4-(4)-2 適切な荷姿を決定する「私の経験」
ほとんどの企業ではサプライヤーと基本契約書の中で「軒下渡し(指定納品先まではサプライヤーが責任を負う)」の項目を謳っているため、バイヤーが荷姿を気にすることはあまりないはずです。どんな形態で持ってきてくれたって、そこまでの品質を保証してくれるのであれば知ったことではない、と。
確かに、バイヤー企業の指定納品先までは、サプライヤーの管理費の中でやりくりする話ですからバイヤーが介入することでもありません。書籍によっては、輸送費を分解し、ガソリン代・荷積み費・荷下ろし費・包装費・・・など、それぞれを計算するやり方を披瀝しているものもあります。が、私はロジスティックの専門家ならともかく、現場のバイヤーに必要な知識とは思えません。
品質を確保した上で、あくまで生産効率を上げるためにどのような手段があるかを考え、トライすることは必要です。しかし、それはコスト低減の狙いどころとしてではなく、あくまでのネタの一つという程度で考えておいた方がよいでしょう。
バイヤーにとって必要なのは、下記の二点だと思ってください。
(1) 納入前に荷姿形態を把握し、それにより受入れ部門に支障が生じないか確認する
(2) できるだけ返却可能(リサイクル可能)な梱包材を使用するように、サプライヤーと受入れ部門と打ち合わせする。
(1)ですが、通常であれば管理費の範囲内でサプライヤーが最適と考える荷姿で納入されるだけです。しかし、場合によってはサプライヤーが納入してくる荷姿と、受入れ部門が考えていた荷姿との間にギャップが生じることがあります。基板実装部品を購入するときに、サプライヤーはバラ品で納入してきたが、受入れ部門はリール品でなければ受け取らない、とか。サプライヤーはビニール詰めである部品を納入してきたところ、受入れ部門は次工程のことを考えると作業性を向上させるために、一つ一つをパーティションで区切った箱で納入してほしい、とか。思い出すだけでもたくさんあります。サプライヤーからしてみれば追加作業が発生し、コストアップの要因にもなります。最後の最後でコストアップは許されないでしょう。全てを確認することはできませんが、高額製品や発注頻度の高い製品は納入荷姿を関係部門と確認しておきましょう。
(2)ですが、昨今の環境意識の高まりに対応したものです。一昔前の梱包材の廃却量はものすごいものでした。バイヤーは梱包材を購入するのではなく中身を購入するわけですから、必要以上に豪華な梱包は不要であり、必ずリサイクルができる(営業マンが持って帰り、再度使える)ような専用容器や袋を考慮してもらいましょう。豪華な梱包は必ず回りまわってサプライヤーからの見積りに転嫁されます。
納入荷姿は机上で計算しても最適解が分かるようなものではなく、いくつかの納入荷姿を試してみることによって模索してゆくことになります。ただ、品質を保持することが一番であるべきです。繰り返しになりますが、この領域はコスト低減の本命ではありません。深入りせず、効率的に決定することをお勧めします。