プロの定義(牧野直哉)

プロフェッショナル(以降「プロ」と表記)とはなんでしょうか。

私には「私はプロなので……」が口癖の同僚がいます。ある分野については、まさに卓越した知見を持っています。それは万人の認めるところでもあります。しかし、私個人的には「プロ」の称号が、なぜかしっくりこないのです。これだけのことであれば、そのまま捨て置けば良いのですけど、自称「プロバイヤー」である私には、プロ足る所以を多い求める責務があります。私が同僚に「しっくりしない」部分が、プロたる条件の一つではないかということで、すこし考えてみることにします。

ある打ち合わせの場面。そのプロな同僚も出席しています。ある問題について討議をしているのですが、白熱してくると語気も強くなることはもちろん、話の内容がとたんにわからなくなります。ある分野における専門用語のオンパレードになってしまうのです。高ぶる本人をよそに、周囲はなにか一歩引いた、冷えた空気が漂ってもいるのです。

登場する専門用語を、できるだけメモして、後にネットでググってみます。なるほど~そういう意味だったのか。そんなことをしてやっと先ほどの話の糸口を掴みます。しかし、その打ち合わせに出席した私を含めた大多数は、その分野には明らかに素人なわけです。ある改革を進めるための打ち合わせで、多くの協力を得なければならない中で、果たしてそのような専門用語連発の発言がプロとして妥当なのかどうか。ここで、一つの結論を得ることができます。

● プロは素人にもわかりやすくなければならない

次の場面は、プロな同僚と私の共通した上司との会話。年齢も近いこと、そして上司も私も転職組ということで、お互いの職責を越えた会話が成立する、そんな仲です。そして自称プロの同僚に話が及びます。

「その気になってくれると力を発揮するんだけどね、なかなかその気になってくれないんだよね」

先日、社内であるイベントが開催されました。その実行委員だった自称プロの、準備、当日の立ち回りには、誰もが賞賛の声を送るほどのものでした。私自身、その同僚の隠された能力を知らされた気がしています。しかし、数年間の同僚としての付き合いの中で、初めて見た光景でもありました。実際私の上司は、その同僚をいかにしてその気にさせるかで日々苦心しています。最初の頃は、ちょっとしたヨイショでも踊ってくれていたらしいのですが(笑)しかし最近では、なかなかヨイショが効かないとは、私の上司の弁でもあります。まぁヨイショで踊らせつづけるのもなかなか難しいでしょうけど……。

企業の業務とは、日常であり日々の出来事ですね。人間ですから、毎日精神的、身体的なコンディションが違うことには、上司部下の区別無く配慮しなければなりません。しかし、今日のアウトプットがどう考えても0%。昨日も一昨日も、そういえば、最近0%続きだな。二ヶ月前は200%の日もあったんだけど……みたいな人は、どんなに優秀で、はまったときのアウトプットは極大化するかもしれないとしても、組織人としては使いづらいと言わざるをえませんね。

私は、米大リーグで活躍する選手では、元巨人の松井選手のファンです。松井選手の書いた「不動心 http://amzn.to/g9YVX3 」という本には、心から共感しました。野球という分野では世界最高の位置にある大リーグで活躍する選手の「不動心」ですから、そりゃ市井の一人である私の心持ちの状態とは雲泥の差があります。しかし、言うべき事を一言でまとめるとするならば、背伸びは続かないということ。大リーグという最高の舞台に常に存在し続けるための不動心を持ち続けることを自分へ課している松井選手は、常人とはことなるすごみを感じるわけです。ここでも一つ、結論を得ることができました。

● プロは不動心を持って、卓越した結果を出し続けなければならない

ここで、今回結論として導いた2点について、バイヤー視点で考えてみます。

● プロは素人にもわかりやすくなければならない

バイヤーは、買う人です。従い、プロバイヤーというからには、買うことに関して人並み外れた知識を持ち得なければなりません。そして、人並みはずれた知識を、買うことに関しては素人である人にも、わかりやすく指し示すことが必要になります。

日本能率協会の発行する「調達プロフェッショナル知識ガイド http://bit.ly/dNrxit 」によれば、バイヤーには、次のような知識が必要であると書かれています。

・ 戦略・マネジメント
・ 開発購買
・ 調達実施(分析、交渉、契約書)
・ 調達管理(予算管理、品質管理、生産管理)
・ 調達実施の基礎知識(財務、リスク、ISO、物流)
・ 調達システム
・ 調達の社会的責任
・ コストリダクション関連知識
・ マネジメント手法
・ ビジネスファンダメンタルズ(問題解決、コミュニケーション、ビジネスマナー)
・ 非直接財調達

一般的なバイヤー業務を網羅するための本ですが、非常に広範囲にわたっていますね。これに加えて、実際に調達するモノやサービスに関する知識、業界知識等を加えると、そんな知識を兼ね備えたスーパーマンみたいなバイヤーいるのか、と勘ぐりたくもなります。このような知識・知見を兼ね備えて、なおかつわかりやすく説明できなければならない。私は、目指すべき頂点を、少しでも近づけたいとの思いがこみ上げてきています。

● プロは不動心を持って、卓越した結果を出し続けなければならない

私がバイヤーになりたての頃、所属する企業の決算は半期毎でした。今では、四半期毎になり、企業によっては月次や社内管理用に日次で決算している企業もあります。バイヤーに求められる調達管理では、この決算をゴールとしたサイクルでの管理が不可欠です。半年から三ヶ月、一ヶ月といった決算期間の短縮化は、バイヤーにとって「期末の帳尻合わせ」がやりにくくなります。おっと、いきなりちょっと次元の低い話になってしまいました。火事場の馬鹿力とは、まさに火事という不動とはほど遠い状況下で発揮される力のことです。幸いな事に、私は自宅や関係先の火事という災難に見舞われた経験がありません。到底、私だけでな誰しも数ヶ月に一回巡ってくるはずもないのです。

決算期間の短期間化とは、帳尻合わせ=火事場の馬鹿力が効かなくなると書きました。しかし、数ヶ月に一回程度に発揮される力など、火事場の馬鹿力と比べれば、たいした力ではないのでしょう。と、いうことは、日々継続して実践するレベルの底上げ、不動心としての対応能力の底上げが、プロバイヤーを目指す者には、非常に重要となることがご理解いただけるでしょう。

こう考えていくと、私の同僚は残念ながらプロにはほど遠いとの結果になってしまいます。同時に、プロ××と自称することは、勇気のいることになります。でも、

・ わかりやすく
・ 平常に

といったキーワードの重要性を再確認できたことで、よし!とプロバイヤーを目指す道を進んでゆきたいと思います。

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