調達担当者が知らなければソンをする一つの事実(坂口孝則)

つくづく、ひとは能力ではなく「選んだ業界」によって人生が決まるのだと強く思います。IQや能力、スキルが同等で、かつおなじ東大卒であっても、テレビ業界に就職するかサービス業に就職するかによって年収は異なります。差別ではなく、これは事実なのですよね。たとえば、これは小さな業界でも当てはまります。私は、仕事のうち何割かをセミナー講師業にあてています。運良く、調達・購買領域の講師はほとんどいないので、集合研修や講演など、私にまわってくるケースはかなり多いと思います。

しかし、私が営業分野の講師をやっていたら、そうはならないでしょう。私の知り合いにも、4名ほど、営業を主戦場にしている講師はいますけれども、仕事がバンバン集中するレベルではない(と失礼ながら)思うのですよね。でも、最近でいうと、「マイナンバー研修」などは、どんな講師でも満員が普通です。講師そのものよりも、テーマ、もっといえば「選んだジャンル」によって勝負が決まっているのです。

私がコンサルタントの真似事をはじめたとき、「コンサルタントはうさんくさい」とよくいわれました。そして、いまでもいわれています。おそらく、生き残るひとはさほど多くないものの、参入障壁が低いのだと思います。ある方からは、「コンサルタントになれる条件は、度胸と勘違いだ」といわれました。自分ごときが他人様に指導できる勘違いがなければ、コンサルタントにはなれませんよ、と。

私は笑いました。

しかし、同時に私は、「でもそんな勘違いができなければならないとしたら、まだ参入障壁は高いですね」といいました。そのひとは爆笑していました。「たしかに、そうだな」と。とはいえ、この一連の会話は、かなり示唆に富んでいると思うのですよね。

ぜひ、とても重要なことなので聞いてください。可能でしたら、お若い方、あるいは、定年後にコンサルとか中小企業診断士で独立しようとする方は、印刷しても良いのではないかと思います。というのも、個人の人生で考えたときに、組織を飛び出す、あるいは組織を卒業して独立するとき、選びうる方針は次の四つです。

1.昔の技術や経験を使って、慣れた市場で挑戦する
2.昔の技術や経験を使って、新たな市場で挑戦する
3.新たな技術や経験を使って、慣れた市場で挑戦する
4.新たな技術や経験を使って、新たな市場で挑戦する

「昔の技術」とは、すなわち、これまでやってきた仕事と思ってください。そして、「慣れた市場」とは自分の経験業界です。「新たな技術」とは自分に実務経験のないことです。たとえば、仕事を辞めてから、行政書士の資格を取るとかね。

さて、このうち、成功する順番はどれでしょうか。偏見でいえば、2→1→3→4だと思います。いや、でも真実でしょう。たとえば、電機業界の調達・購買部門でずっとキャリアを積んだひとがいるとしますよね。そんなときに、電機業界の調達・購買部門に対してコンサルティングを、そのままやろうと思うと、競合他社がいるでしょう。でも、電機業界の経験を活かして、それを他業界に展開するのが差別化なのですよ。

でも最悪なのは、組織の卒業とともに、なんかの新しい資格を取得して、それで、さらに新市場に挑戦することですね。そりゃ、無理ですよね。だから、「選んだ業界」でほぼすべてが決まるのです。

少しでも参考になれば。

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