取引先協力会の存在意義(牧野直哉)

お悩み:今年度、取引先協力会の事務局になりました。新型コロナウイルス流行で従来のような活動はできないし、協力会の運営に意義を見いだせず幹事会社との打ち合わせも停滞しています

 

お答え:新型コロナウイルス流行渦の活動の在り方を模索しましょう

 

感染拡大が止まらず、半導体を始め供給不足に悩まされ、原材料市況も上昇基調…。そんな中で取引先協力会運営は御苦労が多いであろうとお察し申し上げます。私もかつて勤務していた会社で、取引先協力会の運営に奔走していたことを懐かしく思い出します。当時は幹事サプライヤへ工場見学をお願いし夜は宴会。翌日に希望者のみゴルフコンペを行うスケジュールが毎年繰り返されており、当日の運営は苦労があったものの、企画面で悩みはありませんでした。いい時代だったとつくづく思います。新型コロナウイルス流行が治まらない今の時代でも運営方法によってバイヤ企業の大きな武器になります。

 

取引先協力会が組織された「目的」についてひも解いてみましょう。高度成長時代に原材料や部品の購入だけではなく、製品販売を含めて組織的な対応を期待して取引先協力会を組織していました。購入面だけではなく、販売面の連携も期待されていました。日本全体が成長途上にあったために成立していた意義です。

 

取引先協力会の活動が停滞する理由の1つに、会員企業であるサプライヤの陳腐化が挙げられます。時代とともに刻々と変遷する事業内容を踏まえ、会員企業の新陳代謝が欠かせません。自社にとって重要で「あり続ける」サプライヤが必要なのです。新たなニーズにも積極的に対応したり、サプライヤから魅力的な提案を行ったりといった取り組まれる企業が、取引先協力会メンバーに含まれるかどうかがポイントです。

 

バイヤ企業上層部と会員企業のトップが個人的な「つながり」をもっていると、取引先協力会メンバーの入れ替えが難しくなります。サプライヤごとに取引先協力会に残す、残さないといった調整も困難です。いったん全面的に取引先協力会の活動見直しを目的に「解散」するのも1つのアイディアです。

 

1つ注意点があります。バイヤ企業として取引関係を継続したいサプライヤは、個別にバイヤ企業とのコミュニケーション機会を「必ず」設定します。取引先協力会の解散によるデメリットは、バイヤ企業としての求心力の低下です。現在の関係を維持、拡大したいとバイヤ企業側が願う場合は、解散に伴う確実なフォローは欠かせません。そういった個別活動を経て、新たなメンバー企業で協力会を設立するといった流れも「あり」です

 

ドラスティックな取引先協力会の運営改革ができない場合もありますよね。新型コロナウイルス流行渦でもサプライヤとのコミュニケーションを行うためのイベントを企画します。バイヤ企業として事業の方向性や開発ロードマップ、直近数年の取り組み見通し、購入計画といった全サプライヤに有益な情報を、調達・購買担当役員や部門長から説明します。Web会議形式であったとしても、十分に意義のある情報共有の取り組みになるはずです。重要な点は、自社の意向を伝えた「後」の対応です。

 

自社の意向を伝えるだけならイベントを行う意義はありません。重要な点は、自社の意向を伝えた後です。相手がどう思ったのかを確認し、どのように対処するかをサプライヤごと実行へと導きます。取引先とのイベントは、事務局、サプライヤだけではなく自社のバイヤの取り組みが欠かせません。バイヤへ担当する取引先協力会企業へのフォローを指示して、業績拡大への貢献を求めます。

 

新型コロナウイルス流行しているから、会えないからは、各企業とも同じ条件であり、取引協力会運営上の制約です。その制約をふまえ自社の意向をサプライヤに伝え、サプライヤの事業活動を通じて、バイヤ企業へ貢献を求める形は何ら変わりません。取引先協力会会員企業であれば、一致団結して今の困難を乗りきるための取り組みが求められています。新型コロナウイルス流行によってリアルなコミュニケーションができない分、ビジネスの話に特化できるメリットもあると思いませんか?ぜひ活動の形にとらわれずに中身を追求してください。

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