Q&A(牧野直哉&坂口孝則)

【Q.1】
ノマドワーカーの見解をお聞かせ願います。坂口先生のFBなどのコメントを拝見するとノマドに対して否定的な印象を感じます。パソコン一台で稼ぐことができたら理想と思いますが、私も現実難しいと思います。副業程度に稼ぐのは可能と思いますが、本業となるとよほどユーザーを魅了する情報をタイムリーに発信し続けないと厳しいと感じます。そのための情報入手に相当な金、労力、人脈などがいると思います。よろしくお願いいたします。

【A】
一言でいうと「いくら稼げばいいか、によって難易度は変わる」と平凡な答えになります。私の周りには成功しているひともいれば、失敗しているひとも多く。年収1000万円を基準とすれば、印象論では前者が3%、後者が97%という感じでしょうか。ですので、ここからは意図的に質問の答をズラします。

本来はパソコン一台で稼ぐことがノマドワーカーではないのに、なんとなくパソコン一台で情報商材を販売する形態がノマドワーカーと思われがちですよね。本来のノマドワーカーの姿はPT(パーマネントトラベラー)が近いと私は考えています。プロフェッショナルとしての自分の実力を生かし、顧客が世界中にいるために、必然的に日本だけにとどまらない職業人……。橘玲さんの大傑作「永遠の旅行者」も情報起業家ではなく、弁護士というプロフェッショナルを描いたものでした。

話を戻しますと、それでもご質問者の方が述べるとおり、一般的にはノマドワーカーはパソコンを使った情報起業家と思われています。その意味で、「パソコン一台で稼ぐことができ」るのか、について私の意見を書きます。答えはできると思います。年収300万円くらいであれば、1年間必死にやったら可能でしょう。また300万円あればアジア諸国では暮らすことも可能です。しかし、それが3000万円であれば、並大抵ではないと思います。

それと、あまり指摘されないことですが、日本で有名なノマドワーカーの本質は「先進国で(多くは日本で)稼ぎ、海外でカネを使う」ことにあると思います。高城剛さんなどの例外を除いて、海外で仕事をして、海外の顧客からお金を受け、かつ世界中を飛び回っているひとは多くありません。これも、私が違和を抱く点です。

つまりノマドワーカーとして世界中を飛び回っても、あるいは日本中を飛び回っても、顧客が日本国内に固定されているなら、そもそも飛び回る必然性がないように思うのですね。単なる旅行ならばそれでも良いと思いますが(坂口孝則)。

【Q.2】
(前略)

1.洋書

米国はISMやCPO等、調達のポジションが日本より進んでいると聞きます。 調達に関連する書籍も多数出ていることと思いますが、お勧めのものが あれば教えてください。

2.MBA

MBAにてOperationやSupply Chain Managementといった講座もあるようですが、 調達/資材部でのMBAの必要性はどのようにお考えでしょうか?

(後略)

【A】
まず1.について。最近はKindleもありますので、けっこう読んでいるんですが、でも結局は「Balanced Sourcing」が面白いんじゃないかと思うんですよね。私が以前いた会社のアメリカに属していた有名人がいくつもの本を出していますが、推薦するほどでは……という感じです

また2.について。前職でMBAホルダーにたくさん会ってきました。優秀な傾向があるかというと、優れているひともいるし、ダメなひともいる、といったまた平凡な感想です。私が思うに、講義とは「思想」「マニュアル」「ツール」にわかれます。アカデミックな世界では「思想」がもっとも優れていると思われ、「ツール」は小手先手法と考えられがちです。しかし、私はそうかなと思うのです。というのも、「思想」の重要性は認めつつも、ほんとうにそれが最大価値であれば自動的にツールも導けるはずです。しかし、多くの場合、MBAの講義内容と実務が乖離しっぱなしです。もしMBAというものが役に立つとすれば、「思想」から発想を得て「ツール」=実務に応用できる特別に頭がいいひとにとって、ではないかと思います。その意味で完全に否定するものではありません。

もう一つ役立つことがあるとすれば、「物事を調べる」姿勢が身につくことではないかな、と。MBAで教える内容そのものではなく、調べる姿勢です。仕事は多くの場合、仮説と調査と検証と実行によって成り立っています。実行ばかりで「仮説と調査と検証」ができないビジネスマンがたくさんいます。わからないことがあったらまず仮説を立ててみる、データを収集してみる、検証してみる……この「しつこさ」を身につけられたひとは、調達・購買のみならず全分野で活躍可能だと思います(坂口孝則)。

【Q.3】
(前略)
出版セミナーに参加できないのですが、素人が出版する簡単なやり方を教えて下さい(後略)

【A】
出版セミナーは「
調達・購買関係者のための出版セミナー」のことだと思います。日曜日だったので厳しかったですか? とはいえ、1月末時点で私が予想していた人数を突破しました。ありがたいことです。引き続き募集していますので、ぜひみなさんもご参加ください。

