中堅社員が走りながらやるべき10のポイント(牧野直哉)

●第二回「市場を意識して、対処する」2

前回に引き続き、情報に関するお話です。この話を伝えたい相手を、前回以下の通り設定しました。

1.20代後半~30代のビジネスパーソン
2.現在の勤務先に6年以上継続して勤務
3.生き残りたいと願っている
4.ステップアップしたいと切望している

ここでは、上記2「現在の勤務先に6年以上継続して勤務」に着目します。年齢的にも現在の職場でご成功、すくなくとも失敗はしていない方だからこそ、同じ企業で勤務を継続しているとの前提です。重責を担いつつ、長年の業務経験によって社内的なポジションも上がり、かつ安定し、業務を進める上では好ましい状態です。しかし、これは別の意味で、ある落とし穴に落ちつつある状態です。

同じ企業で勤務年数が長い状態にあるとは、安定した強いネットワークの中にいる状態です。調達購買部門であれば、社内の関連部門や、サプライヤーといった身近な人との強い繋がりの中で、関係も安定しています。いうなれば、とても心地よい状態です。しかし、この状態にはデメリットも存在します。自分の周囲に強く安定したネットワークを築いている友人の生活圏もあまり変わらない、同じような環境です。したがって、そこから得られる情報も、とても似通っている場合が多いのです。

強く安定したネットワークの中に身を置いている状態が悪いのではありません。そんな心地よい状態は維持しつつ、もう1つ別の世界を持つことをオススメしたいのです。強く安定したネットワークでつながっている人を「親しい友人」とするならば、「遠い知人」も持たなければならないと考えるのです。「遠い知人」が属する社会は、自分や親しい友人の住む世界とは違った世界です。その世界の情報は、自分の周囲から得られる情報と比較して重複が少なく、異なる点が多くなるのです。

ここで2つの疑問が浮かびます。1つめは「遠い知人」ってどうすれば得られるのか。2つめは、情報の違いが、好ましいのかどうか。1つめは、親しい友人の友人といった形で、人間関係が派生した結果得られた友人を指します。「遠い知人」との関係は「緩いネットワーク」と表現されます。TwitterやFacebookで、フォローしたりや友達になったりが、この「緩いネットワーク」の形成に役立つのです。TwitterやFacebookで、有名人との繋がりや、自分へのフォロー数を気にするのではなく、

「なんか面白いな、この人」

と印象に残った人こそ、フォローしたり友達申請を行なうべきなのです。

2つめの得られる情報の違いが好ましいかどうか。以前、この有料メールの「「ほんとうの調達・購買・資材理論」で「情報力」についてお伝えしました。情報力の一つに、正しさを測る尺度として、複数の情報ソースの確認を挙げました。なんらかの意志決定を行う場合も、その判断基準はいくつかの情報によって構成されます。その情報が間違っていた場合、正しい意志決定はできません。複数の情報ソースから同じ内容が伝わってきた場合は、正しい可能性が高くなるわけです。

「遠い知人」とは、TwitterやFacebookによって、緩いネットワークでのつながりが可能になりました。今が心地良いからこそ、緩く違う世界に身を置く人とつながって、違う視点の情報を得る取り組みを行なう必要があるのです。

2.ニーズを理解する

この年代になると、段々と具体的な指示を受ける機会は減ってゆきます。指示でなく、現状への問題点を見つけたり、将来的に予見される出来事のマイナス要因をあらかじめ排除したりといった仕事が増えます。同時に、後輩社員へのアドバイスや、部下への具体的な指示とすべき立場にもあるはずです。

20代に上司や先輩に不満はありませんでしたか。持っていたとしたら、どんな種類の不満だったでしょうか。私が、当時のメールや手帳を読み返して思い当たる点は次の3点です。

(1) 不明確・曖昧な指示
(2) 根拠なき、思いつきの指示
(3) 責任転嫁

こんな風に書くだけでも、いろいろな苦々しい思い出がよみがえってきます。逆に、今となっては自分の未熟さを実感する内容も多々あります。ここで、重要なのは、今立場が変わって、若い頃に見ていた上司とおなじように後輩社員や部下から見られている現実です。当然、今回の前提条件にある皆さんは、まだ多くの先輩社員や、上司の下で仕事をされているはずです。しかし、自分の下にも多くの後輩社員や部下がいるはずです。そんな人たちを混乱させないためにも、何を求められているかの根本的な部分を理解しなければならないのです。それでは、いったい何を理解すれば良いのでしょう。

前回(第一回)のテーマは「市場を意識して対処する」でした。そこで、3つの意識しなければならない市場を定義しました。

① サプライヤーとの間に存在する「市場」
② 顧客との間に存在する「市場」
③ 自分の労働力としての価値を持っている「市場」

この3つのニーズを理解して、自分の行動や後輩社員・部下への指示を決めなければなりません。それでは、それぞれの市場では、誰がニーズを持つのかを考えてみます。

<つづく>

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