調達部員を機械化したら何円か(坂口孝則)

私のお気に入りの言葉に「重さのある世界」「重さのない世界」があります。これは企業の商品によって、企業の特徴を二つにわけたものです。「重さのある世界」はいわゆる製造業とか建設業とか。いっぽうで、「重さのない世界」とはサービスとかITなどを指します。トヨタ自動車は前者ですが、グーグルやアマゾンは後者となります。

現在は後者の陣営が、前者を脅かしている、と見ることができるでしょう。IT企業が自動車をつくったり、スマートフォンをつくったり。「重さのない世界」で稼いだ利益で、「重さのある世界」に突き進んでいるのです。アップルなんかは、一見「重さのある世界」(iPhoneやMACなど)で勝負しているように見えて、「重さのない世界」(音楽配信やアプリ)に強みを発揮しているので凄いですね。

私が思うに、日本企業の方針は、逆に「重さのある世界」のノウハウをもとに、「重さのない世界」に挑んでいくことだと考えています。たとえば、ゼネラル・エレクトリックは飛行機モーターを製造するだけではなく、客先の燃費データを蓄積してノウハウ化しています。それによって、どのような飛行ルートや操縦であれば燃費が良いのかをコンサルティングしています。これは、「重さのある世界」のノウハウを、「重さのない世界」に活用した好例ではないでしょうか。

みなさんは「バクスター」をご存知でしょうか。お掃除ロボットのルンバをつくった技術者たちが生み出したものです。これはもう見ていただいたほうが早いので、動画サイトで「baxter robot」と検索してみてください。凄いんですよね。ロボットに一回、動作をさせるんですね。ロボットの手を取って「こうやるんだよ」と教えるだけです。そしたら、すぐさま覚えてくれます。驚愕です。

もちろん、いまはまだまだです。現在では、さほど複雑な仕事はできません。でも、そのうち、機械的な処理であればすぐさま人間を代替できるのではないでしょうか。調達担当者が無意識のうちに、頭を使わずにこなしている仕事の大半はできるようになるでしょう。数年前までネットで英語を翻訳すると、あまりにもひどい日本語がでてきました。私は「これは実用化は無理だな」と考えていましたが、いまでは、おそろしく精度をあげています。ロボットもおなじでしょう。

「調達部員を機械化したら何円か」と物騒なタイトルをつけました。「バクスター」であれば、4~5万ドルくらいのようです。つまり給料1年分で回収できてしまうレベルです。私は繰り返し申しているのですが、生身の人間は、もう業務効率化とかそういったレベルでない地点を目指さなければなりません。単純な処理はもうロボットとAIがやってくれますから、ロボットやAIに与えるデータを収集せねばならない、というのが私の考えです。そして、そもそもロボットやAIに何を処理させるかを考えるのが、これからの調達・購買担当者の仕事でしょう。

私はこのところいろいろな企業に提案しているのが「調達・購買部門の一部を、調達コンサルティング会社にしたらどうでしょうか」というものです。日本企業ほどサプライヤと付き合っているひとたちはいませんから、そのノウハウを外部にコンサルティングするのです。冗談ではなく、コンサルティングにつながると思えば、いまの仕事を徹底的に考えるのではないかと思います。調達・購買業務に従業する私たちはみな、潜在的なコンサルタントなのです。

多くは、ジョークと考えられています。残念。自分の身代わりが4~5万ドルくらいで登場する時代を前に、新たな付加価値を探すべきときにきています。いや、真剣に。

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