このままだと会社は潰れるよ、という話(坂口孝則)
GoToの混乱について、GoTo Makiはどう考えているだろう、と先日オヤジギャグを思いつきました。それはいいのですが、本題です。コロナ禍が明らかにしたのは日本における決定プロセスの不透明さでした。
たとえば戦後まもなく米国では「赤狩り」がありました。若い方はご存じないですよね。ハリウッド映画関係者で共産主義思想をもっているひとを一斉に摘発した事件です。不当逮捕もあり、もちろん悲しい事件ですが、FBIがどのような捜査を実施したか克明な記録が残っています。米国の公文書図書館に残っているからです。一般人も閲覧できます。後年、それを元に多くの作品が作られました。日本でも山本おさむさんのマンガ『赤狩り』は有名ですね。一読をオススメします。
いっぽうで日本は戦後すぐに、各省庁が戦争関係書類をすべて燃やしています。戦争責任を責められたくなかったからです。現代でも傾向は変わりません。コロナ禍における意思決定のプロセスは公開されないか、あるいは文章は廃棄されています。
たとえば、新型コロナの対策本部では、一回目の会合が加藤厚生労働大臣が5分ほど官僚の文章を読み、茂木大臣が外務省の2分ほど文章を読んで終わっています。形式主義で、その後も、どのように政権中枢の意思決定が行われたかわからないまま現在に至っています。
政府の決定なんて、実務のビジネスに関係がないと思うかもしれません。
ただ、たとえば医薬品のインターネット販売も、ネット診察も、一部しか認められていません。クリーニング店でも、お客の顔色が悪かったら病原菌を有する衣類を持ってきているかもしれないと、対面を前提としています。普通に考えれば、そういう人と、対面で会うほうが危ないはずですが。
また、私の知人が学校授業における遠隔授業を行政に提案した際には、テレビ授業は「机間(きかん)授業ではないから」といって認められませんでした。これは生徒を直に見なければ授業は不可能という規則です。
さらにややこしいのが、こういう規則がなぜできたのか責任の所在が明らかになっていない点です。「なんとなくの理由で、誰も責任を取らない形で決まっている」のが現実なのです。大変に腹立たしい。
ただ、さらにややこしいのが、官を責めてみたって民間も同レベルである点です。たとえば、私が現場のコンサルティングで「なぜこの取引先から調達しているのですか」と聞いてもお答えいただけないケースが大半です。品質が悪く、さらに価格も高い。そうなれば、取引先を替えればいいのに、そうならない。なぜですかと質問しても、曖昧な理由のまま継続しています。誰も説明ができません。
私は、三密取引といっています。密室で、密談で、密約を繰り返す。これこそが、企業のガバナンスとしても問題ではないですか。若い方々は悪癖だと認識している。でも、脱却できない。しかし、この新型コロナのいまこそ、悪習を撤廃するタイミングではないでしょうか。なによりも、調達の基本に立ち返ることと、プロセスを明確に守ること。この「当たり前」こそが、いまの時代は重要だと思うのです。
このままだと日本はダメになるよ、と論じられています。しかし、いまのような不透明な取引プロセスであれば、企業こそダメになるのではないですか。先日、ある社会学者が「日本が本当に生まれ変わるのは、古い世代が死んだときだ」といっていて笑いました。しかし、ほんとうにそうかもしれない。しがらみに拘泥していない若手こそ現状を打破すべきです。
若手こそ、ほんとうの変革を起こすことを期待してやみません。