セミナー受講者からの恐るべき質問(坂口孝則)

このところ、ずっと企業やセミナー会社に呼ばれて講義をしています。講義の際に出る質問で、驚愕するものがあります。その一番は、「この知識はウチで役立つのでしょうか」というものです。真摯にお答えしようとすれば、「それはコンサルティング契約を結び、御社の業務を徹底的に分析しなければ、正確なことはいえません」だと思います。あるいは「役立つこともあれば、役に立たないこともあるでしょう」としかいえません。曖昧な質問は、申し訳ないのですが、曖昧にしか回答できないのです。

ただ、やはり優れたひとはたくさんいます。まったく仕事内容が異なるのに、私の講義を聞いて「めちゃくちゃヒントが詰まっていた」とおっしゃるのです。逆に「あまり興味のない内容だった」といわれるケースもあります。私は生まれてから「これは興味ないから聞きたくない」と思ったことがなく、何でも知識を吸収したくてたまりません。だから、自分と遠い内容のように見えても、そこからヒントを得ようとします。だから「実務とは違ったけれど、応用してみたくなる知識がたくさんあって嬉しかった」といわれると、私こそ嬉しくなります。

誤解いただきたくないのですが、驚愕するような質問をするひとは全体の1%もいません。おそらく私の講義は、運良くきわめて低い率だと思います。講師仲間と話しても、私は抜群に恵まれています。恵まれすぎているほどです。

他の講師は、想像以上にクレームを受けています。アンケートでボロクソに書かれたりだとか、あるいは事務局に「あの講師を二度と呼ぶな」といわれたりするケースもあるようです。その苦情の数は、私の10倍ほどです。なぜ私は少ないのだろうか……。ここで、最近、気づいたことがあります。

それは、ある米国のコンサルタントがいっていたことです。それは「受講者は講師に似る」。あるいは「講師に似たひとが受講者になる」のです。なぜかわかりません。ただ私は事実のように感じます。ということは、真摯で勉強熱心な講師には、真摯で勉強熱心な受講者が集まるということです。そして、勉強熱心な研修企画者から声をかけてもらえるということです。逆に中途半端で、熱意のない(金さえ稼げばいいと思っている)講師には、そのレベルの受講者が集まるということです。

あまり大声ではいえませんが、講師仲間をこの観点から眺めてみると、おおむねあっている気がします。しかし、それにしても、これは厳しい課題です。というのは、熱意のある勉強熱心な受講者を集めようと思ったら、休むことなく自分自身が勉強を続けねばならないのです。しかも、徹底的な熱意を持って。もちろんこれはやりがいがあることではあります。

たとえば、いま社内研修の外部講師を選ぼうとしている方がいらっしゃるかもしれません(これは調達・購買だけのことではなく、一般的な話です)。講師を「選ぶ」ことになります。そのときには、集まってほしい受講生と講師が似ているかをチェックしてみてはいかがでしょうか。

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