おたくの調達部長は優秀か(坂口孝則)

以前から、半分は冗談なのですが、AIを使ってギャンブルの勝率をあげられないかテストしています。ギャンブル、正確には、公営競技です。競馬や競輪などは、データがたくさんありますからね。それをAI(機械学習)して正しい買い方ができないか検討するものです。

さて、そういう興味があるものですから、ギャンブルで生計を立てるひとたちの書籍を読んだり、あるいは聞いたりしてみました。そこで驚いたのですが、プロギャンブラーと素人の勝率差はどれくらいあるかというと、たったの数パーセントなのですね。しかし、1パーセントだとしても、その1パーセントがすごい。だって、勝率が五分五分のゲームがあったとします。それを、勝ちと負けを51パーセントと49パーセントにできれば、確率論的にはかならず稼げます。

たったの数パーセントと思うかもしれません。たしかに少額ではあまり違いません。でも、何億円も何十億円も賭ければ、その差は大きい。私はそこで「はっ」と思いました。これって、ビジネスと同じではないでしょうか。実力が数パーセントしか違わない二人のビジネスパーソンがいるとします。国内で閉じた、小さなビジネスであれば、どちらに社長をやらせても結果はあまり変わらないかもしれません。しかし、いま、グローバルにさらに急激にビジネス規模が拡大しています。たった数パーセントの違いは、結果をあまりに大きく左右します。

リーマンショックの際に、米国投資銀行のCEOがあまりに高給取りであると批判されました。社員の数十倍から、数百倍の報酬をもらう経営者が多かったためです。なお、株式の配当金もあれば、さらに差は拡大します。そのとき「経営陣(も社員も)報酬が高すぎるのではないか」と問われても「妥当な水準だと思う。安くしたら、他社に逃げていく」と答えていた姿は印象的でした。しかし、ビジネスがグローバルに拡充していくなかでは、劇的に経営陣の報酬が下がることはないでしょう。むしろ上がります。

それはCPO(調達最高責任者)でも、CPO(生産管理最高責任者)でもおなじなのですね。彼らの決定が国内だけではなく、海外にも影響して、正しい方向に導いているかが会社の業績に反映します。部長もそうでしょう。たとえば売れっ子の芸能人と、売れていない芸能人をくらべても、スポーツ選手でも、弁護士でも、たった数パーセントの違いが、おそるべき報酬の違いを生んでいるのです。

考えるに、上に立つには、その「数パーセントの差」を内部に認めさせるかにかかっているといえるでしょう。だから私は思うのですね。よく「あの部長が優秀とは思えないなあ」というひとがいますが、むしろ積極的に「あの部長が他よりも優れている、その数パーセントは何か」と探したほうがいい、と。ある文化人類学者はこれを「DMD(different that makes the different)」「違いをもたらす違い」と呼びました。

現代ではスキルやツールが進みすぎ、もう社員間でそんなに大きな違いはありません。ほんのすこしの差が大きな違いをもたらすのです。

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