坂口孝則の「超」調達日記(坂口孝則)

■8月X日(月)■

・俺はいまソーシャルレンディングに興味がある(これ以降、「俺」「ぼく」「私」が混在するけれどご容赦を)。ソーシャルレンディングとは、ネットを使った資金調達のことで、新たな投資スキームとして有名になりつつある。俺は「maneo」ってところを使っている。怪しげな投資情報が満載(笑)。でも、銀行からお金を借りずに、ネットを使って一般人からお金を集めるわけだから、怪しげなのは当たり前か。しかし、その怪しさに本質がある気がする。

・利率も高い。こりゃ、銀行定期預金なんてやってられませんで(何弁だ、これは)。もちろん、利率が高いということは、リスクがあることでもある。

・ところで、ぼくは最近、雑誌原稿の関係もあって、「お金を増やす方法」についてさまざまな文献を読んでいる。定期預金、FX、株、投資信託、国債、リート……。いろいろな方法がある。しかし、得た結論は「こんなことに力を注ぐのだったら、まじめに働いたほうが良い」ことだった。おそらく、20~40代の読者であれば、ぼくの結論があてはまるであろう。必死に働いて、それによって得られるリターンのほうが、はるかに利殖よりも大きいと思うね、俺は。

■8月X日(火)■

・ATカーニーの「最強の業務改革」を読む。うん、なかなか面白いんじゃないかな。だけど、途中で「間接材」が「関節材」と誤植されていたのには笑った。意図的だろうか。そんなはずはないか。他山の石とするべく役立てよう。

・あの有名な「やや日刊カルト新聞」の主催者が本を出版した。その名も「『カルト宗教』取材したらこうだった」。読んでみた。うむ、興味深くはあるけれど、なんというのでしょうか、カルトに惹かれる現代人をもっと深く抉ってくれたほうがよかったかな……。読む価値はあるのだけれどね。ぼくが高校のときに読んだ「いまどきの神サマ」「洗脳体験」のほうがインパクトあったな。とくに後者は文庫本にもなっているからオススメします。

・本業の方は、企画書を二つ提出。ああ、疲れちゃった。誰か手伝ってくれないかなあ。でも、事務作業じゃないから難しいのよねえ。

■8月X日(水)■

・早朝から起床し、広島に向かう。マイレージは相当に貯まった。どこか行きたいなあ。屋久島とか……。「何もしない」状況があまりに少なすぎる。バカンスを取得する必要がある。ぼくは、旅行中にはできるだけ何もしないようにしている。ヨーロッパでの休暇も、ホテルで何もしなかった。それが休暇の意味だろうと、ぼくは理解している。むかし、ある偉人が「生きることなど、家来に任せておけ」といったらしいけれど、「観光など、凡人に任せておけ」ということになるだろうか。

・などと考えていたら広島に到着。ほんとうに暑い。バスで市内に移動。「たまむすび」のポッドキャストを聞く。ほんとうに、山里亮太さんは面白いなあ……。俺と同い年か……。まだお会いしたことはないけれど、才能あるよなあ……。アイドルに詳しいし……。俺の「同い年に嫉妬する精神」は異常かもしれない。

・夜には広島駅周辺にて食事会。先方が4人、こちらは2人。なんだか緊張していたけれど、1時間ほどすれば俺がペラペラ話していた(これを「酔っている」という)。マジメな人だろうなあ、と思っていたらレゴの話で盛り上がったり、マンガの話で盛り上がったりした。

・企業人は表面的には「会社の顔」しか見ることができない。しかし、頑張れば、その下の「個人の顔」を見ることができる。ぼくは「官僚vs国民」とか「政治家vs国民」などという対立軸を好まない。だって、官僚でも政治家でも、結局は一人の国民にすぎず、分離する必要がないと思うのだ。どんな人でも、一人の生活者としての、一人の消費者としての、一人の男性・女性としての側面を持っている。そのことを忘れないようにしたい。

■8月X日(木)■

・某小説家のかたのお誕生日。携帯にメールを出しておくと、すぐに返信が届く。この素早さ。見習わなければいけない。24時間以内にメールを返信するルールを遵守するひとは驚くほど少ない。しかもこの小説家のかたは、びっしりと文字が詰まった返信を毎回欠かさない。ほんとうに見習おう。相手が誰であれ、このようなご丁寧な返信をすることにいつも頭が下がる。

・この日は、コンサルティングで某企業にカンヅメ。8月末で終了の予定で、出口が見えてきた。最終報告資料を作らねばならず、時間が足りない。しかし、煮詰まってきたことは良いこと。それにしても、「煮詰まった」を「行き詰まった」の意味で使う人があまりに多い。本来、「煮詰まった」は、「アイディアが形になりつつある」意味だ。

