還暦を迎えた女性に圧倒されました(牧野直哉)
先日松田聖子のコンサートに行ってきました。10代の頃から彼女のコンサートに足び、初めてのコンサートから今年で40年経ちました。今回のパフォーマンスは、間違いなく史上最高。素晴らしい内容、圧巻のステージでした。
コンサート時間は約2時間半。ほぼ40年前のステージと同じです。若い頃に比べたら体力は落ちているだろうに、体力維持に取り組むと同時に衰えをカバーする演出が相まって、素晴らしいステージが完成していました。
私の業務の一つにセミナーがあります。まだ始めたばかりの頃、セミナー会社から「講師が座って話をすると、受講生の満足度が下がる」とアドバイスを受けました。以来セミナー中は座らずに話をしようと心に決めています。まだ立って話をすることに不安はありません。年齢を重ねセミナー内容に厚みが生まれても、座って話をするだけで受講生からの評価が落ちる現実。やっぱりビジネスパーソンには、経験やスキルより前に、健康と体力の重要性を実感しました。
続いて彼女のコンサートの名物!リクエストコーナーでのお話。ワンフレーズだけ歌った曲数まで含め数えると全62曲!時間の許す限り全てのリクエストに応えようとしていました。アコースティックコーナーと呼ばれる楽器奏者をステージ中央に集めて歌うときは、いったん終えたにもかかわらず大きな拍手に応えて戻った回数が3回。スーパースターなのに、観客のニーズにすべて応じる姿勢が、ファンとしてうれしかったし、アーティストとして顧客ファーストを垣間見る瞬間でした。
またセミナーのお話。私はセミナーテキストに自分が普段使っているメールアドレスを記載しています。セミナー中も、休憩の前に意識的に質問の有無を確認しています。セミナーがリアル開催からWeb開催へ移行して、質問確認する機会を増やしています。
すごく正直に言えば、できれば質問はなければいいなと思っています。どのような質問が飛んでくるのか、いつもハラハラしています。講師として回答できない質問が来たらどうしよう?と不安でいっぱい、怖いのです。
でも、わからないのは質問者も一緒ですよね。明確な答えを出せるような普段の取り組みを続けると同時に、質問者と一緒に考える、寄り添って、質問に耳を傾け答える姿勢が重要だと感じました。
今回の演奏曲で1曲だけ、他人の曲を黒のドレスで歌いました。昨年末に彼女を襲った不幸な出来事。神田沙也加さんの曲でした。歌い終わって「沙也加は天国に旅立ちました」と、言葉を選びながら心境を語っていました。
プライベートかつ不幸な出来事、できれば口にしたくなかったはずです。パフォーマンスには関係無いけれども、ファンには気になる。そういった心理に応え自分の言葉で逃げずに話をする姿は、数あるコンサートで初めて涙を流して見る場面でした。真摯な姿勢に圧倒されました。
調達・購買の世界は、日々動いています。昨日までの正解が今日は間違いになる可能性がある世界です。例えば最近で言えば、地球温暖化対策としての脱炭素や、サプライヤ従業員の人権デューデリジェンスといったテーマは、調達・購買のセオリーとしてはまだ扱わなくていいテーマとも言えます。今はコストダウンや納期短縮、値上げ対策が大事だと。でも脱炭素や人権デューデリジェンスは、これから確実に調達・購買の中心的テーマになります。まだ雲をつかむようなあやふやな部分もあります。だからこそ逃げずに積極的につかみにいくぞ!と決心を新たにしました。
「人生100年時代」とはいえ60歳還暦ともなれば、第二の人生的に語られます。松田聖子は何度も「来年のコンサートでは」と話をしていました。新たなアイデアを駆使して、まだまだ走り続けるのでしょう。私も老練さではなく、今日的・最新を売りにしてこの仕事を続けると心に誓いました。