ほんとうの調達・購買・資材理論「調達コンサルタントに大金を払わずにサプライヤ原材料輸入価格を推定する方法」(坂口孝則)

今回は、統計講座をお休みし、違うトピックをとりあげます。ズバリ「調達コンサルタントに大金を払わずにサプライヤ原材料輸入価格を推定する方法」です。背景を簡単に説明します。先日、関西の企業に行きました。すると、某コンサルタントに、サプライヤが使っている各原材料の原価を推定してもらっているというのです。しかも、それは安価ではありませんでした。

といってもそのコンサルタントもスパイ活動によってサプライヤ原価を推定しているわけではありません(たぶん)。公的なデータを使って推定しているのです。その方法について、ご存じの方もいらっしゃると思います。が、ここではその方法を披瀝したいと思います。

その方法を知る前に、一つだけおさらいです。原材料は多くが海外からやってきます。そのときに、CIF価格を使うのです。このCIFってなんだったか。これが一つのおさらいです。

まず、国際商工会議所が規定したインコタームズ(貿易条件の雛形だと考えてください)に、CIF条件があります。そこでは、こう定義されています。「CIF(Cost, Insurance and Freight):「運賃保険料込み」。売主は指定仕向港までの運賃を負担し、運送上の物品の減失または損傷に関する買主の危険に対して海上保険を手配しなければならない」と。文字通りではあるものの、その原材料コストと保険、海上運賃を加算したものがCIF取引条件であり、CIF価格となります。

・公的データを活用した材料コスト推定方法

そこで、さっそくですが「財務省貿易統計」を活用します。

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ややわかりにくいものの、ここでは「検索ページ」に飛んでください。

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「統計品目情報」のなかの「品別国別表」をクリックしましょう。

次に、検索条件の指定で「輸入」「年月」「品目」「地理圏」を設定です。図中に書いているとおり、品目をできれば実行関税率表に基づき入力します。

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細かな話ですが、輸出と輸入の品目コードは微妙に異なります。 「実行関税率表」(輸入統計品目表)を使い品目コードを検索していきます。

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図で表示したのはゴム製品の一覧です。一言でゴムといってもさまざまな種類があるのですよね。そこで、調べたいものをチェックし、メモしてください。もしわからなかったら、図面とか設計者に訊いてみてもよいでしょう。

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そこで、「品別国別表」に戻ります。意中の材料コードを入力します。すると、各国から輸入された量とその金額(CIF)がわかります。

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・計算をいくつかやってみると……

そして、繰り返しですが、輸入については、CIF価格(保険料・運賃込み価格)で計上されています。計上単位は1000円で、1000円未満の端数は切り捨てです。参考に申し上げると、輸出についてはFOB価格(本船渡し価格)で表示されます。CIFについて失念なさっていたら、冒頭説明箇所をご覧ください。

検索結果に、「第1数量」「第2数量」とありますよね。これが少しわかりづらい。簡単に説明します。輸入申告時には「1隻・1万トン」と2つの数量を申告する必要があります。よって、第1数量の単位が第1単位の欄に、第2数量の単位が第2単位となります。ここでは、「第2数量」さえ見れば問題ありません。

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累計金額があるので、これを数量で割ると単位あたり価格がわかります。単純な割り算なので説明は不要でしょうが、各国あたりのKg単価が計算できたあとは、比較によって各国のコスト優位性がわかるわけです。

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この金額はCIF価格であるため、日本到着以降(関税・日本国内物流費等)を考慮しない裸の価格と考えられます。

ここからは極論を話します。何が極論かというと、国さえわかれば、どのサプライヤの価格かなんとなくわかりますよね、ということです。もちろん、一つの国に、該当材料を輸出する大企業が複数存在しているケースもあるでしょう。でも、おそらくは国名さえわかれば、「なんとなく」であってもどのサプライヤからの輸入額かわかるはず。

参考となるのは、各材料のテクニカルデータや業界協会のサプライヤ名簿です(みなさんの部門になければ、設計・技術部門から借りてきてください)。これらを活用することで、どのサプライヤのCIF価格かがわかります。主要な国とサプライヤ名が載っていますからね。

・その他コストを加算する

さらにサプライヤ到着までには、大きく二種類のコストがかかります。

「通関手数料」「輸入手続費」などの<その他輸入コスト>
「在庫費」「国内物流費」「中間マージン」など<商流コスト>

です。これらはサプライヤから訊いてみてもかまいません。あるいは商社などのツテをたどって訊いてみてもよいでしょう。港や条件によるので一概にはいえません。が、それでも概算で求めたいのであれば、上記CIF価格に1.2倍か1.3倍してみればよいでしょう(根拠は薄いものの、材料取り扱い商社の粗利益が2~3割であるためです)。

と、こうすれば「調達コンサルタントに大金を払わずにサプライヤ原材料輸入価格を推定する方法」がなんとなくおわかりいただけたのではないかと思います。公的データだけを使っても、かなりいろいろ分かるのですよね。

それではまた!

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