読者からのQ&Aコーナー(牧野直哉)

読者からの質問:多くの本を先生方が出されていますが、読む順番でいつも迷います。おすすめの順番があれば教えてもらえるとありがたいです。

牧野答え:ご質問、ありがとうございます。最近では、調達購買関連でも従来と比較すればたくさんの本が出版されています。私が調達購買部門に配属された頃は、比較的大きな書店でも調達購買本は数冊しかありませんでした。調達購買業務に戸惑っていた私はすべて購入して読みました。(ちなみに、こんな本です   )現在、読む順番を迷うほどに調達購買本が増えたのはとても喜ばしいですね。といっても、大手書店で調達購買本は30点ほどの品揃えです。サプライチェーンとか生産管理、在庫管理、コスト削減関連本を含めても多くて200冊位でしょうか(当社調べ、丸善丸の内オアゾの場合)。調達購買のテーマであれば数十冊しかありません。私は全部読んでみるべきと思います。価格もばらつきがありますけど、すべて購入しても30冊であれば一冊2千円としても6万円です。日々起きている時間の約半分を調達購買業務に費やす訳です。より適切な方法論を見いだすための参考資料として、6万円はとても「安い」と思います。

というのも、本の著者は、一冊の本を書くのに少なくとも数十冊~数百冊の参考文献を読んでいるとの前提に立つためです。大手書店に並んでいる調達購買本30冊を読めば、少なくとも300冊の文献の調達購買に関わるエッセンスを学べるのです。そういった著者の取り組みによって、読者として効率的に学べる書籍が、わずか一冊数千円で手に入れられるのは、とても効率的と考えるのです。

だから「目にした調達購買本」は全部買え!と言いたいのですが、今回は「きっかけ」としてご質問にあるとおり、調達購買部門で働く初心者を想定して、読み進める順番を考えてみます。

●なぜ、調達購買部門の仕事が重要なのかを理解するために
「牛丼一杯の儲けは9円―「利益」と「仕入れ」の仁義なき経済学」
坂口孝則著

私はこの有料マガジンや、セミナー、講演を通じ「調達購買とは?」を語る仕事をしています。今回のご質問の題材にあったような「調達購買本」は、中古も含めて入手可能な本はほぼすべて入手して読んでいます。その上で、この本を最初に持ってくるのはなぜか。それは、調達購買部門の仕事である「仕入れ」と事業活動に不可欠な「利益」を、企業の決算書を読み解いてカラクリをあぶり出し、密接に絡み合っている仕入れと利益の関係性を明らかにしている点です。

私が持っている調達購買本でもっとも古いものは昭和30年代に書かれていました。以降、1990年代まで、調達購買本の内容は、書き手こそ違っても、その内容に大きな違い・変化はありません。そして、書かれている内容は、今でも輝きを失わない部分ももちろんあります。しかし、どの本にも共通しているのは

「調達購買(仕入れ)は、利益にも大きく貢献するんだ。だから当たり前に重要な業務なんだよ。」

との前提条件です。

この前提条件そのものに、私は異を唱えるつもりはありません。しかし、調達購買部門の業務が企業損益に直結する重要な業務であるとの認識は、改善されているものの未だ「常識である」と言い切るにはほど遠い状態です。なぜなら、社長みずからが先頭にたって「営業する」企業は多いですが、同じように「仕入れる」会社は非常に少ないのです。したがって、調達購買部門の業務内容を理解するために、仕入れ=購入はお金さえあれば誰でもできるとの考えを払拭し、仕入れの成否によって、利益にも大きな影響がある事実を正しく理解する必要があるのです。

本書では、調達購買と企業の利益との関係を分かりやすく提示しており、それまでに世に出た数ある調達購買本の中でも画期的なのです。調達購買部門の仕事が、企業の利益へ具体的にどのように貢献するのかをまず理解して、ぜひ次のマニュアル的な本へと継続性をもって読み進めて頂きたいのです。

そして続く読み方は、複数書籍を同時並行的に読みます。

●ストーリーパートとして
「だったら世界一の購買部をつくってみろ!」
野町直弘、坂口孝則著

●マニュアル/方法論パートとして
【初心者向】
「調達力・購買力の基礎を身につける本」
坂口孝則著
「最新 調達・購買の基本とコスト削減がよくわかる本」
牧野直哉著

