お願いですから、魂の叫びを読んでください(坂口孝則)
*このところ、コンサルティングをしていて思うことを書きます。
調達システムは拡大しているのに、部員の気持ちは狭くなり
業務は広がっているのに、一人ひとりの意識は塞がれている
支出金額は大きくなっているのに、取引先との信頼関係は薄くなり
製品の種類はどんどん多くなっているのに、余裕は少ない
オフィスは大きくなっているのに、仕事は小さくなり
働き方改革が叫ばれているのに、自由時間は以前より少ない
知識はいくらでも調べられるのに、知恵は少なく
情報は過多だというのに、決断できないひとが増え
誰もがいつでも学べる環境なのに、SNSで誰もが満足し
労働環境は改善しても、心の病が増えている
資料は枚数を増やしているのに、本質は忘れ去られ
効率化しているはずなのに、疲れはどんどん溜まっていく
何もがすぐに手に入るのに、付加価値だけは手に入らない
コミュニケーションの機会は増えるのに、誰も本音を話さず
CSRの重要性を誰もが語るのに、建前だけが跋扈する
くだらない調達の手法だけが流布して、本質は置いてきぼり
グローバル調達がさかんなのに、身近な喧嘩は絶えず
長期戦略を語る部長が、目の前の人事異動に怯えている
広い視野を、と語る上司は、狭い世界で生きている
エクセルで計算し、事業計画を操ることはできるが、
だれも、心からの接触を避けようとする
パソコンの操作で速く業務をこなすことは学んだが、
誰も熟考をしようとしない
PDCAが重要だと誰もがいうが、すべての計画は
けっきょく、うやむやになって終わる
連携を語り続けるひとが、他部門からの苦情には目をそむけ
サプライヤにだけ、厳しくあたり続ける
理念とか、目標だとかを振りかざすのが好きなひとが
目の前の部員の幸福をないがしろにして
過去最高益だ、と叫ぶ役員たちの目は死んでいる
ただーー。忘れないほうがいいと思う。
私たちは、何のために仕事をしているかを。いま話しているひとたちとのふれあいは永遠には続かない。あとから振り返れば、たった一瞬のことだ。社内関係者でも、社外のサプライヤでも、つながる時間はほんとうに短い。その一期一会に全力をつくし、相手のために何ができるかを考えること。そして、調達品を通じて、どんな社会貢献ができるかを考えること。さらには、最終製品を通じて、社会によりよい影響をもたらすために全身全霊で働くこと。
自分が他者に1円もかからないで、やれることがある。自分に関わるひとたちに、「いつもありがとう。感謝しています」ということだ。それも、心を込めて。あなたが、ある瞬間にいう「ありがとう」は、その誰かを癒やす。せっかく、調達・購買の仕事をしているのだから、せめて、関係者から「あなたがいてくれてよかった」と思ってもらえる機会を増やしていこう。
調達・購買担当者の価値とは、コスト削減の額にあるのではなく、また、くだらないKPIで規定されるものでもない。調達・購買担当者の価値とは、他者の心を震わせた回数で決まるのだ。