連載18回目「購買はモノを買ってXXを売る」~ある業種の視点で調達・購買業務を活性化する その1

調達・購買の仕事はどの業種になるのでしょうか。ここで言う業種とは、製造業、建設業、商業、サービス業、公的業務等のことです。製品、部品や材料を自社の生産のために調達・購買する場合は、勤務会社はほとんどの場合は製造業です。

ちなみに、再販のために調達・購買(仕入れ)する場合は、商社であれば商業となります。これらの説明は会社の業種についてですが、これから述べるのは、勤務している会社の業種ではなく、会社組織の一部としての調達・購買部門の業種です。

人事、総務、経理等の間接部門の全部ないしは一部を外部の会社に委託する会社が増えているようです。この流れに対応して、これらの業務の委託を受ける会社も出てきています。調達・購買業務も外部委託を引き受ける会社があります。

これらの外部委託会社は、人事、総務、経理のサービスを顧客企業に提供するサービス業といえます。モノを販売しているのではなく、人事、総務、経理などの専門性のノウハウを提供するサービス業なのです。したがって、社内にあるこのような人事、総務、経理などの部門は、社内の他の部門にサービスを提供するサービス業部門と言っても良いでしょう。

調達・購買も、仕入れ品の品質、コスト、納期を改善・維持やそのほかの業務に関するスキル・サービスを提供するサービス業といえます。部品や材料というモノの流れには関与していますが、実際にモノを提供するのは、外部の調達・購買取引先で、調達・購買部門ではありません。

今回からサービス業の特性を生かした調達・購買業務の活性化について考えてみたいと思います。調達・購買の仕事をサービス業の視点から理解して、活性化の具体策を述べます。

サービス業についての基本を知るために、次の4つの面から述べたいと思います。
(1)サービス商品の特性
(2)サービス・マネジメントの全体像
(3)サービス品質
(4)サービス業での販売活動の主要な事項

今回は、このうち(1)サービス商品の特性について述べ、次回ではこの他の(2)から(4)迄を説明します。

(1) サービス商品の特性
サービス業が提供する商品であるサービスをモノと比較すると次のような特性があります。

 

商品の特性 モノ サービス
形の有無 形があり購入すればどこででも使える 形がなく、利用したい場合は生産している場所へ行くことが必要
変動性 機能や効用は一定であり、変動の小さい品質実現が容易 いつでも同一とは限らず、またいつでも同一と認識されるとは限らない
継続性 物理的実体があり、在庫をすることができる 提供の時点でのみ存在し、在庫は不可能
生産と消費のタイミング 生産のタイミングと消費のタイミングが異なる(必ず消費の前に生産が行われる) 対人サービスでは、生産と消費が同時に行われる。

 

次回は、「サービス・マネジメントの全体像」、「サービス品質」ならびに「サービス業での販売活動の主要な事項」について述べます。これらは、サービス業という面から調達・購買の仕事を活性化するためのヒントが溢れた事項です。

著者プロフィール

西河原勉(にしがはら・つとむ)

調達・購買と経営のコンサルタントで、製造業の経営計画策定支援、コスト削減支援、サービス業の経営計画策定支援、マーケティング展開支援、埼玉県中小企業診断協会正会員の中小企業診断士

総合電機メーカーと自動車部品メーカーで合計26年間、開発購買等さまざまな調達・購買業務を経験

・著作:調達・購買パワーアップ読本(同友館)、資材調達・購買機能の改革(経営ソフトリサーチ社の会員用経営情報)

あわせて読みたい