Office形式のファイルが日本のDX化を妨げている?!(牧野直哉)

最近「DX(デジタルトランスフォーメーション)」を毎日何度も目に耳にします。私も調達・購買部門におけるDXとは?を模索しています。何よりも重要な点は、業務におけるデータ活用です。ここで「データ」とは何か?私は「テキストファイル」と考えています。テキストファイルとは「コンピュータで扱われる文字コードのみで構成されるファイル。コンピュータに表示される文字のほか、改行やタブなどを含む」です。皆さんの業務では、メールの本文やチャットの記載枠の中にインプットした内容が「データ」にもっとも近い形。日常的に使用されているOfficeアプリのワードやエクセル、パワーポイントのファイルは、そのままの状態では「データ」としてDXに活用しにくいのが実状です。

 

Officeアプリであるワードやエクセル、パワーポイントもデジタル形式のファイルです。ワードは、ワープロがない時代に作成していた書類、文書を作成。エクセルは集計表作成、パワーポイントは事実や考えを文章や図表を活用して他人へ伝え説明するためのアプリです。これらアプリは私たちの業務をずいぶんと効率化したのも事実。FAX全盛だった時代、ワードを活用すれば、テンプレートや過去作成の文書に必要部分を記入したり、修正したりすれば文書が完成。エクセルには市況情報を納めたファイルに最新のデータを追記・更新すれば、新たなグラフが作成され、変化の予兆が個人レベルでも掌握可能になり、電卓を使用する頻度がぐっと下がりました。打ち合わせの前にはアジェンダをパワーポイントで作成し、討議内容の追記を全員で確認・共有可能になりました。

 

問題は、Officeアプリによる文書作成や市況データの更新、作成内容の説明や討議の記録といった作業。相互に人を介して連携しているものの、全般的なデータ同士の直接的な相互活用や連携が難しい点です。すべてテキストファイル形式のデータを使いながらも、体裁や見栄えを整えています。言うなれば、見やすく作業を効率化し理解しやすくするための機能が、テキストファイルとしてデータ活用する場合には少し余計。例えばこの文章にしても、ワードファイルでは20KB、テキストファイルでは8KB。差分の12KBには、ワードファイルに必要な情報が詰め込まれているのです。書類として印刷して参照する場合は必要。しかしこの文章をデータとして扱い活用を検討する場合は不必要なデータです。

 

あるエピソードを思い出しました。私は原稿を書くときワードは使いません。専ら秀丸(ひでまる)というテキストエディターを使います。私のパソコン画面を見た同僚から「何これ?」と聞かれ、アプリ名称や使っている理由を説明すると「そんな使い方している人初めて」なんて言われます。理由はパソコン超初心者だったころまでさかのぼります。

 

当時パソコン操作にたけた先輩社員がいました。ワードで文書作成に手間取る私を見て「まず文書をメモ帳で書いたら?」とアドバイスしてくれました。ワードはワードプロセッサー、文書作成ソフトだけど、書類としての体裁を作る機能も含まれている。文書を作成する作業と、書類として体裁を整える作業は分けて考えた方がよいとの話。当時、アドバイスを疑う知識さえなかった私は以降、メモ帳で文書を作成した後、ワードへ挿入して体裁を整えていました。当時先輩社員が使っていた秀丸もまねして購入し、文書作成ではまず起動させて使用する習慣ができました。

 

9月には菅首相肝いりのデジタル庁も発足し、多くの民間企業ではDXの取り組みが加速してゆくでしょう。私が尊敬するマーケッターの神田昌典さんは「デジタルを活用したサービスの開始には、データ統合が欠かせない」と述べています。「データ統合」するには、ワードやエクセル、パワーポイントファイルそのままでは難しく、テキストファイルがもっとも適した形式です。Officeアプリのファイルには、それぞれに特化した目的があります。その目的とデータ活用は「テキスト化」を行って初めて実現可能になる、DX推進可能な環境が整うのです。

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