8-7 物流クライシス対処法:サプライヤーとの連携で効率的な納入を実現

★文章のポイント
1.物流クライシスに対応するためには、サプライヤーの納入方法を理解し、見直すことが重要である。
2.実際に必要な納入タイミングを設定し、物流費の増加を抑える。
3.サプライヤーとの協力により、納入頻度を減少させ、効率を上げる。

人手不足による大手宅配会社の貨物引き取り量制限に端を発し、従来の物流システムを見直す動きが広がっている。同時に物流の2024年問題(物流業への時間外労働時間の上限適用)の影響もあり、自社とサプライヤの生産効率を損なうことなく、在庫量を最小限に抑えるための納入条件の改善をサプライヤーと協力して進める必要がある。

●サプライヤーの納入方法を理解しよう
全サプライヤーに共通して適用する納入条件は、バイヤーの日常業務ではごく当たり前となっており、特別な理由がない限り見直す機会も少ない。その結果、納入条件やその背後にある物流事情について、バイヤーの関心が低くなっている。価格的にも自社まで、あるいは目的地までの輸送費を含んでいる価格で発注が一般的であり、日本企業の調達・購買部門では、発注価格に含んでいるがゆえに物流費に無関心になってしまうのである。

人手不足の影響は物流会社のみならず全産業に波及している。Just In Time方式で生産ラインの稼働に合わせて時間指定し、1日複数回の納入は物流網に大きな負担をかけている。コンビニエンスストアに代表される多頻度配送システムは、人力に頼っている限り、人手不足による見直しを余儀なくされている。

物流環境の変化に対応するためには、まず発注内容に呼応するサプライヤーの納入方法を確認する必要がある。自社便なのか、配送を物流会社に委託しているのか、納入頻度はどの程度なのかなど、取引条件に則った納入が実際どのように行われているのかを把握することが重要である。

●本当に必要な納入タイミングの設定に取り組もう
多くの企業で、Just In Time方式の時間までの指定納入でなくても、毎日納入をサプライヤーとの取引条件としている。生産に応じて納入日を指定し、在庫量の最小化を図るためである。しかし多くの企業では、生産ラインの脇に納入品置き場を設け、実質的に数日分の購入品を在庫しているのが現状である。

在庫ゼロを目指し、サプライヤーに「納入日指定」「毎日納入」で実践を求める一方で、実際には自社の生産管理の甘さや自社製品の納入の遅れを避けるために実質的に在庫を保有することが多い。しかし、物流クライシスの影響を最小限にし、円滑な生産を実現するためには、本当に必要なタイミングにだけ納入を指示するルールと仕組みが必要である。

多頻度の納入は、今後人手不足の影響が拡大し、物流費の上昇をもたらし、購入価格に反映されるだろう。既に多くの調達・購買部門では、物流費のアップによりサプライヤーから値上げ要請を受ける事例が増えている。サプライヤーと物流費の交渉を行い、値上げの影響を回避する取り組みが必要である。

自社に必要な納入頻度を見極め、従来よりも納入回数を減少させ、物流効率を上げることで、自社とサプライヤー双方にメリットをもたらし、値上げの影響を最小限に抑えることができる。例えば、週5回の稼働日すべてに納入させるのではなく、週3回、週2回へ納入頻度削減を検討することが有効である。

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