【実務経験者向】
「調達・購買の教科書」
坂口孝則著
「目で見て進める<即戦>購買管理」
岡田貞夫著

牛丼本を読み終えたら、次は2冊の本を同時に読み進めてください。まずストーリーパートとして「だったら世界一の購買部をつくってみろ!」をおすすめします。多くの調達購買部門で課題となっているテーマが物語で語られています。各パートにはマニュアルとなる解説が設けられていますが、各パートの内容を補足する形で、マニュアル/方法論パートの本の関連する部分を読みます。なお、拙著である「最新 調達・購買の基本とコスト削減がよくわかる本」には、多めの索引をつけています。疑問に思った内容のキーワードを索引で調べて本文を参照したり、目次も活用したりして、ストーリーパートのテーマについての知識に厚みを加えるのです。そして、この読書を日々の実務にどのように生かせばよいでしょうか。方法は2つあります。

1つ目は、購入した本を読み返す機会を作ってください。購入して冒頭から読み進めた後、自宅の本棚に置くのでなく、オフィスに置いてください。我々がおこなうのは知識の有無を問われるペーパーテストではありません。実践した上で残す結果が問われます。今回、私が推薦した文献は、私自身が業務の際にもっとも開く回数の多い文献でもあります。そして、今回のご質問に答えるために、牛丼本を読み返しました。そしていくつか「再発見」をしました。「再発見」とは、過去に何回か読んでいるはずです。でも忘れているのですね。本を読んだからといって、書かれている内容をすべては記憶に定着できないのです。

日々の業務で、様々な疑問が浮かびませんか。そんなときに立ち戻るのが、今回推薦の書籍たちです。読み返して確認する、もしくは再度理解して、業務に生かすのです。「わからない」と思った瞬間が、知識として吸収するもっとも適した瞬間です。私は、今回ご紹介の5冊は、自宅とオフィスに加えて、移動中も参照できるように、iPhoneにデータを入れています。そして、参照したページには電子しおりでマーキングをおこなっています。これらは「わからない」と思った瞬間を逃さない取り組みです。

そしてもう一つ。調達購買部門における日々の業務でわき上がる問題や課題に、推薦した書籍ではすべて網羅できません。したがって業務対応能力の向上によって「わからない」事態に対処できなくなる可能性が高くなります。例えば、この有料マガジンでも「ほんとうの調達・購買・資材理論」で扱ったサプライヤーリレーションや値上げ対応、集中購買といったテーマは、今回推薦の5冊に記載された内容では不十分な場合も想定されます。

そんな「もっと知りたい」と思ったテーマで、新たな文献を読んでみてください。例えばアマゾンで「集中購買」で和書を検索すると、74件ヒットします。検索結果のトップページに表示された24冊の文献の中で、調達購買本は4冊だけです。4冊以外は、マーケティングだったり、経営書だったり、それ以外も様々な分野の文献になります。次の図をご覧ください。

<クリックすると、別画面で表示されます>

上記の図は、調達購買と営業の書籍数の検索結果です。それぞれ3つのキーワードによる検索結果では、調達購買に関連する文献は圧倒的に少ないのがご理解頂けると思います。これは、日本だけでなく米国にもおなじような傾向があります。したがって、ご紹介した書籍では不足する部分は、調達購買関連本以外から学びを得るしかありません。例えば、調達購買における今日的なテーマであるサプライヤーとの良好なリレーションの構築を考えてみます。もちろんご紹介した文献にも、サプライヤーリレーションに関する記述はあります。しかし、サプライヤーリレーションに関する様々な考え方、より深い考察を得るには、売り手から見たカスタマーリレーション構築の文献を参照するしかありません。事実、私も参照している文献は、営業関連本であったり、マーケティング関連書籍だったりになります。

私は1ヶ月あたり50冊前後の文献に目を通します。調達購買関連で新しい本が発売となれば、迷わずに購入しています。しかし、毎月新しい調達購買本は発売されません。したがって、購入する本のほとんどが調達購買とは直接的には関係ない書籍です。でも、調達購買業務に関する多くのヒントは調達購買本以外から得られます。今回は、ご質問にお答えするために読む順番をお答えしました。私には、自分が興味を持ったテーマや著者がいて考えずに購入しています。想像するに、こういった考えで書籍を購入している人は少数派でしょう。しかし、私は自分の、他人とは違った点を作る一手段として、このような考え方を持ち実践しています。今回お知らせした順番が、本を読む「きっかけ」になることを心から願っています。

<了>

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