CSR調達/持続可能な調達~CSR調達実践への取り組み

CSR調達の実践には、持続可能性に加え、もうひとつの柱となる社会的責任の確保があります。調達購買を行う上で、継続的で日常的な業務の中に、社会的責任を全うする取り組みへ落とし込んでリスクの顕在化を防ぎ、企業としての社会的な信頼の向上に貢献しなければなりません。

ここで、企業の社会的責任とは何か、について考えてみます。株式公開用語辞典として、以下の通り解説されています。

企業がさまざまな活動を行うプロセスにおいて、利益を優先させるのではなく、ステークホルダーと の関係を重視しながら、社会に対する責任や貢献(社会的公正性の維持や、環境対策の確実な実行)に配慮し、長期にわたって企業が持続的に成長を経営戦略として捉え、そのように社会での役割を果たさなくてはいけないという社会側からの要請を意味します。企業にとっても、このような社会的責任の実践は、環境効率向上によるコストの削減、技術革新、企業イメージの向上を通じたブランド価値が向上するなど、さまざまなメリットがあると考えられています。

このような考え方は、近年になって新たに登場したのではありません。シンプルで日本人になじみ深い言葉に近江商人の「三方よし」があります。「三方」とは、「売り手、買い手、世間」。「売り手」の都合=利益だけを目的に商売をするのではなく、買い手が心の底から満足し、更に商売を通じて地域社会の発展や福利の拡大へ貢献が必要です。そして「企業の社会的責任」との言葉は、すでに1970年代に新聞紙上に登場しています。以降、時代によって企業の社会的責任が問われるポイントが変化しています。

1960年代 公害被害
1970年代 石油ショックおよび変動相場制への移行の企業による便乗値上げ、買い占め、売り惜しみによる狂乱物価
1980年代 住居の兎小屋、長時間労働、男女間の不平等処遇といった従業員処遇の改善
1990年代 証券会社の大口投資家への損失補填、建設業界の談合
2000年代 食品会社の食中毒、産地偽装、自動車メーカーのリコール隠し、原発のトラブル隠し、株主への虚偽報告

そして2010年代の今を考えます。昨年もホテルや百貨店での食品偽装が発覚しました。2000年代後半に発覚した問題では、食品業界の「常識」といわれていた「偽装」が大きな問題になりました。昨年の問題も、ほぼ同じ構図です。こういった事件から我々は、これまでの常識と企業の社会的責任をあわせ考えて、正しい対処を見極めなければなりません。「昔からやってきた」からといって、許されずに糾弾される可能性があるのです。この点は、CSR調達を考える上で、非常に重要なポイントですので、忘れずに押さえておきましょう。

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