・と、ばたばたしているときに、連載原稿のゲラ確認メールが。「本日中に確認してご返信ください」とのこと。いつも思うんだけれど、出版業界のこのスケジュール感覚のなさはどういうことだろう。「確認する時間がないので、そのまま掲載してください」と返信する。

・同じことをずっと繰り返すことを「進化のないひと」といって良いと思う。なぜ、毎回毎回、締め切り間際になると、同じトラブルが絶えないのだろう。なぜ前倒しで仕事をしようとしないのか。きっと出版界は宿痾にがんじがらめにされているのではないか。

・ほんとうに大切な打ち合わせに遅れたり、大事なときにメールを出し忘れたりするひとがいる。「手が離せませんでした」「突発的な用事がありまして」などという言い訳をこれまで何回聞いただろう。そのたびに、「その程度の予定管理であれば、きっとこの人は成功しないだろうな」と思うのである。

■8月X日(金)■

・午後からセミナーの打ち合わせで新宿へ。士業のための売上アップセミナーなるものの、講師をぼくがやることになった。それで、士業の状況を聞いたのだけれど……。あまりにレベルが低いので辟易した。このメルマガの読者で独立したいというひとがいたら覚えておいたほうが良いのは、「自分の売りものになるサービスや商品をもっと徹底的に考えよう」ということ。どうしても、自分自身だけの評価では、甘くなる。客観性がなくなる。

・具体例で考えよう。「就職学生コンサル」なるもので独立したひとがいる。食えないそうだ。独立したあとに、「なぜ仕事がないのでしょう」と悩んでいる。面接の受け方や服装やエントリーシート記載方法についてコンサルティングを行うのだという。単純にこれだけの疑問が浮かぶ。「あなたは学生に就職活動を伝授できるほど、実績があるのか? 冷たいことをいえば、難関企業の面接を通過したことがあるのか?」「あなたしか教えることのできない、卓越したコンテンツがあるのか? しかも、それは実効性があるものなのか?」「たとえ、学生があなたに価値を認めたとしても、あなたのコンサルティングにいくら払うのか? また、その単価であなたは生活できるのか?」

・この程度のことは、独立前に考えておくべきだろう。可能ならば、市場でテスト販売して、どのくらいのお客さんがつくかをチェックしたほうが良い。基本的な考慮すらせずに、未知の領域に飛び込むことほど危ないものはない。まあ、とはいっても、独立してしまってから、過去を反省してもどうしようもない。なんとか現実を改善するために一歩一歩努力していくしかない。

・しかし、それにしても、この手のひとは、事業のアイディアについて「考えたんですが、なかなか打開策が思いつかなくて」と必ずいう。ほんとうなのだろうか。自分の生活がかかっているのに、「考えたんですが」思いつかないなんてあるだろうか。そこでぼくが「どれくらい考えたんですか? 100時間? 1000時間?」と訊くと、「いえ、一日ほど……」だと。考えた、という以上はもっと徹底的に考える必要がある。現場を変えようと思うのであれば、唸って唸って考えて、そのなかから明日につながるものをつかむ必要がある。たやすく「考えた」といわないでほしい。

■8月X日(土)■

・引越しをすることになったので、IKEAやビックカメラアウトレットなどに向かう。日本は不景気で、サラリーマンの平均所得が下がっている。それは事実であるものの、多くの商品がより安価に手に入るようになった。10年前からするとテレビの値段は三分の一ほどになっているし、他の家電類、家具類も値下がり続けている。このメリットにも目を向けたい。

・最近、女性雑誌の編集長から面白いことを聞いた。「もはや生活オトク情報」の類の企画が成り立たないという。以前であれば、プロしか知らない節約ワザがあった。しかし、いまでは価格.comで検索すれば、最安値店舗・商品を検索できる。しかも一瞬で無料で。そうなると、雑誌メディアでは、(1)ネットよりも早い新商品情報 (2)ネットよりも網羅的な情報 (3)商品の独自評価情報 に向かわざるをえない。

・ただし、(1)は実際のところ難しい。(2)もネットではまとめサイトが充実している。そうなると、(3)が残る。「MONOQLO」などでは、宣伝広告を一切入れずに、各商品に執拗なテストを繰り返し結果を掲載している。同誌が成功するかはわからないが、雑誌メディアの生き残りをかけた闘いがはじまっている。

・ああ、それにしても引越って面倒ね。日本では、あらゆるものの手続きが必要だ(役所・免許書・電気・ガス・水道・インターネット・各種運搬会社)。本田直之さんは、「ノマドライフ」のなかで、成功したければ引越しを繰り返せ(大意)といっていたけれど、この面倒さが我慢ならない。引越しがたやすくなれば、日本人の移動が進むに違いない。

<つづく、かもしれない>

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