ところで、ほんとうに簡単でよければ自費出版です。これは検索すればいくらでも出てきますので割愛します。あとは電子出版でしょうか。Kindleなどのプラットフォームを使えば、amazon.co.jpですぐさま電子出版ができます。この点についても、セミナーでお話する予定です。

本題に戻ります。簡単な方法のうち、正当法を述べます。それは企画書を作って、出版社住所録を書い「あ」から順番に送っていくことです。(「マスコミ電話帳」などで簡単に調べることができます)。バカらしいと思われるかもしれませんが、これが一番確実です。100社送れば、きっと10社くらいは面談してくれます。それ以降の条件は各人に委ねるしかありません。ただ、出版社は常に新しい書き手を求めているのですよ。

ちなみに、「あ」から順番に送る方法は、あの中谷彰宏先生(笑)も薦めています。

また現在は本を文化事業としてではなく、純粋な商品と捉える出版社も多くなってきました。著者買取の約束(出版された部数のうち数百部~1000部程度を買い取る約束)をすればハードルはもっと下がります。とはいえ、まずやるべきことは、企画書を練って、それを持って回ることです。行動に勝る解決策はありません。

なお、出版の面白い動きとして「読者にお金を払って読んでもらう」というサービスがあります。私はかつての著作で「逆転経済」を提唱しました。これは、お金を払って売り、お金をもらって買う時代がやってくると仮説を提示したものです(坂口孝則著「1円家電のカラクリ0円・iPhoneの正体」)。しかしそれにしても、出版の業界で逆転経済が発生するとは思いませんでした。記事ではいろいろと書かれていますけれど、出版コストがまさに宣伝広告費に近似しています。

最後は話をそらしましたが、行動の重要性を述べておきました(坂口孝則)。

【Q.4】
(前略)同じ職場で働く若者に困っています。思い込みが激しいというか、同じ職場の同僚とも、良くトラブルを起こしています。出勤時や退社のときも挨拶もしないし、でもわざわざそんな基本的なことを注意するのもと躊躇しています。(ちょっと悪口めいた話になるので後略) 

【A】
「最近の若い者は~」といった年長者の不平、不満は、いつの世も必ず言われてきたことです。私も、きっと新入社員当時や、20代の頃は、年長者の方からそのように思われていたはずです。そして、時代は流れて今、自分が年長者となる場面が多くなりどう思うかと言えば、今回のご相談にあるような思い込みの激しい人には閉口します。まさに時代はくり返すことを実感します(笑)。

しかし、例えばご相談にあるような

・思い込みの激しさ

・トラブルを頻発

というのは、果たして若者にのみ、特徴的に発生することでしょうか。私は「思い込みの激しさ」ということばは、逆に年長者を想起します。若くして思い込みが激しいと周囲から判断される程に、確固たる考え方にもとづいて行動している意志の強い人かもしれません。同じ職場ということですから、調達購買部門におられるのでしょうか。職場の方と同じようにサプライヤーの担当者ともトラブルを起こしていますか。私の経験からいえば、調達購買部門に配属され、人間関係づくりが苦手といったトラブルメーカーは、まずサプライヤーとトラブルを起こします。ご相談の文面を拝見して、その辺への言及がないのが少し不思議でした。

また「挨拶」ですが、その状況や、所属されている部門の雰囲気に、「若者」という要素を除いたときに、なにか職場に問題ってありませんか。例えば、上司や年長者が会社に残っていると、帰りづらい雰囲気があるとか、声の大きな人の発言力が強大で、意見できる雰囲気がない、といったような問題です。ご相談頂いた方が「若者」というくらいですから、職場でのご経験年数は長いはずですよね。経験が長いが故に、慣れてしまって気づかない問題があって、それが原因となっている事があるかもしれません。会社という場所は、意識の中で先輩や年長者に問題の根を見いだしにくい場所なんです。だって、業績評価とか人事権はそういった先輩や年長者である上司が持つケースが多いですからね。でも、いまそこにある様々な問題の根は、実はそこで長く仕事をして、風土を体現する人にこそ、もっているものではないでしょうか。実際、若者の至らない対応を問題視するって、一番簡単だと思いますしね。

そして、ほんとうに問題であり、改善すべきだと思ったら、指摘してあげるべきだと思います。挨拶をしなことに理由があるとも思えませんが、やり方を変えろ!ではなく、なぜ?と理由を聞くのです。そうすると、聞いた理由から、もしかすると万が一学ぶべきことがあるかもしれないのです。理由を聞いて、理解できなければ、そのまま相手に伝えれば良いと思います。そんなことと同時に、組織内で年長者からみれば、相対的に立場の弱い若者の立ち振る舞いに問題点を付け替えていないかどうかを確認すべきと思います。(牧野直哉)

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