調達・購買担当者の意識改革~パート19「サプライヤミーティングの進め方」(坂口孝則)

・サプライヤとの定例ミーティングで何を聞き、何を討議すべきか

解説:サプライヤを評価し、3~4の階層にわけます。優秀評価サプライヤとは密接な関係を築くべきと説明してきました。上位サプライヤは、他サプライヤとは異なり、私が「戦略的癒着関係」ともいうべき蜜月関係であったほうがQCD向上につながるからです。そこで年に一度、あるいは半期に一度は定例ミーティングを実施し、営業戦略と調達戦略のすりあわせをし、サプライヤにはこちらを向いてもらい注力いただく必要があります。その定例ミーティングでサプライヤトップから経営上のトピックや課題を聞き、両社一丸となって強固な体制を構築します。

意識改革のために:これまで、サプライヤ評価と通知についてご説明しました。サプライヤマネジメントとは「公正なサプライヤ評価によるサプライヤ戦略に基づいて、サプライヤを層別化・差別化し扱うこと」ですから、上位サプライヤは特権的な立場にいます。

戦略的癒着関係にはもちろん何をやったら大丈夫ということはありません。ただ、代表的な施策でいえば、囲い込みによる技術力・人員確保として
(1)伝達:発注方針説明会、表彰制度等
(2)契約:アライアンス契約・覚書締結
(3)交流:定例ミーティング

などがあります。

(1)は優先的に情報を提示し、調達戦略に応じた社内体制を作ってもらうための「発注方針説明会」や、優れたパフォーマンスのお礼をかねた「表彰制度」をあげました。また、(2)はストレートな意味での関係性向上ではないかもしれないものの、契約などによりタッグを組む方法をあげました。そして、欠かせないのは(3)です。

ここで正直に告白します。

私はバイヤー企業とサプライヤ企業のトップが定期的に会うなど、時代錯誤もはなはだしいと感じていました。いまでは、人間関係やしがらみではないスマートな取引関係が望まれている。それなのに、わざわざ会って食事して、それで……という旧日本的な関係構築があまりに埃をかぶった手法のように思えたのです。ITがこれだけ発達しているのに定例ミーティングはねえだろう、と。

しかし、この考えは修正せざるをえませんでした。やはり、ビジネスの基本は人間と人間のつながりです。会って情報交換するのとしないのではやはり大きな違いがあります。とくにトップ同士の面識があるのとないのとでは取引のスムーズさに差が出る。こう実感を抱いています。もちろん、この考えが古いと言われるかもしれませんけど。

また、先進的な企業は、定例ミーティングといっても、単純に「儲かりまっか?」「ぼちぼちでんなー」といった形式挨拶ではなく、両社の戦略すり合わせの場として活用しているのです。

・定例ミーティングの雛形公開

そこで、解説を始める前に、私の考える定例ミーティング資料の雛形を開示しておきます。これは、どちらかといえば、サプライヤのみなさまに記載いただき、議論のベースとするものです。定例ミーティングの時期は、定まってはいないものの、前年の決算がまとまり、次年度の経営をスタートさせたタイミングが良いでしょう。

フォーマット: http://www.future-procurement.com/MTGformat.pdf

おいおい、こんなに根掘り葉掘り訊くのかよ……と思わないでください。解説をお読みになり、必要な箇所だけでも良いので訊けば良いのです。

2ページ:サプライヤの決算書分析です。「対前年比」「対計画比」で何が違ったのかを一言で明確にしてもらい、右にある「減収増益」「減収減益」「増収増益」「増収減益」に印をつけてもらいます。そして、「・決算書データ(対前期比分析)」とあるところには、決算書を貼り付けてもらいます。売上高だとか売上製造原価だとか営業利益だとか経常利益だとかのポイントのみでもかまいません。ここの趣旨は、前年比で何がどう良くなって悪くなったかを記載することです。

3ページ:決算書の対計画比分析の続きです。何を書くのでしょうか。これは、可能ならば、「計画していたけれど受注できなかった案件」と「計画していなかったけれど受注できた案件」を主要なものにかぎって書いてもらいます。また、「予想以上にコストが増加した案件」「予想以上にコストが低くすんだ案件」も主要なものに限って記載してもらいましょう。ここでの趣旨は、バイヤー企業の責任においてか、あるいはサプライヤの責任において、売上高や利益が上下した理由を書くわけです。当然、バイヤー企業の責任において売上高や利益が減少しているならば次年度以降は改善を志向。サプライヤ責任において失注し売上高や利益が減少しているならば改善を要求することになります。

6ページ:その他、企業活動展開状況です。ここでは、たとえば「新しい設備を導入する予定で、こういう製品の受注できますよ」だとか「これまで開発してきた技術をやっと製品化できそうなんで、引き合いをくれ」とか「品質改善活動が成果をあげてきた」とか、なんでも良いのでサプライヤがバイヤー企業に知らせたい内容を書きます。些末な情報は不要です。トップ間で共有すべき情報を書きます。

7~9ページ:人員計画書では、できれば従業員の年齢分布などもあったほうがよいでしょう。とくに技術の伝承が問題となっていますから、定年前世代の従業員ばかりの場合、それをいかに補っていくか問題です。若年層の採用がなければ企業は中長期的に衰退していきます。また品質指標では、昨年度の品質状況。品質目標では次年度の品質水準として達成したい内容を書いていただきます。

10~12ページ:ここからが、具体的な短期~中長期の経営計画をサプライヤから述べていただく箇所です。具体的とは、売上高がいくらで利益をいくらくらい予定しているか(10ページ)であり、その売上高の内訳はどうなっているのか(11ページ)です。

とくに私は11ページの売上高の内訳について強調したいと思います。たとえばサプライヤが10億円の売上計画を立てているときに、バイヤー企業からの売上金額としていくらくらいを目論んでいるのか。これがずれるとえらいことになるからです。この例でいえば、10億円のうちバイヤー企業からは新規案件を受注して7億円くらい……と予定しているかもしれません。ただ、彼ら(サプライヤ)が予定している案件は、すでに他サプライヤに発注する目算が高いケースもあります。こういう悪しき同床異夢を初期段階から廃しておくのです。
*同床異夢:同じ寝床に寝ても、それぞれ違った夢を見ること。同じ事を行いながら、思惑が異なること

ここで記載例もあげておきます。
http://www.future-procurement.com/MTGformatex.pdf

サプライヤの経営計画を聞くなど、考えようによっては厚かましいことかもしれません。ただ、私はやはり軌を一にした調達活動を薦めます。そして、私が思うに、このサプライヤミーティングほど若手が勉強できるチャンスはありません。というのも、通常の見積り査定業務ではけっして出てこない経営用語が頻出するからです(当然ですけれども、決算書用語も)。私が通常業務外の知識を得たのも、このようなサプライヤミーティングによってでした。

・定例ミーティングのあとに

そして最後に。サプライヤミーティングのあとは、議論内容をしっかりと記録しておきます。こちらがどのような要望を出したか。そして、サプライヤからどのような依頼があったか。そして両社で何を取り組むことにしたのか……。それらを翌年、進捗確認していきます。

「公正なサプライヤ評価によるサプライヤ戦略に基づいて、サプライヤを層別化・差別化し扱うこと」がサプライヤマネジメントであるといいました。優秀なサプライヤにたいしては地道な地道な活動が必要です

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