転職を考えない人が読む「転職」のおはなし 4(牧野直哉)

3.転職の必要がない今こそが「転職」を考える最良の瞬間である理由

この文章の題名は「転職を考えない人が読む「転職」の本」としました。なぜ、転職の必要のない今、転職を考える必要があるのか。それは今、転職市場でもっとも価値のある、積極性、セルフスタートといった売れる特徴を体現できるためです。

(1) 意図しない転職活動を強いられる可能性

実は、この文章を書き始めた頃、私の同僚が二人クビになりました。そんな情報が、私にも伝わってきた頃、予期しない上司からの呼び出しがありました。これは、おれも……と、正直思いました。日本企業に勤める方は、あまり想像できない境遇かもしれません。コンプライアンスの観点でも、呼ばれて、その当日にクビを言い渡されるケースはありえませんね。しかし、だからこそ、とても陰湿な形(リストラ部屋 http://goo.gl/b0ICn とかね)での明言無き退職勧告が横行することにも繋がっているのです。

私の場合、組合組織もない企業に勤務しています。「いつかクビになるかもしれない」は、想定外の出来事ではなく、今そこにある危機です。だからこそ、そんな事態になっても、慌てない、騒がないように準備をしています。ただ、特別なことをしているわけではありません。信頼できる、転職支援をしてくれるリクルーターと常にコンタクトを保ち、今の仕事により良い、より大きな成果を求め、必要な自分の能力を向上する継続的な取り組みと投資を心がけ、実践しています。

(2) 人生を踏まえた転職活動が必要な時代

企業とは、永続的な活動を求める存在です。かつて、日本企業がその繁栄を謳歌していた頃、その強さの源泉である従業員の雇用慣行を次の通り表現していました。

① 終身雇用

② 年功序列

③ 企業内組合

さて、現在はどうなっているでしょうか。一定の年齢に到達すると、子会社や関連会社に出向したり、早期退職優遇制度をもうけたりといった形で、終身雇用は崩れつつあります。非正規雇用者が、労働力人口ベースで20%、15歳~25歳では、40%を越えていることも、すでに終身雇用が崩壊していることを表しています。職務内容に基づいた給与体系や能力給、年俸制の導入によって、年功序列も崩れつつあります。企業内組合は、労働者の組織率も、2008年で18%と、対象とならない労働者が過半数以上を大きく占めています。毎年、今の時期になると「事実上の春闘のスタート」といったことが報道されますが、「春闘」にまったく関係の無い人が過半数を大きく超える中で、ニュースとしてのバリューがあるのかと不思議に思えます。

かつての雇用慣行の下では、終身雇用によって勤務先の企業により、人生が保証されていました。少なくとも、勤務を続け定年到達で退職をすれば、退職金と年金で路頭に迷うことはなかったわけです。しかし、終身雇用と、それに付随する仕組みがこれだけ疲弊した現代、現在の勤務先から、生きていく糧を得つづけることを、将来にわたって信じ続けることはリスクが高すぎるのです。ここで、誤解しないでいただきたいのは、新卒で入社した会社で、定年まで勤め上げるのは、ほんとうに素晴らしいことだと考えています。そのような人生を送ることも否定しません。しかし、そういった「一社で勤め上げる」ことが、難しくなっている時代だということを考えて頂きたいのです。

1. 転職準備

ここまで、今具体的に転職を考えていなくても、必要になる可能性が、誰彼の区別なく高まっていること、だからこそ、幸せな人生を送るためには、必要になる前に準備として、会社を替わることを想定する必要性を述べてきました。ここからは、具体的な転職準備の前の慣らし運転として、次の3点の実践をオススメします。

(1) 社外・同職種の友人を持て

この文章は、未来調達研究所のサイトで販売することを想定して書いています。したがって、調達購買にたずさわる方が多いでしょう。調達購買の世界では、費用対効果でも「購買ネットワーク会」( http://goo.gl/bO2CC )が、社外で同職種の友人を持つのに、もっとも効率的です。様々なイベントを、関東だけでなく、関西、中四国、海外では上海でも開催しています。

社外・同職種の友人を持つ意義とは、自分の現在のポジショニングを客観的にみることができる点です。同じ会社で長い年月働いていると、良くも悪くも勤務先の論理に囚われてしまいます。たとえば、話をする言葉をとっても、その定義は様々です。同職種で社外の友人と話をする場合は、そういった言葉の定義のずれを確認しながら話をします。転職の際、まず話をするのは社外の人です。社外の人に、自分が社内でやっていることを説明し、理解してもらわなければなりません。社外の友人と話をすることは、言葉の定義の違いを理解する格好の場になります。自社の言葉の使い方が良いとか悪いとかではなく、その違いを理解する場として活用するのです。

それ以外にも、他社の取り組みには、いろいろ参考になる点もあります。もちろん、置かれた環境や、もっているリソースが違うので、同じように真似することはできません。しかし、参考になるような取り組みを他社がやっていることは、大いなる刺激です。決して、社内の同僚との話では得られないものです。そして、私の勤務先でも、数十人同職種の同僚がいます。そんな中で、社外に同職種で友人を持っているのは、はたして何人いるのか。社外の同職種の友人と、やりとりを継続しているのは、私一人でしょう。この事実も、私の転職マーケットにおける、他の人との違いになっているとの自負があります。

最後に、気の合う友人との語らいは、いつでも、どこでも楽しいものです。まさか、社会人となって十数年、社外に毎日のようにメールをやりとりし、月に数回は会って語り合える友人を持てるとは思いませんでした。この電子書籍の最後には、そんな友人の一人との対談の様子を収録していますので、ぜひ最後までお読みください。

<つづく>

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