指標はこれをみろ! 3~各国の競争力(牧野直哉)
今回の「ほんとうの調達・購買・資材理論」でも触れていますが、先週スイスのシンクタンクから世界の競争力順位が発表されました。日本のマスコミは昨年の24位から21位に上昇した、そしてあるマスコミに至っては韓国を抜いたといった内容で報道されています。確かに順位づけがされると、少しでも上位が良いと考えるのは人間の性(さが)です。しかし、こういった順位は、一喜一憂する対象ではなく、どのように活用するかです。順位付けに際して、膨大な資料を各国横並びで評価して、と想像するだけで大変に困難な作業です。個人レベルではできないデータの集計、分析をおこなって、そういった資料が多くの場合、無料で入手できるのです。
私は、こういった資料を、海外にサプライヤを求める場合の基礎的な資料として活用します。海外調達に際して、まずどんな国を対象にするのかといった候補国を見極める場合に、これからご紹介する資料を参照します。また、先週発表された資料だけでなく、さまざまな機関、団体が発表する競争力をまずご紹介します。ここでは、どの資料で日本の順位が高いとか低いとかでなく、どんな根拠によって順位を算出しているのか、そしてどんな国を網羅しているのかが重要です。日本の評価数値を、とりあえずの基準値をして設定して、海外サプライヤーの候補国には、どんな傾向が想定されるのか。そんな「仮説」を構築する場合の格好の資料です。
1.IMD(国際経営開発研究所 International Institute for Management Development)
http://www.imd.org/wcc/news-wcy-ranking/
https://www.worldcompetitiveness.com/OnLine/App/Index.htm (オンラインで検索可能)
スイスに本部を置く調査研究機関、ビジネススクール)から発表される競争力順位。
2.世界経済フォーラム(World Economic Forum)
The Global Competitiveness Report 2013~2014 Full Data Edition
http://www3.weforum.org/docs/WEF_GlobalCompetitivenessReport_2013-14.pdf
ダボス会議で有名な国際機関。上記リンクは、競争力レポートの完全版で569ページにもおよぶ資料がPDFで入手可能。評価されている国のデータが2ページにわたって掲載。海外調達先や、進出先候補国の見極めに必要な基礎的なデータは網羅。
3.デトロイト
2013 Global Manufacturing Competitiveness Index
サマリー版
全文
アメリカの会計事務所が発表する製造業リソースに特化した競争力ランキング。このレポートでの1位は中国ですが、だからもの作りでは中国が最適かといえば、詳細を確認して発注する内容と適合性の高い国に目星をつける必要があります。
4.アデコ
The Global Talent Competitiveness Index 2013
http://global-indices.insead.edu/gtci/documents/gcti-report.pdf
世界的な人材コンサルティング企業による、人材のランキング。
今回、ご紹介した資料は、すべて英文です。一部、発表機関の日本法人からサマリーが日本文で提供されるケースがありますが、詳細内容は英文になります。こういった資料と、日本の報道を掛け合わせて感じるのは、日本のマスコミは、日本語訳、もしくはサマリー版のみを見て記事を書いているのではないかとの点です。だから、総合のランキングで、一喜一憂するような記事しか書けない、そう感じるんです。
実際にこういった資料を活用する場合は、データ=数値を見ます。もちろん、数値がどういった意味合いを持つかは、英文の算出根拠まで見なければなりません。幸い、今回ご紹介の資料のPDFにはすべてテキストデータが埋め込まれており、インターネット上で無料で提供されている翻訳サービスの活用が可能です。別に、自分で資料として活用するのであれば、十分に意味のとれる翻訳結果が得られます。
私は業務の中で、上記2と3の資料を継続的に確認しつつ、経年での変化を確認している国があります。自分で実際に購入しているモノやサービスを将来的に購入先を見いだす国として、あるいは新たな拠点の進出先としてです。ちなみに、具体的な国名は次の通りです。
【モノやサービスの購入先候補国】
台湾
マレーシア
タイ
ベトナム
【新たな拠点】
フィリピン
したがって、上記の資料も、上記の国の動向は、内容を詳細に確認します。おなじような作業をヨーロッパとアメリカでおこなっている担当者と定期的な情報交換もやっています。どの資料も数十~数百ページのボリュームを持ち、すべて読みこなすのには、多くの時間を要します。従って、なにか具体的な目的と、具体的な対象がなければ続きません。もし、こういった資料を参照するのがはじめての場合は、具体的に特定の国を選んで日本と比較をおすすめします。
(競争力、終わり)