連載4回目「購買はモノを買ってXXを売る」~自然災害の多発で思うこと (調達・購買のリスクマネジメント)その1
このところ日本列島は大きな自然災害の連続です。西日本の豪雨による災害、また台風21号による雨と強風がもたらした各地のさまざまな災害、そして、北海道胆振東部地震による甚大な災害です。これらの災害で亡くなられた方々のご冥福をお祈りし、被災された皆様にお見舞いを申し上げるとともに、一日も早い復旧復興をお祈りします。
このような自然災害は、私の企業勤務時の災害対策の策定・展開の活動を思い起こさせました。それは、その後に取り組んだ調達・購買でのリスクマネジメントの策定に、活かすことができた経験でもありました。
調達・購買の活動にはさまざまなスキル・知識が必要ですが、別の見方をすれば調達・購買業務では、他部門での経験を有効に生かすことができる機会が沢山あるのです。今回から数回に渡り、私の災害対策での活動経験を述べた後、その活動で得たノウハウを基にした、調達・購買リスクマネジメントの具体的な例を述べたいと思います。
さて、10日ほど前になりますが、9月1日は防災の日でした。各地で訓練などが行われ、TVのニュースでも報道され、特別番組も組まれていました。ところで、何故9月1日が防災の日なのか、ご存知でしょうか。
9月1日が「防災の日」と定められたのは1960年(昭和35年)で、この年の6月11日の閣議で、9月1日を防災の日とすることが決まりました。9月1日が選ばれた理由は2つあります。
ひとつは、1923年(大正12年)に発生した関東大震災が、9月1日だったことです。関東大震災は、死者・行方不明者10万5000人余、住家全壊10万9000棟余、半壊10万2000棟余、焼失21万2000棟余と、甚大な被害をもたらしました。もうひとつの理由は、9月1日が暦の上では「二百十日」にあたり、台風の多い時季であることです。
この防災の日の由来となった地震と台風が、今年の防災の日以降一週間で日本を襲ったのです。日本列島に対して自然が嫌がらせでもしているかのようです。
さて、冒頭に述べた私の企業勤務時の災害対策の策定・展開の活動の件ですが、社内サービス部門を担当していた時の活動でした。この部門の業務の一つがリスクマネジメントの一環としての、災害対策でした。この災害対策のなかでも、大地震対策は、特に重要で緊急を要する事項でした。その当時は、東海大地震と首都圏直下型地震の発生が危惧されており、いつ起きてもおかしくないと言われてました。
報道機関でも特集が組まれ、多くの企業でその対策が策定され、企業間の情報交換や対策策定のセミナーも数多く開かれていました。私が勤務していた企業でも、対策の策定を始めました。責任者であった私は先進的な企業を訪問して教えを受けたり、種々のセミナーで基本的な考え方を学んだり、地震発生のメカニズムや日本各地の大地震発生確率に関する説明等にも出席したりしました。
それに基づき、様々な対策を講じることができました。具体的には、マニュアル策定、ポケットサイズの携帯カードの社員全員への配布、オフィス内の家具の転倒・落下・移動防止策、大地震発生時のためのオフィスでの宿泊用具・飲食料などの確保、などです。さらに、地方の事業所を含む社内での説明会や安否確認システムの導入と訓練などを実施しました。
また、大地震発生時の対策本部組織では本部長の役員を補佐する立場にあり、東海大地震や首都圏直下型地震はいつ起きてもおかしくないといわれていた中で、不安に満ちた日々だったことも想い出します。操業時間中に大地震が発生して多くの社員の身の安全が脅かされたり、不安で戸惑う帰宅困難の社員が溢れるオフィスの様子などが頭の中をよぎってしまうのでした。
一方で、平行して、不安を前向きにとらえリスクマネジメントの長期セミナーにも参加して、地震対策をリスクマネジメントという広い観点から考えるようにもしました。不安のなかで進めた大地震対策策定と社内展開の経験とノウハウが、調達・購買業務でのリスクマネジメント構築に、大変役に立つことになるのでした。
次回の「自然災害の多発で思うこと (調達・購買のリスクマネジメント)その2」からは、調達・購買のリスクマネジメントの具体例を述べたいと思います。
著者プロフィール
西河原勉(にしがはら・つとむ)
調達・購買と経営のコンサルタントで、製造業の経営計画策定支援、コスト削減支援、サービス業の経営計画策定支援、マーケティング展開支援、埼玉県中小企業診断協会正会員の中小企業診断士
総合電機メーカーと自動車部品メーカーで合計26年間、開発購買等さまざまな調達・購買業務を経験
・著作:調達・購買パワーアップ読本(同友館)、資材調達・購買機能の改革(経営ソフトリサーチ社の会員用経営情報)