3-(4)-2 共同調達「私の経験」
「何だ!このコストは!」
私はその当時接していた営業マンに失望しかけたことがあります。
それはかつて私が勤めていた企業が他社と共同調達を開始したときでした。
まずは、両社でどれほど共通の部品を購入しているかを調査することになりました。私が当時担当していたのはチップの電子部品でした。
品目をざっと見ていたとき、多くの共通調達品が目に留まりました。共同調達をするくらいですから、共通部品が多いのは当然でした。
ただ、私の担当部品は、いつも営業マンと話していて「これ以上絶対に安くならない底値」だと常々聞かされていたものばかりでした。だから、私は当初は共同調達で本当にメリットが出せるか懐疑的でした。
しかし、結果的には大きく裏切られることになります。
共同調達しようとしていた他社は、なんとその三分の一ほどの価格で購入していました。私が購入していた金額が高かったかというよりも、他社の購入金額が安かったのですが、「日ごろの営業マンの言葉は一体何だったんだろう」と非常に落胆したことを覚えています。
共同調達を開始した後は、当然ですが他社並みの安いコストに合わせることになりました。共同調達の効果は三分の二のコスト低減、というわけです。また、同時に、私の方が遥かに安く購入できていた部品もありました。
本来は、他社間の契約は自由に行われるもので、共同調達を実施しようとしているパートナーといえども自社の購入価格をダイレクトに伝えるのには問題があります。それでも、なんらかの形でパートナーの購入レベルは分かるはずです。
加えて、同じ製品に対するアプローチの仕方も異なり、大変勉強になることがありました。ヒートシンクの価格を査定する際、私(というよりも私の企業)は製品仕様から複雑に計算し理論コストを割り出す方法をとっていたのですが、他社はなんと製品重量に係数を掛けるだけでコストを算出していました(!)。
しかも、そちらの方が実勢価格に近いのです。それに、誰でも計算しやすい。
自分のコストアプローチの方法論についても考えさせられる経験でした。