営業への未練
お悩み:営業部門から調達・購買部門へ異動しました。営業ではやっと自分で案件をまとめられるようになって充実していました。会社の制度で異動せざるを得ませんでした。営業の仕事に未練もあるし、購買部門には尊敬できる人もいなくて、仕事にもおもしろみが見いだせません。日々会社へ行くのがおっくうです
お答え: 売り手も買い手も価値交換の当事者です。営業時代のノウハウを購買業務に活かすためには?って考えてみてください。
あ、私と同じですね。私も二十数年前営業から購買に異動しました。激務だった営業部門から、健康で文化的な生活が実現可能な購買部門へ異動です。当初は仕事ではなくプライベートの充実に勤(いそ)しんでいました。休みだけではなく、定時後にジムに行ったり、冬には近場のスキー場でナイターを楽しんだりしていました。
そんな生活も数か月が続いて、このままでいいのか?って疑問がわいてきました。営業時代には関連部門を集めてプロジェクトを推進するため中心になって発言して手もだしていました。購買部門では異動したばっかりなので重要なサプライヤを担当していませんでした。会議に呼ばれることもありません。たまたま同じ部門で私よりも2年早く経理から異動した同期と比較して「貢献できていないな」なんて感じていたのです。
問題があって、何かしないといけないんだけど、何をすればいいかわからない。今の担当の仕事では、自分の力が発揮できていない。どうすればいいのだろう…もんもんとした時間が過ぎ去って、営業部門に戻りたいとすら思っていました。
そんなとき、自分の強みは営業時代の経験やノウハウだと思いました。営業経験を元にどんなバイヤであるべきかを考えたのです。法人営業だったのでお客さまは正にバイヤでした。自分がイヤだったバイヤを思い出して、そんなバイヤにはならないためにはどうすればよいかを思い浮かべました。当時は「お客さまは神様」とか「客の声は天の声」なんて言われていたのです。理不尽でも顧客の意向に沿うことが美徳とされていました。
何の根拠もなく値引きを要求されるバイヤには大きな違和感を抱いていました。「名刺代わりにいくら値引きするの?」なんて真顔で聞いてくるバイヤには嫌悪感すら抱いていました。バイヤとしてはコストダウンという名の値引き要求は必要です。理由、根拠が余りにも理不尽に感じていたのです。
約束を守らないバイヤの多さにも閉口していました。見積依頼を受けたものの、詳細な仕様が一向に提供されず、フォローすると「うるさい、まだ出ない」とか言われ途方に暮れていました。詳細資料を出すとすぐに見積フォローが始まります。しまいには「遅い」「見積遅れ」とか言われることもありました。社内からも文句を言われ、一体どうすればいいの?と途方に暮れました。
そんな思い出を胸に抱き「そんなバイヤにはならないぞ」と心に誓い、そんなバイヤにならないためにはどうすればいいかを探しました。私が営業時代に抱いた購買部門でありバイヤの印象は「売り手よりも買い手の立場が上」です。本当か?と思いました。売買は価値の交換です。モノやサービスを提供する代わりに対価を頂く。モノやサービスよりも使途の多さでは対価としていただくお金の価値が高いのはわかります。一方的に従順である必要があるのか?そんなことを考えていました。
仕事のやりやすかったお客さまの対応も思い起こしました。忌ま忌ましいお客さまが「一方的な指示」であったのに対し、仕事のやりやすかったお客さまは、役割分担を前提にした「シェア」でした。共同作業を前提して一緒にやろう!感に巻き込まれ、プロジェクトの一端を担う充実感がありました。
結論としては、営業と購買は違う仕事です。売買にたずさわる点で営業も購買も共通項は多いのです。営業時代に培ったノウハウや人脈は必ず役立ちます。購買部門だから営業に上から目線で対処せずに協力してこの難局を乗りきってください。営業のとき自分はどんなふうに扱われるとハッピーだったかを裏返して考え行動してみてください。営業部門と同じように購買の仕事の魅力が理解できると思います。営業も購買も。同じ会社の中で、同じ目標に向かって仕事をしているのです。