調達購買改革は会議改革からはじまる(坂口孝則)
会議のたびに怒りたくなることがあります。それは、意地悪なひとたちの存在です。会議がまとまりそうになったら、いきなり口を開いて、意見を言い出します。それまでに誰も気づかなかった観点なものですから、発言者はしたり顔です。それで会議はフリダシに戻ってしまいます。このテのひとは、私の考えでは、凄そうに見えて害虫であるケースがほとんどです。なぜならば、「会議は議長が決めるのではなく、一人ひとりが決めるのだ」と当然の気持ちを持っていないからです。
会議は参加者と主催者がいるのではありません。全員が決定事項を導く場です。その気持を共有しておらず、「お客様」に徹する参加者などほとんど存在意義がありません。ところで、私がこれまで会議に参加してきて、有効だった施策を三つほどお話します。「調達購買改革は会議改革からはじまる」とは大袈裟かもしれません。でも、社内外との折衝機会の多い調達・購買部員ですから、会議効率化の手法を知っておく価値はあるでしょう。
一つ目は、さきほど書いたとおり、全員に主体的に参加してもらうことです。会議の冒頭で、こういうと有効です。「私たちが決めるのであって、一人ひとりに責任があると思って発言してください。会議の最後になって、ひっくり返す発言をして、何も決まらないのはそのひとの責任です。だから会議中には積極的、建設的に発言してください」と。これでだいぶ変わります。
二つ目は、会議終了時間をつねにホワイトボードに書くことです。10分おきでかまいません。60分の会議であれば、「残り60分」からスタートして「残り50分」、「残り40分」……としていくわけです。会議はどうしても前半部分に時間を使いすぎ、後半はまとまりなくなりがちです。それを残り時間カウントによって切迫感を醸成するわけです。これまた、残り時間が「見える化」するだけで、だいぶ会議が変わります。
三つ目は、会議室にできればホワイトボードを二つ用意します。そして、サブのホワイトボードに「PA」と書いておくのです。これは「パーキングエリア」の略で、脱線した意見を書いておきます。脱線した意見をイチイチ議論しては時間が足りません。しかし、脱線した意見を無視するわけにもいきません。無視されると参加者がイヤになりますからね。
なので、脱線した意見だと議長が判断すれば、それは漏らさず、PAエリアに書くのです。そうして、最後のまとめ時の際に、PAをまとめて議論します。そのときには、PA内容は解決している場合も多いですし、なによりも発言者がどうでもよくなっています(笑)。いや、「(笑)」とは書きましたが、これは立派な会議効率術だと私は思います。それが、ホワイトボードを一つ余計に用意するだけで実現します。
思うに、会議術は、日本人やアジア人よりも、さまざまな人種がるつぼとなっているアメリカで発展しているようです。古くて新しいテーマである「会議術」。私は多くの理由から、会議完全反対派ではありません。少ないにこしたことはないものの、会議はまだ存在するだろう、という立場です。ただ、どうせ存在するにしても、効率的にやるべきですよね。
ちょっと工夫で、これまでの業務が劇的に進化した……という経験はみなさんにあるはずです。それならば、その工夫をできるだけ摂取するに越したことはありません。知るものと知らざるものの差は大きくなるばかりです。