6-(3)-2 サプライヤーへの通知・発注手続き「私の経験」

「もう、お金を払ってもらわないと困りますよ」

営業マンからこう言われて、こちらが困ってしまったことがたくさんあります。

RFxの過程で、営業マンがしつこく「ウチの価格どうですか?」と訊いてくるので私は常に「いいんじゃないですか?」と答えていました。結果が出たら連絡すると言っているのに、「どうですか?」などと探りを入れることはどこかアンフェアな雰囲気を感じます。それはつまり「他社と比べて高ければ、安くします」と言っているわけで、そんなことであれば最初から安い見積りを提示して欲しい。ベストの見積りを提示しているのであれば、他社の動向を気にすることすらないはずです。

それで、結局発注お断りの書面を受け取ってしまうと、「なんですか、これは」と怒りだしてしまう。そんなサプライヤーが何社もありました。「お分かりの通り、お断りの書面です」と申し上げても、「以前お聞きしたときは『いいんじゃないですか』と言われたでしょう!もう、設計も進んでいて、お金を払ってもらわないと困りますよ」と、さも自分たちが受注するのが当然だという風に騒ぎ出します。

こういう人には、「それは受注前活動ですね」と言って常識を教え込むほかありません。口頭での対話だけで見切り発車して社内を動かすような営業マンに付き合う必要性があるのか判断に迷います。

しかし、重要なのは「明確に通知するまでは発注先決定ではないこと」「発注先が決定したら速やかに書面を通知すること」をサプライヤーに認識させることです。「こちらも各プロセスを明確するから、そちらも曖昧なまま自分たちが受注したかのように勘違いするな」と伝えましょう。曖昧さは常に誤解を生みやすくします。

発注先決定の書面を注文書に代えることが見受けられます。これは特に問題ありません。しかし、発注先サプライヤー決定から実際の発注までに時間がかかってしまうような種類のものであれば提示してあげるべきでしょう。フォーマットに特に決まりはありませんが、単なる受注前活動か、正式に受注したのかではサプライヤーの姿勢もおのずと異なってきます。

もちろん、将来に大幅な変動が見込まれ、下手に書類を提示すると自社に不利になることも考えられます。例えば、発注先としてA社に決定しようとしているが、今後仕様変更が見込まれ、その仕様であればB社の方が安価になる可能性が高い、など。そのときは「発注先決定通知を遅らせた方がよい」という判断もあるでしょう。それは、バイヤーの臨機応変な判断に拠ります。

ただし、そのような場合を除けば、基本は明確化することであり、書類を提示することを忘れてはいけません。「あの競合結果って結局どうなったんでしょう?」とサプライヤーに訊かれている場面をよく見ます。確かに「断る」という行為は気持ちの良いものではありませんが、書面できちんとお断りをし、どこが弱かったのかを教えることはサプライヤーの将来の改善につながることは忘れない方がよいでしょう。

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