調達からはじめるビジネスモデル転換とは(坂口孝則)
ある会社は、代理店として成功しました。ここでは、何の代理店だったかはさほど問題ではありません。この会社は、たとえばボーナスをあえて札束で渡したりだとか、あるいはボーナスの袋詰を、わざともっとも査定が低い社員にやらせて、それをビデオ中継したりだとか、興味深い(?)施策をおこなっています。が、それも、ここでは問題ではありません。
私にとってさらに興味深いのは、この会社の発見です。この会社には「どうやってそんなに儲けているんだ」と会社見学者が多数お越しになったそうです。それで、「なるほど、なるほど」と見学者が学んで帰っていく。あまりに見学者が多く、やってられなかった同社は、ついに参加にお金をとります。それは公開セミナーの参加費くらいをとりはじめたのですね。
これはかなりの発想の転換だと思います。だってサプライヤの工場見学にいったとして、逆に費用を請求されたケースがあるでしょうか。でも、この会社はやったのです。そして、この会社は考えました。それなら、単に見学してもらうだけではなく、見学しにやってくる社長たちにノウハウを教えたらどうだろう。たとえば100万円とかで!
この取り組みは、なんとこの会社の新規事業になりました。つまり、実業の会社が、いつの間にか、ノウハウ販売の会社になったのです!
100万円で社長たちにノウハウを売ったあとに、講義をDVDにして販売しはじめました。すると、元の代理店業もさらにうまくいきました。そこで得たノウハウをさらにコンサルティングして売上を拡大していきました。つまり、こういうことです。それまで同社は、「代理店販売」と自社を定義付けていたのですね。それを、「代理店販売」ならびに「情報販売業」と定義を加えたことで、さらに成功企業になりました。
この会社は武蔵野というところで、かなり面白いので参考になるでしょう。そして、ここに新規ビジネスの生まれるあざやかな瞬間を見るのです。いろいろやっているうちに、新規ビジネスニーズをとらえてしまった、その瞬間です。いまの世の中は、何が当たるかわかりません。ということは、行動の量こそが、もっとも大切になります。
調達が率先して、世界中のサプライヤを調べてみる。そして、「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる」理論で、とにかく社内に紹介してみる。社内の開発につながるアイディアがないかどうかを、とにかく量で勝負してみる。そのうちに、そのなかの一つでも二つでも、成果があがるかもしれません。もちろんあがらないかもしれません。ただ、紹介したりトライしたりするのに、リスクはゼロです。