ほんとうの調達・購買・資材理論(牧野直哉)

●決定版サプライヤーマネジメント 15

前号では、なぜサプライヤーマネジメントが必要となるのかについて述べました。サプライヤーマネジメントとは、サプライヤーとの戦略的な部分を共有することでおこなわれます。その共有度合いによって、サプライヤーとの関係を測ります。しかし「戦略の共有」という、抽象的な言葉を2つ重ねています。もう少し、具体的なサプライヤーとのビジネスの状況に応じて、サプライヤーマネジメントについて考えてみます。

次の表をご覧ください。1(関係が薄い)~5(関係が濃い)となっています。それぞれ、サプライヤーとの関係をあらわしています。最初に、1~5に場合分けする基準について説明します。


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●発注方式

発注頻度によって場合分けしています。1のほうが少なくて、3以上が多くなっています。その発注頻度の多さをどのように処理するのか。その処理方法の違いで、場合分けを行ないます。

●価格根拠

発注頻度を根拠にして、購入コストの基点をサプライヤーにするか、それともバイヤー企業側とするかで場合分けをします。

●価格決定

価格決定しなければならない回数によって場合分けをしています。量産品で、一定の期間に何度も同じ製品を購入する場合、購入の都度価格決定するのは効率的ではありません。一ヶ月とか、三ヶ月、半年といった一定期間で、その期間内に納入して貰った製品は、同じ価格を適用することで、事務処理作業を減らす事ができます。

●調達リードタイム

これは物理的なリードタイムではありません。注文書を発行してから納入日までの期間を表します。

●納入検査

密接な関係をベースにして、サプライヤーの出荷検査内容が信用できる場合、出荷検査のレポートによっておこなわれた良否判定を、バイヤー企業側の受け入れ検査に代用します。実質的に受け入れ検査はおこないません。

●発注量

これは、個々のサプライヤーへの発注量が自社の総発注量にしめる割合から判断します。

●リレーション面積

下の図をご参照ください。

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上記の図は、発注側(バイヤー企業)と受注側(サプライヤー)で、同じ部門があるとした上で、各部門のそれぞれの職位の人が、どの程度人間関係を作っているかについて見える化したものです。上記の例では、左側は1非定期購買を、右側は4、もしくは5のサプライヤーをあらわします。この場合「人間関係の有無」をどのように判断するかがポイントです。これは別号で詳細な説明を加えます。

●ロイヤリティ(忠誠度)

サプライヤーが、バイヤー企業を重く見ているか、それとも軽く見ているか見極めます。バイヤー企業側からは重要とみているけれども、サプライヤー側からは、さほど重要視されていない。このようなアンバランスはもっとも避けるべきです。このポイントも別号でご説明します。

続いて、濃淡を区別について説明します。

1. 非定期購買

これは、需要が不定期で、需要が発生する頻度も低いサプライヤーです。需要が少ないために、発注量も少なくなります。発注頻度が低いために、サプライヤーへの影響力の行使が難しくなります。また納入される製品もバイヤー企業側からは滅多に見ないものになるため、受け入れ検査でのチェックは不可欠となります。サプライヤーマネジメントの視点では、あまり重要視されない分、サプライヤーから提示される納入諸条件(納期、価格)を受け入れざるをえなくなり、受け入れ検査での確認が必要です。

2. 購入見通し(Forecast)の共有

これは、1に対して定期的に需要が発生し、かつ購入する見通し・計画をあらかじめサプライヤーへ提示します。しかし引き続き購入数量は低く、購入製品もサプライヤーの標準品や規格品です。注意点としては、あらかじめ提示した購入見通し・計画へのバイヤー企業、サプライヤー双方の合意です。定期的に購入するといっても、需要変動によって提示した購入数量が少なくなる、あるいはゼロになる場合や、逆に数量が増える場合にどう対応するかもあわせた事前の確認が必要です。ここでは「頻度」がポイントです。常に需要があるのであれば、普段購入している量の中で変動を吸収することができるでしょう。頻度が低くなればなるほどに、1に近い対応が必要です。

ただし、サプライヤーマネジメントを進めるにあたって、その対象となるかどうかが判断される第一の関門になります。定期的で高頻度に購入するサプライヤーは、バイヤー企業側にとっても重要なサプライヤーです。

3. バイヤー企業向専用品の納入

この場合は、上記2の「定期的・高頻度」に加えて、サプライヤーの設計能力を活用していることが明らかな場合です。加えて「定期的・高頻度」であることから、調達・購買部門のみならず、設計・技術部門や生産管理、品質保証とサプライヤーの対象部門との直接のコミュニケーションが存在します。

4. 共有した戦略をベースにした共同開発

この場合は、上記3に加えて、バイヤー企業とサプライヤーの経営レベルでのコミュニケーションが存在し、経営戦略についても情報交換し、双方とも影響を与える存在である場合です。

これまでの場合分けは「量産」する製造業を意識しています。次回は、同じ内容について、量産ではない=受注生産品の場合分けについて説明します。

<つづく>

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