ほんとうの調達・購買・資材理論(坂口孝則)

・バイヤーのためのサプライヤー工場の「見える化」の話をしようパート2

バイヤーが工場見学に行くときに何を記録し、どうやってコスト低減の原資を見つけられるか。これをテーマに連載を開始した。前回のおさらいからいこう。まず、サプライヤー工場を見るときに使うのは、次の四つのツールだった。そして、これらの道具を使って描く手法を「バリューマップ」と呼んでいる。この連載を通じてお伝えしたいのは、この「バリューマップ」の手法だ。

1.バリューマップ四つの道具で工程を記載する

 

この四つの道具だ。それぞれの使い方についてはバックナンバーをご覧いただきたい(バックナンバーを見ることのできない無料会員の方はしばしお待ちを)

おさらいは続く。前回提示したのは、このようなサンプル工程だった。

この工程を、さきほどの四つのツールによって記述してみよう中間在庫はそれぞれ「12,000個」と「9,000個」だと仮定しよう(実際は中間在庫をヒアリングする必要がある)。

すると、工程を視覚化できるようになる。そして、またいくつか追加で記載する情報がある。

2.サイクルタイム(加工時間)とリードタイム(工程リードタイム)を追加する

その追加記載内容は、サイクルタイムとリードタイムだ。サイクルタイムとは、加工の時間であり、リードタイムとはその工程から次の工程に何日かかって運ばれているかを示すものだった。

「材料の搬入」と「出荷」を加えれば、工場全体のバリューマップを記述することができる。

実際の私のバリューマップはこのようなものだ。

たとえば、このような工程があったとしよう。そして各種の情報をあなたが得たとする。

<図をクリックすると大きくできます>

そこから私はバリューマップの手法によってこのように記述することができる。

<図をクリックすると大きくできます>

かなり汚い手書きの図で恐縮だけれど、実例を見ていただきたかった。

このように視覚化すると、見えてこないだろうか。改善の萌芽が。そして、コスト低減の案が。私がここから追記した内容は次のとおりだ。

<図をクリックすると大きくできます>

まず、

(1)都度搬入:材料が10日に一度しか運ばれてこない。このサイクルは改善できないか。サプライヤーが使っている材料メーカーにお願いして、10日サイクルをもっと短くできれば工程全体が短かくなる。

(2)稼働率向上:たとえば切断工程は、次工程に製品を渡すまでに3.5日のインターバルを置いている。これはもったいない。稼働率をもっと上げることによって、この感覚を縮めることはできないか。

(3)人数の変更:溶接工程では1名で作業しており、時間もかかっている。人数を追加することでサイクルタイムを上げることができないか

(4)ロットサイズの変更:それぞれの工程でのロットサイズが大きすぎる。段取りは多くなるものの、少ロット生産によってリードタイム全体の短縮を図ることはできないか。

というアイディアを書いている。

もちろん、これはアイディアに過ぎない。それにバイヤーがぱっと工程を見ただけだから、それは思いつきの域を超えないものかもしれない。100アイディア中、95アイディアは無意味なものかもしれない。

ただし、その95アイディアが弊履に化したとしても、残り5つのアイディアには使えるものがあるのではないか。そもそも現場を確認しつつコスト削減のアイディアを見つけるのはたやすいものではない。まず見える化により工程を把握し、そこから「机を叩いて下げる」のではない、現場に即したコスト削減アイディアを模索するのだ。

あなたの前には複雑怪奇な工程が、単純な四つのツールによって視覚化されたバリューマップが現れた。ここから(多くは思いつきかもしれないけれど)、サプライヤー工程の改善を思いつくままに記載していこう。

そして次回はさらに、調達・購買担当者の立場からサプライヤーの工程を改善していく具体的な考え方について述べていこう。

<つづく>

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