせなかった条件等詳細を、調達購買部門で共有し他のバイヤにも周知します。バイヤの知識を総動員して、問題の解決への糸口をつかむのです。このような取り組みは、担当バイヤにはすこし酷な取り組みかもしれません、しかし、定期的にサプライヤを調査し、評価を行っていても、サプライヤ内の変化発生の可能性をゼロにはできないのです。起こってしまった問題よりも、これからの対応に主軸を置かなければなりません。このようなケースは、バイヤであれば誰しもが経験する可能性があります。対応のポイントは、問題点の解決を迅速かつ確実な実行なのです。
(つづく)