行動をベースにした新・調達理論の到来(坂口孝則)

あなたは「因果から相関へ」という大きな流れを知っているでしょうか。覚えていてソンはしません。これまでビジネスの世界で重視されていたのは因果でした。つまり、「これこれ、こういう理由があるから、こういう結果になった」と考えるのが因果的です。たいして「どういう理由かはわかりませんが、とにかくこれとあれとが関係あります」と考えるのが相関的です。

ビジネスの世界では前者が肯定されてきました。当然ながら、論理的かつ理論的な説明がなければ誰も信じてくれなかったのです。しかし、莫大なデータを入手でき、分析できるようになってくると、「なぜかよくわからないが、こうしたら売上が上昇するようだ」とか「なぜか、こういう特性のひとは優秀のようだ」とわかってきたのです。これはビッグデータの大きな影響です。

そうなると、「わからないもの」を無視するわけにはいきません。因果を考えるよりも、まずはやってみる。そして、おって因果や理屈を考えるように時代が移行しているのです。

具体的な例をあげます。ある衣料店では、なぜか柱に出っ張りがあるほうが売上はよかったのです。出っ張り? はい、幼児の顔の高さくらいのでっぱりです。デザイン性のある柱に出っ張りがありました。はたして因果を証明しないといけない場合は、証明不可能です。しかし、相関はある。それなら出っ張りを増やしてみよう。これが相関的アプローチです。

するとわかったのは、その出っ張りに腰をかける人がいたそうです。しかも当事者ではなく、同伴の人が座っていたのです! 考えてみれば、同伴者が「早く帰ろう」といえば売上は伸びません。しかし休憩させることで、同伴者が待ってくれる。これが売上を伸ばしていた因果です。しかもこの因果は、のちのちになってわかったにすぎません。

私は、「因果から相関へ」の流れを否定も肯定もせずに眺めています。理屈をはっきりさせたい企業文化を有していれば、この流れは耐え難いものでしょう。しかし、実は調達・購買業務も、この流れから抗うことはできないのではないか。そう思います。

たとえば、部員に加速度センサーをつけるのはどうでしょう? きっと「なぜだか活動距離が長い部員のほうが総じて優秀な成果をあげている」に違いありません。そうすれば、あらたな行動方針は、こうです。「とにかく動け!」。いや、冗談ではないのです。「因果から相関へ」の流れは、新たな調達・購買理論を招き入れるのです。

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