【必読】私が書く内容に怒る人もいるでしょう(坂口孝則)

書くのをためらっています。ファーウェイと10年前の東日本大震災のことです。私は米国と中国のどちらにも肩入れしていませんので、政治的な思想を抜きにお読みください。

それは、ファーウェイのCFO孟晩舟さんのことです。報道で知られる通り、彼女は2018年に対イラン経済制裁に違反したとして、米国当局の要請を受け、乗り継ぎ途中のカナダで逮捕されました。GPSで場所を監視され、軟禁状態にあり、現在でも法廷闘争を続けています。

それ、東日本大震災と関係あるか、と思った方もいるでしょう。日本企業の調達リスクマネジメントに見直しを迫った東日本大震災と、ファーウェイを結びつけたかった理由があります。

あまり知られていませんが、孟晩舟さんは東日本大震災の直後、真っ先に日本に飛び、被災した通信基地局の復旧にあたりました。被曝の可能性があったにもかかわらず、ファーウェイの技術者たちは防護服に身をまといながら必死に復旧作業に尽力してくれました。それは表現できないほどの困難がつきまとったようです。彼女は、その復旧作業の陣頭指揮を執りました。

2018年、孟晩舟さん逮捕の直後、彼女の弁護団は一通の手紙を受け取っています。それは日本人の不動産業者の男性からでした。そこには東日本大震災時に危険を顧みずに復旧をしてくれたことの感謝が綴られていました。彼女がその手紙を読めるようになるのは後日だったようですが、彼女は読んだ瞬間に涙が溢れてとまらなかったと記しています。号泣してしまった、と。

もちろん復旧にあたったのはファーウェイだけではありません。この手紙を懐疑的に報じている日本メディアも知っています。真偽はわかりません。また、手紙と逮捕は別物であり、彼女を批判的に論じた記事も読みました。

そのうえで、怒られるかもしれませんが、私は物事を単純に善悪に分類する危険さを感じます。実際の社会は、ウルトラマンとバルタン星人が闘っているわけではありません。善悪の境界線は微妙です。誰にも正しい面と、そうではない面が共生しています。

これが、私がファーウェイの報道を聞くたびに思い出すエピソードです。

突然、調達業務の話に移します。

私は現場の声を聞くようにしていますが、「こいつは、こういう奴だ」とか「この企業はダメだ」とか「この手法では上手くいくはずがない」といった発言を聞くたびに、ある種の危うさを感じてしまいます。もちろん、物事は良し悪しの評価をしないと行動できません。ただ、同時に、自分の思い込みが真実じゃないかもしれないと疑う余裕ももっていただきたいと思います。自分の知らない事実が明らかになったら、印象が変わるのではないか、と。

仕事とは、限られた時間で情報を収集し、そこから意思決定をする営みです。と同時に、自らの決定をも疑いつつ、次回にはより高みに上がろうとする姿勢が重要なのではないでしょうか。

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