調達業務において人脈は捨てるべきです(坂口孝則)
まず私が言いたいのは「人脈は誰のものでもない」ってことなんですね。調達とか購買の仕事をずっとやっていると、ときに嫌な人に出会うことがあるんですよ。自分が接している設計者とか、サプライヤと、べったり人間関係を構築するんです。そして、その関係に誰も入れないようにブロックするんです。それ自体が悪いわけではありません。ただ、外部の人を寄せつけないようにするので、さまざまな問題が生じます。
例えば設計者と打ち合わせをしているときに、さも自分だけがわかっているように演出する。「俺はこの人がいっていることはわかるけれど、お前はわかんないだろう」と態度をとるのですね。すごくみっともない、と私は思います。というのも、人脈とは結局のところ、その会社で働いているから築き上げられたにすぎないからです。
もちろんその会社のなかで頑張っているかもしれないけれど、繰り返すと、その会社のなかでこそ得られた人脈です。その人脈を自分一人で抱え込んでおくのは、やはりバカらしい行為だと私は思います。本当にくだらないですよね。ちょっと話は違うかもわかりませんが、私のことを話します。私は講演の仕事をやっています。あるいは、専門教育の仕事をやっています。セミナーに私を呼んでくれるひとたちは「セミナープロデューサー」です。そのつながりは、まさに人脈のかたまりです。
講師希望者のひとはたくさんいますが、そのセミナープロデューサーを知っている希望者はなかなかいません。いかにセミナープロデューサーに声をかけてもらうかが、講師として登壇するための最も重要な要素なわけですね。多くの講師はやっと築いた人脈、すなわちセミナープロデューサーの方々を、他の講師希望者になかなか紹介しようとしません。でも私はたくさん紹介します。なぜならば、冒頭で言った通り、人脈は誰のものでもないからです。
人脈を公開するときは勇気がいります。でも手放したほうが、絶対に中長期的には自分のためになるのです。なぜならば、人脈を紹介されたひとは、必ず私に恩返しをしようとしてくれるんです。もちろん、なかには紹介を受けただけで何の恩義を感じてくれない人もいます。でも、その人はそれで終わりです。
人脈は悪用されるかもしれません。ただし、ほとんどのひとは、悪用するどころか、違うどこかで見つけた人脈を逆に私に紹介してくれるのです。そうなると紹介すればするほど私の人脈が広がります。これが人脈を紹介するメリットです。
自分ひとりができることなんてたかが知れています。だから人脈を少し作ったらそれを出来る限り広める努力をしましょう。広める努力とは、すなわちその人脈を使ってくれそうな有望な人へ紹介することです。100人紹介して、100人の新たな人脈がもたらされるかはわかりません。100人紹介して、10人かもしれません。ただ、考えるに銀行貯金よりもはるかに効率の良い投資だとお分かりになるでしょう。
人脈は誰のものでもないのです。