8-6 積極的な在庫活用方法:在庫を資産として活用し、リスクを減らす考え方

★文章のポイント
1.在庫を持つことのメリットを理解し、適切に活用することが重要である。
2.在庫の管理は納期短縮や災害発生時のリスク軽減に役立つ。
3.実際のサプライチェーン全体を考慮した在庫管理が求められる。

IT技術の発展により、在庫を持たないことのメリットばかりが強調されがちである。しかし、あえてIT技術の進化を活用して在庫の持つメリットに目を向け、その可能性を探ることが重要である。

●在庫ゼロは本当にメリットか
必要な量だけを必要な時期に購入することは、確かに企業の在庫を減少させる。しかし、それにはデメリットも存在する。在庫ゼロ化は大手企業のように産業構造の上位に位置する企業でのみ実現しているのが現状である。サプライチェーン全体では、流通段階やサプライヤーレベルで完成品、半完成品、原材料の在庫が存在する。調達・購買部門は自社に納入されるまでのサプライチェーン全体を考慮した在庫量を把握した全体最適を追及するべきである。購買力に依存した自社だけ在庫ゼロを目指すのではなく、実態を踏まえたサプライチェーン全体で在庫を分散し、リスクマネジメントにも在庫の適正活用を選択肢に加えることが必要である。そのためには、自社に在庫がゼロである状態がなぜ実現できているのかを把握すべきである。

●在庫を納期短縮へ活用する
実際のリードタイムと顧客の納期短縮ニーズとの間にはギャップが存在する。どんなに納期短縮活動を行っても、そのギャップを完全に埋めることは難しい。サプライチェーンのどこかに在庫が存在し、納期的ニーズと実態のギャップを埋める役割を果たしているのである。在庫ゼロを掲げ、実際に存在する在庫を無視するよりも、その存在を顕在化させ、適切に管理し活用することが重要である。在庫は納期短縮に積極的に活用し、自社の競争優位性を高める源とするべきである。

●在庫を災害発生リスクに活用する
2011年の震災では、サプライチェーンが寸断され、その影響は世界中に及んだ。しかし、適切な在庫管理を行っていた企業は、震災後の生産再開を早期に実現している。自然災害発生リスクに備え、在庫をどのように活用するかを検討することが重要である。適切に在庫管理を行うことにより、災害発生後も早期に生産を再開することが可能となる。生産場所の分散を声高に叫ぶよりも、倉庫の耐震・耐火性を考慮し、サプライヤーに厳格な在庫管理を申し入れることが求められる。

具体的な事例として、ある企業は震災後の供給停止を想定し、あらかじめ一定量の在庫を確保していたため、迅速に生産を再開し顧客への影響を最小限に抑えることができた。こうした取り組みが、災害発生時のリスク軽減に大いに役立つのである。

未来調達研究所株式会社が提供する【挑戦喚起】無料ブックレットは次のURLから
https://www.future-procurement.com/booklet/

あわせて読みたい