私は口先だけのコンサルタントになりたい(坂口孝則)

「コンサルタントって、口先だけの、良い仕事ですね」といわれます。面と向かっていわれたこともあります。よく人々は「オバケが恐い」「震災が恐い」などといいます。けれど、私にとっては普通のひとが突然、失礼なことをいってきたり、手のひらを返したりすることのほうが、よっぽど恐いと感じます。

私は、テレビやラジオに出て、雑誌などに寄稿しています(ちなみに数日後の「はなまるマーケット」に出演します)。これまで、「死ね」とだけ書いたメールを何通かもらいました。「恥を知れ」も何通かありました。「俺の仕事の邪魔するな」も数件、「生意気なこというな」も数件です。「恥を知れ」と書いてくるひとが、匿名でメールを出してくる恥は知らないようで、それは微笑ましいのですが、たまにちゃんと記名して罵詈雑言を書いてくるので手におえません。

それで、調達コンサルタントになってからは、「コンサルタントは口先だけでいいよな、くそやろう」というメールも数通ちょうだいしました。また、直接的でないにせよ、twitterなどでも、同様の反応を見ました。おなじく「コンサルタントは虚業だ」という反応もありました。私はこのテの反応はありがたく拝見しますけれど、あまりにオリジナリティのないご意見なので、とくに返信はいたしません。あえて申せば、「そこまで私に興味を持つということは、私のことが好きなのですね」くらいでしょうか。
ところで、もしかすると、コンサルタントとしてストレートな再反論をすべきかもしれません。たとえば、「ほんとうに虚業だったら、お客がいなくなって、廃業するだろう。したがって、コンサルタントが存続している以上は、お客から求められているのだ」とかね。でも、私は、あまりストレートな再反論を望みません。

それよりも、「コンサルタントは口先だけでいいよな、くそやろう」といわれるものの、自分自身が「口先だけのコンサルタントになりたい」と思いながら、そうなっていないのです。

これは、皮肉ではなく、「口先だけでお客の業績を向上できるコンサルタント」は凄いと思います。私も、ぜひそうなってみたい。だって、語るだけで、お客が納得して、お客の業績があがるのですよ。これ以上の凄い能力はない。あるいは、「口先だけでお客のコスト削減を推進できるコンサルタント」とかね。こういうひとがいたら、ほんとうに凄い。どうやったらなれるのでしょうか。だから、もしかすると、「コンサルタントは口先だけでいいよな、くそやろう」への再反論としては、「私もそうなりたいと日々精進しておりますので、ご支援くださいませ」となるのでしょうか。

たとえば、某社での事例を話します。私はサプライヤマネジメントのコンサルティングをやっておりました。主要サプライヤの決算書を3年分あつめ(これだけでも膨大な数になります)、それをエクセルに転記し、コスト分析をやって利益分析をやって、相関分析にCVPをやって、しかもそれぞれのサプライヤごとにまとめ表をつくって、パワーポイントにおとして……と、めちゃくちゃ膨大な作業をやるわけです。

しかも、そのデータから何をいえるのか考えます。考え続けます。「メッセージは間違ってはいけないが、つまらなくてもいけない」のです。だから、お客に何がいえるのかを徹底的に考えます。冗談ではなく一日に18時間くらい考えても、まだダメです。それでメッセージを考えたあとでも、「これでよかったんだろうか」と悩み続けます。私は関連の本をすべて書いますので、一つのトピックについて50冊くらい学びます……。そうやっているので、もし「口先だけのコンサルタント」なるひとがいるのであれば、その奥義を知りたい。

お客はプロセスではなく、いかに付加価値を高めるか。その結果を知りたがっているのです。口先だけでも、即時にそれがわかるにこしたことはありません。どなたか、その「口先だけのコンサルタント」って誰なのか教えてくれませんか。私は、しばらくデータと事実をもとに、じっくりと結論を出していく「現場型」のコンサルティングを続ける覚悟でいます。不器用なので、現実を見つめるくらいしかできないのです、私は。

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